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小さい昇圧トランス、たとえば出力10W、2000V級の高昇圧比トランスを考えて見よう。10VDCから2000Vまで昇圧するには巻き数比は単純には1:200である。平均電流Iは、電力Pが決まれば、P=VIでI=0.5mAである。
電流が小さいので、当然細い銅線を多数回巻くことになる。細い線はエナメル層が相対的に厚いので、2次側に必要な巻き断面が大きくなる。したがって、コア断面積Sに比べ、コアの窓面積の大きな特殊形状のコアを選ぶことになる。
次に問題になるのは、2次側の寄生容量である。出力電流が小さいので10pFオーダーの寄生容量も波形を乱す原因になる。
やや大きめのコア断面積のコアを使用して1次巻き数を10ターン程度としても、2次側は1000〜2000ターンとなる。2次側の抵抗成分も数10Ω程度になる。
2次側の巻き数を抑えるために、DC-DCコンバータ形式で昇圧するが、1次側のスイッチングノイズを軽減することと、層間耐電圧を確保するためにどうしても絶縁層が厚くなる。
必要な絶縁層の厚さは基本的には大きさに依存しないから、相対的に1次-2次間の漏れ磁束が増える。
このように、小形・高昇圧比のトランスは効率が悪く、寄生成分の大きなトランスとなってしまう。それでも、コア形状、巻き線方式、絶縁方式を工夫してよりましなトランスを製作するのである。
強電用トランスの様には、何事も理想的に造れないのだ。
さらに、多段昇圧回路を組み込むことが多いので、順方向にも逆方向にも低インピーダンスとなるよう、1次側の駆動方式が限定される。
ブラウン管式のTVという大きい市場がなくなった現在、小電力、高圧回路の種々の部品の安定入手もだんだんと難しくなる。
難しい割に、技術的なポジションも高くない。それでも、アナログエンジニアは回路的工夫を付けくわえて、高電圧を発生させ続けるのだ。
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