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コスパフォユニット「みおまよ」 『NARUTO』九喇嘛&須佐能乎 魂削った〝ねぶた〟「限界の3カ月」の製作秘話【コスプレ図鑑】

[ 2024年4月18日 11:00 ]

ナルト(九喇嘛)を演じるまめまよ(右)とサスケ(須佐能乎)を演じるみおし(左)
Photo By 提供写真

コスプレパフォーマンスユニット「みおまよ」が8月3日に愛知県名古屋市で行われるコスプレ世界一決定戦「ワールドコスプレチャンピオンシップ2024」に日本代表として出場する。「世界コスプレサミット2024」の会期中に行われるビッグイベントで、3月の日本代表選考会で度肝を抜いたのが、「NARUTO」の主人公うずまきナルトの尾獣「九喇嘛(くらま)」と、宿命のライバルうちはサスケによる最強の術「須佐能乎(すさのお)」だった。「みおまよ」のまめまよさんとみおしさんは役割分担しながら「限界の3カ月」を必死で乗り越え、世界切符をつかんでいた。

コスパフォユニット「みおまよ」 「NARUTO」で運命が動き出し「ハガレン」で世界を見据えた

3月に兵庫県姫路市で行われた日本代表選考会。ステージ上で、ナルト(まめまよ)とサスケ(みおし)が対峙していた。和テイストの激しいBGMに乗せて、死闘を繰り広げる2人。クライマックスに見せ場がやってくる。九喇嘛と須佐能乎を手作りのバルーンで再現し、客席から驚嘆の声が上がる。物語は感動のフィナーレへと向かい、約2分半のパフォーマンスが終わる。万雷の拍手が会場に鳴り響いた。

これがみおまよの2人が日本代表の座を射止めた渾身(こんしん)のパフォーマンス。2018年以来となる世界切符を勝ち取るために、なぜ「NARUTO」を選んだのか。

まめまよ「節目によくやっていたのがNARUTOだったんです。私たちのコスプレデビューもそうですし、2016年の選考会で敗れたときに、ライバルだった子たちとのちに一緒にパフォーマンスすることになった時もそうでした。節目でやって全て成功していたのでNARUTOで行こうと2人の思いが自然に一致していました」

昨年8月から衣装とパフォーマンスのアイデアを練り始めた。2人の脳裏にあったのは6年前の教訓。18年に日本代表として初めて出場したワールドコスプレチャンピオンシップでは「戦国無双4」の真田信之、幸村兄弟になりきって迫真のパフォーマンスを披露したものの「シリアスになりすぎた」と反省。今回、NARUTOで勝負どころを探っていたときに青森のねぶた祭にヒントを得た。

まめまよ「パフォーマンスと衣装を総合演出として考えた時に、私が九喇嘛と須佐能乎を出したいって言いました。じゃあ、どうやって出すの?大きさはどういう想定?みたいな話になった時に〝とにかくでっかくしたい〟って(笑)暗い雰囲気になりすぎず、海外の人でも楽しめるように、シリアスな場面も明るく楽しく演出する。このお祭りムードを演出するためにどうすればいいか周りに相談して、アドバイスをもらったのがねぶたでした」

みおし「大きさもそうですし、シルエットで一発でわかるようにしないといけない。かつ迫力も持たせなきゃいけない。やっぱり造形のシルエットがきれいじゃないと。バルーンって丸いイメージあるじゃないですか?でも、私たちは〝かわいい〟という印象を与えるのではなく〝かっこいい〟って思ってもらえるようにしました」

だが、そこからが「地獄の始まりだった」と2人は苦笑い。特に制作に本格的に着手した昨年12月から完成までの期間は「限界の3カ月」だった。

大会規定で衣装やプロップ(小道具)含めた総重量は40キロ以内。前例のない〝ねぶた〟を本物のように紙や竹など普通の製法で作ると重量オーバーは確実。2人がよく使うサンペルカ(発泡材)では大きすぎるし、運べない。悩んだ末に、元スーツアクターのまめまよさんが着想を得たのが「エアぐるみ」。当初は空気で膨らませた着ぐるみに入ろうとした。だが、それではパフォーマンスの制限時間に間に合わない。そこで、風で膨らませた〝ねぶた〟をそれぞれ背負うことになり、舞台装置を作る知人に師事した。

みおし「12月から本格的にその方の元に通って、1カ月かけて2体分の型紙を作りました。でも、1月に入ってから型紙から裁断までがめちゃめちゃ大変で。本当に果てしない。1人じゃ終わらないし、寝る時間もない(涙)」

まめまよ「教えてくれた方に監修料をお支払いするために借金して、その返済をしながらの作業でした。それでも、年が明けてから2カ月間はみおしに〝仕事しなくていいから〟と言って、彼女の生活費まで稼いで、衣装作りに専念してもらいました。周りからどう思われようと、私は稼いでくると決心したんです。本当にお互いに信頼してないとできなかったなと思います」

作業場にみおしが泊まり込みでなんとか完成させたのが3月9日。そこから同23日の本番ギリギリまで手直しを加えていった。

さらに〝ねぶた〟と同時並行で自分たちが着るナルトとサスケの衣装もこだわり抜いて作り込んでいた。

みおし「ナルトとサスケの衣装は、ある撮影所に見学に行って、使用されているカツラや衣装を見て、本場の技術を勉強しました。そして生地にこだわって選定を進めて、刺し子という布を使いました。本物の現場で使っている生地の質感を寄せた上でこだわったのがダメージ加工です。刺し子を1からちゃんと染めて、〝2、3回ぐらい使ってるかも〟というぐらいの質感に汚してから、さらに汚していきました。

さらに、まめまよが実際に漫画でナルトやサスケが傷ついたところをピックアップしてくれたので、それを見ながらダメージをつけていきました。〝ここが擦れてるから土っぽいのがついてる〟とか、〝ここは燃えてるからススっぽく汚そうか〟とか。親友のキャラクターが亡くなる場面では、体のここで抱きかかえていたからここに血をつけたいと言ったり。〝なんて酷なことするんだ〟って泣きながら制作していました(笑)」

サスケとナルトはどこでどうやって戦って、服を汚し、傷を作っていったのか。土汚れは砂なのかそれとも泥なのか。作品に思いを馳せながら、戦闘スタイルもナルトは体当たり系で、サスケは遠隔攻撃でスマートに戦っていたことから「サスケよりもナルトを派手に汚す」と汚し方に差をつけた。こだわりは色使いや照明にも及び、審査員からの見え方を計算して、陰影を濃くするために黒を多めに取り入れながら、リアルな汚れを追求。5種類ほどの筆を使い分けて仕上げたという。

みおしが制作に没頭している間、まめまよは相方の生活を支えながら総合プロデュースに奔走。プレゼンに向けたレポート作り、音源作りやキャラクターの声真似をしている人に依頼して声のレコーディング、2人のアクションなど。SNSで積極的に情報を発信して、本番に向けてサポーターの応援の熱量も高めていった。

パフォーマンスは2月末から稽古を開始。3月11日からはほぼ毎日、1日約5時間の猛練習で追い込んだ。15秒で膨らむ九喇嘛&須佐能乎の〝ねぶた〟は万が一の故障に備えて、練習回数を制限。慎重を期して本番に臨んだ。

冒頭の通り、迎えた本番は2分半の魂の演技で、聴衆の興奮を誘って喝采を浴びた。家族、本番までサポートしてくれたり応援してくれた多くの友人たち...。関わってくれた人の顔が次々と思い浮かび、涙があふれた。「背負うものがあまりに多くて。物理的に背負ったものも大きかったんですが...」。改めて喜びをかみしめた2人は今夏、コスプレ世界一を目指して改良を重ねているところだ。

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