微生物の保存方法やアンプルの作製方法を紹介します。
微生物の保存法は多種ありますが、当センターでは生存率及び形質を維持する上で優れている3種類の保存法で寄託を受け付けております。以下にその概略を示します。
凍結保存法 *1) | 凍結乾燥法 | L-乾燥法 | |
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保存方法の概要 | 細胞を凍結し代謝活動を停止させ、細胞を休止状態にすることで長期の生存を図る。 | 細胞内水分の大部分を占める水(自由水)を乾燥させて、代謝機能の場である液相を除いてこれを停止させ、細胞を休止状態にすることで長期生存を図る。 | |
昇華による固相からの乾燥 | 蒸発による液相からの乾燥 | ||
保存条件 | -80°C、又は液体窒素の気相中(-170°C付近)に保存 | 暗所にて低温(4°C前後)保存 | |
適用範囲 | 大多数の微生物 | 大多数の細菌・放線菌・胞子を形成するカビ・酵母・ファージで保存可能。ただし、凍結感受性の微生物においては、L-乾燥の方がより良い結果が得られる。 | |
特徴 | 長期保存性、株の安定性に優れる。 | 長期保存性、株の安定性に優れる。加速試験を行うことで長期保存性を予測することが可能である。 | |
生存に影響する因子 |
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一般的な保護剤とその組成 | 10〜15%グリセリン または5〜10%ジメチルスルホキシド(DMSO) | 10%スキムミルク +1%グルタミン酸ナトリウム | 3%グルタミン酸ナトリウム +0.1Mリン酸緩衝液 *2) |
図解 | 図1.凍結乾燥法 | 図2.L-乾燥法 |
アンプルの先端は必ずバーナーで炙って丸くしてください。偶発的な衝撃による破損等によって真空度低下や汚染の原因となります。
図3 ガラスアンプル先端についての図説。(左・良い例)封入後に炎をあててガラスアンプル先端を丸めることで、取扱やすく衝撃にも強くなる。(右・悪い例)先端の処理をしない場合では鋭利なままとなり、取り扱いにくく小さな衝撃でガラスアンプル先端部分が破損する危険性がある。
図3.アンプルの先端例
アンプルの真空度が不良であると微生物の生存に悪影響を与えるため、アンプルの真空度が十分(約102Pa以下)であるか検査を行います。
図4 ガラスアンプルの真空度チェックの図説。テスラコイル(アンプルの真空度を検査する装置)の放電プローブをアンプルに近づけることでガラスアンプルの真空度を検査する。真空度が不良の場合は、放電なし(1x10^5Pa)、赤紫色の放電(1x10^3Pa)となる。真空度が良好な場合は、白色から薄青色の放電(1x10^1Pa)となる。
図4.アンプルの真空度チェック
Disk法
担子菌(キノコ)については凍結保存形態による寄託が可能です。これまでの研究によれば、-80°Cでの凍結保存によって830菌株の担子菌(キノコ)が少なくとも15年間長期保存できることがわかっています1),2)。
バーミキュライト法
担子菌の凍結保存法にはdisc凍結法が汎用的に用いられてきましたが、この方法では凍結保存が難しい種(主に菌根性担子菌)もありました。近年特許センターで行った研究開発の結果、従来法のdisc凍結法ではうまく保存出来なかったグループに対する有効な凍結保存法である“バーミキュライト法”を開発※(注記)しましたのでご紹介します(図5、図6)。詳しくはNBRCニュース3)またはDBRP4)、参考文献5)をご覧ください。
図5.担子菌培養株凍結保存法の開発工程の図説。
図5.担子菌培養株凍結保存方法の開発工程
(図をクリックすると拡大図がPDFで開きます。)
図6.左図はバーミキュライト法概略の図説、右図は凍結1年後に復元した菌糸増殖の様子。
図6.バーミキュライト法について
(図をクリックすると拡大図がPDFで開きます。)
※(注記) 本研究開発は、特許庁委託事業 「特許微生物寄託等業務」の一環で実施されたものです。
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