医薬品卸業界に自由経済はあるのか?「30年以上前から受注調整」の衝撃
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公的な薬価制度に紐づいた「医療用医薬品の流通」が根本から問われているが、誰一人として明確な答えを持ち合わせていないのではないか。
地域医療機能推進機構(ジェイコー)の医薬品入札を舞台とする、医薬品卸4社による談合事件の裁判が東京地裁で開かれ、卸業界では、長期間にわたり独占禁止法上で禁じられている「受注調整」が商習慣として定着していた事実が明らかになった。そして、司法当局の検察庁は、法廷の場で悪事に手を染めてきた各社と元担当者の刑事責任を追及するとともに、卸業界に対し、鋭くこう言い放っている。
「得意先からは販売価格の値下げを求められ、仕入れ先からは高い販売価格を設定されるというような状況は、そもそも自由経済社会においては、当然想定され得るものと言うべきであって、本件のような悪質な談合を正当化する理由とはならない」
公正な自由競争が絶対との検察官の意見は、至極真っ当で、まったく反論の余地がない。とはいえ、薬価を死守すべく高仕切価を敷く製薬企業と、少しでも多くの薬価差益を得るため常に値引きを要求する医療機関・調剤薬局の間で板挟みに遭う卸の声に耳を傾けると、果たして検察が言うところの「自由経済社会」が本当に存在するのか、と疑問がふつふつと湧いてくる。
脈々と続く業界の商慣習に抗えなかった被告人のひとりは証言席で、弁護側の質問に応じるかたちで声を絞り出していた。
「正直、利益がないものもある。例えば、(医療機関と)契約をすると、絶対に供給をしなければならない。自由競争の場合で言うと、当然、民間企業なので利益がないものは、本来辞退するのが普通の流れだと思う。辞退なく、結果的に応札ができていたのは、受注調整していた理由のひとつだった」
医療用医薬品市場の構造上、どうしても立場の弱い卸は、さまざまな矛盾を押し付けられ、何とか飲み込んできた。しかし、七難を隠してきた成長市場は薬価制度改革や毎年改定ですっかり消え失せ、卸は、何かしら手を打たなければ、この先沈むしか道は残されていない。卸談合裁判で、過去の流通改善施策は「失敗」と烙印を押されたも同然の厚生労働省が今更、「流通改善ガイドライン」の改訂で打開を図ろうとしている状況は、卸にとって、皮肉でしかない。
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