"サラリーマン薬剤師"時代の終焉、疲弊する薬剤師

ダイヤモンド編集部
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薬剤師の女性Photo:PIXTA

24時間対応、薬を出した後のフォローの義務化――。薬剤師の業務が転換点を迎えている。処方箋に応じて薬を出すだけでよかった"サラリーマン薬剤師"の時代は終焉を迎え、対人業務が重視されるようになった。医療の担い手としての地位は向上しそうだが、一部の薬局では患者獲得のノルマに追われる事態になっている。

患者獲得のノルマに追われる
かかりつけ薬剤師

「かかりつけ薬剤師のノルマがきつい。『声掛け』して断られることが、とにかくつらい――」。関東地方の大手薬局に勤務する薬剤師の男性はこう嘆く。

薬剤師の仕事が転換点を迎えている。従来は薬局の調剤室で処方箋に従って薬を出していればよかったが、対人業務が重視されるようになってきたからだ。

かかりつけ薬剤師は、2016年度の診療報酬改定で導入された制度だ。患者が特定の薬剤師を指名し、薬の相談や服薬指導などのサポートを受ける。休日や夜間でも電話で薬の相談を受け付けることが求められ、薬剤師の負担は増す。かかりつけ薬剤師として認定されるためには、患者に書類に記入してもらい、同意を得る必要がある。

この同意書を書いてもらうために、冒頭の薬剤師は薬局を訪れた患者に対して、声掛けをする日々が続く。まず患者の薬や健康の相談に乗った後、おもむろに「かかりつけ薬剤師という制度を知っていますか」と切り出す。かかりつけ薬剤師のメリットを一通りアピールした上で、「私をかかりつけ薬剤師に指名してくれませんか」と持ち掛ける。

ここまではよいのだが、「指名すると薬代は60〜100円高くなります」と告げると、患者の顔が曇る。「会話が弾んでいた患者さんでも、途端によそよそしくなる。これでいいのかと自問自答し、心が折れそうになる」と、この薬剤師は肩を落とす。

ノルマ達成への要求が厳しくなったのは、18年度の診療報酬改定により、「地域支援体制加算」が新設されてからだ。地域医療への貢献を評価するこの項目を満たした薬局には、調剤基本料に35点(1点=10円)の加算が付く。ただ大手チェーンの薬局がこの加算を得るためのハードルは高く、常勤する薬剤師に年40回のかかりつけ薬剤師指導料の実績があるなどの条件をクリアする必要がある。そのため薬剤師が"顧客"を獲得するノルマが厳しくなっているのだ。

別の大手薬局の幹部は、「われわれはノルマを設けていない。だが、かかりつけ薬剤師の実績は当然人事上の評価対象になる」と明言。薬局では患者への"営業活動"が薬剤師の必須業務になりつつある。

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