消費増税の大規模対策 単身世帯には負担増
実質可処分所得は減少に
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2019年10月からの1年間で実施される消費増税対策の規模
景気の減速感が強まる中、10月に実施予定の消費税率の引き上げを再延期すべきだとの主張が広がっている。7月21日に投開票が行われた参議院選挙でも、野党が増税の延期・凍結を公約に掲げるなど、消費増税の是非が争点の一つとなった。
筆者は、予定通りに消費増税を実施すべきだと考えている。企業は既に、軽減税率に対応したレジの導入など、増税対策を進めており、延期されれば大きな混乱を招く恐れがある。さらに、3度目の延期となれば、政府の財政健全化に対する信認も大きく低下する。
ただ、消費増税を予定通りに実施しても、前回(2014年4月)のように景気が大きく落ち込む可能性は小さい。大規模な増税対策が講じられているためである。
19年度予算には、消費増税に対する「臨時・特別の措置」として、中小企業でのキャッシュレス決済時に消費者にポイントを還元する措置や、公共投資の積み増しなど、国費ベースで2兆円の予算が計上されている。さらに、幼児教育・高等教育の無償化や社会保障の充実、軽減税率の導入なども予定される。
これらを合わせると、19年10月からの1年間で実施される消費増税対策の規模は、総額で5.6兆円と試算される。増税による負担増(5.7兆円)をほぼ相殺する規模である。
問題は、教育無償化などの恩恵は一部の家計に集中し、ミクロで見れば増税の負担があまり緩和されない世帯が少なからずあることだ。とりわけ恩恵を受けにくいのが単身世帯だ。増税時の実質可処分所得の変化は家計(勤労者世帯)全体で見れば、増税の負担が対策の負担軽減効果で相殺されるため、実質可処分所得の変化がほぼゼロとなる。それに対して、単身世帯は、対策の負担軽減効果が小さいため、実質可処分所得が1%減少する。
単身世帯は、非正規雇用で働く人たちも多く、負担に対しても敏感だ。政府は、最低賃金の引き上げや職業訓練の充実に力を入れるなどして、増税対策の効果が及ばない世帯の所得基盤の強化につなげていく必要がある。
(日本総合研究所副主任研究員 村瀬拓人)
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