トヨタが「終身雇用」を諦めてくれた方が日本の労働者の賃金は上がる
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トヨタ社長が「終身雇用を守るのは難しい」と発言をしたことが、ネット上で大騒動になっている。若い世代ほど「終身雇用」への憧れを持っているのだ。しかし、実際には企業が終身雇用を放棄した方が、日本人の賃金は上がる。(ノンフィクションライター 窪田順生)
若い世代が憧れる「終身雇用」を
無残にも全否定したトヨタ社長
日本企業ではじめて売上高が30兆円を超えたトヨタ自動車が、ネット民からボロカスに叩かれている。
豊田章男・トヨタ自動車社長が、日本自動車工業会の会長という肩書きで臨んだ記者会見で、「終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきた」「雇用を続けている企業にインセンティブがあまりない」と述べたことに対して、以下のような批判の声が一部から寄せられているのだ。
「役員報酬を1人平均2億も払えるのなら社員を大事にしろ」
「トヨタがそんなことを言い出したら、もう誰も働きたくなくなる」
「こんなことを軽々しく言う会社には、もう優秀な新卒がこないだろ」
このご時世、「安定」を求めてトヨタを目指す若者を「優秀」と呼んでいいのかは甚だ疑問ではあるが、怒れる方たちの気持ちはわからんでもない。
オッサン世代は人数が多いだけで、死ぬまで会社にぶら下がって退職金もガッポリともらえているのに、なんでそんな「老害」の尻拭いを下の世代がやらなくてはいけないのだ、という「世代間格差」が露骨にあらわれるテーマであることに加えて、「終身雇用」というのは、多くの人々、特に若い世代にとっては「憧れ」なのだ。
独立行政法人労働政策研究所の「第7回勤労生活に関する調査」(平成28年)によれば、「終身雇用」「年功賃金」を支持する者の割合は、調査を開始した1999年以降、過去最高の87.9%となっている。
と、聞くと、会社に忠誠を誓う中高年リーマンたちの顔を思い浮かべるかもしれないが、この動きを牽引しているのは、意外にも若者だ。20〜30代で「終身雇用」「年功賃金」を支持する割合が2007年頃から急激に伸びているという。
どんな会社でもいいから定年退職の日まで雇われたい――。なんて感じで若者たちが抱いた大志を、日本を代表する大企業トップが無情にも握りつぶしてしまったのだ。
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