制度創設の目的
産科医療補償制度は、産科医不足の改善や産科医療提供体制の確保を背景に、より安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、以下の目的で創設されました。
- 目的1
- 分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児とその家族の経済的負担を速やかに補償します。
- 目的2
- 脳性麻痺発症の原因分析を行い、同じような事例の再発防止に資する情報を提供します。
- 目的3
- これらにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ります。
制度創設の経緯
制度の創設
分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があり、このような紛争が多いことが産科医不足の理由の一つであるとされ、また産科医不足の改善や産科医療提供体制の確保が、わが国の医療における優先度の高い重要な課題とされていました。
このため、産科医療関係者等により無過失補償制度の創設が研究、議論され、2006年11月に与党「医療紛争処理のあり方検討会」によって取りまとめられた「産科医療における無過失補償制度の枠組みについて」において、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、無過失補償制度の創設が示されました。
この枠組みを受けて、2007年2月に財団法人日本医療機能評価機構(当時)に「産科医療補償制度運営組織準備委員会」が設置され、制度の創設に向けた調査、制度設計等の検討が行われ、2008年1月に「産科医療補償制度運営組織準備委員会報告書」が取りまとめられました。その後、国や関係団体の支援、および創設のための準備を経て、2009年1月に「産科医療補償制度」が創設されました。
2006年11月 | 与党「医療紛争処理のあり方検討会」において「産科医療における無過失補償制度の枠組みについて」が示される。 |
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2007年2月 | 財団法人日本医療機能評価機構(当時)に「産科医療補償制度運営組織準備委員会」が設置される。 |
2008年1月 | 「産科医療補償制度運営組織準備委員会報告書」が取りまとめられる。 |
2009年1月 | 「産科医療補償制度」が創設される。 |
制度の改定
本制度は、早期に創設するために限られたデータをもとに設計されたことなどから、「産科医療補償制度運営組織準備委員会報告書」において「遅くとも5年後を目処に、本制度の内容について検証し、補償対象者の範囲、補償水準、保険料の変更、組織体制等について適宜必要な見直しを行う」こととされていました。
このため、2012年2月より、原因分析や調整のあり方等の課題から順次見直しの議論が行われ、2014年1月にそれらの課題に関する制度の改定を実施しました。また、補償対象となる脳性麻痺の基準、補償水準、掛金の水準、剰余金の使途等についても見直しの議論が行われ、これらについては2015年1月に制度の改定を実施しました。
2014年1月 | 原因分析のあり方、本制度の補償金と損害賠償金との調整のあり方、 紛争の防止・早期解決に向けた取り組み 等 |
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2015年1月 | 補償対象となる脳性麻痺の基準、 掛金 等 |