産科医療補償制度では、2015年以降に分娩機関の医学的管理下(注)において出生したお子様が、産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金を支払います。
補償対象と認定されるには、第二条第一項第二号に規定された「脳性麻痺」の定義に合致する必要があります。産科医療補償制度では、「脳性麻痺」を以下のように定義しています。
第二条第一項第二号
「脳性麻痺」とは、受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた児の脳の非進行性病変に基づく、出生後の児の永続的かつ変化しうる運動又は姿勢の異常をいいます。ただし、進行性疾患、一過性の運動障害又は将来正常化するであろうと思われる運動発達遅滞を除きます。
★例えば
産科医療補償制度では、「脳性麻痺」を上記のとおり定義しているため、以下のような場合には「本制度の定める脳性麻痺の定義に合致しない」として、補償対象外となることがあります。
在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上の場合は、分娩中の異常※(注記)1や出生時の仮死※(注記)2がなくても、「補償対象基準」を満たすことになります。
★例えば
在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上の場合は、次のような事例でも「補償対象基準」を満たします。
個別審査の基準を満たすことを証明する検査データ等の資料が提出されない場合は、原則として補償対象となりません。個別審査の基準を満たすことを証明する検査データ等の資料が提出できない場合でも、いずれかの基準を満たすと考えられるときは、以下の①〜③を考慮して判断しますので、理由をお示しください。
補償申請を行う場合には、以上の「補償対象基準」を満たすか否かを分娩機関にて証明してもらう必要があります(分娩機関に、所定の「補償対象基準に関する証明書」を作成していただきます)。
別表第一 補償対象基準
出生した児が次の一又は二に掲げるいずれかの状態であること
両側性の広範な脳奇形、染色体異常、遺伝子異常、先天性代謝異常または先天異常が
重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合
しかし、先天性の要因に示される疾患などがある場合でも、それだけをもって一律に補償対象外とするのではありません。重度の運動障害の主な原因であることが明らかでない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。その疾患などが重度の運動障害の主な原因であることが明らかか否かなどについては、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。
★例えば
広範な脳奇形がありかつ重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合は、補償の対象としません。しかし、脳奇形があっても、それが重度の運動障害の主な原因であることが明らかとは言えない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。
また、お子様の先天性の要因であることが明らかとは言えない場合も、「除外基準」に該当しないことになります。
分娩とは無関係に発症した髄膜炎、
脳炎、その他の神経疾患、虐待、その他の外傷などが
重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合
しかし、新生児期の要因(感染症など)であっても、分娩とは無関係に発症したものであることが明らかでない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。その疾患などが分娩後に、分娩とは無関係に発症したものであることが明らかか否かなどについては、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。
★例えば
分娩と関連があると考えられる新生児感染症は、生後7日以内に発症する早発性が多いことから、原則として7日以内に発症した感染症は分娩と関連があると考えます。なお、遅発性のものについては、何らかの兆候がある場合や産道感染など分娩時の感染と考えられる場合は、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。
★例えば
分娩後に呼吸停止が起こったが、呼吸停止が起こるまでの時間や新生児期の経過などから、分娩の影響が否定できない場合は、「除外基準」に該当しません。分娩機関の管理下で生後4日目に呼吸停止が起こった事例で、補償の対象となった場合もあります。
第四条(補償対象としない場合)
運営組織は、次に掲げるいずれかの事由によって発生した脳性麻痺については、この制度の補償対象として認定しません。
将来実用的な歩行ができるようになると考えられるか否かが、
判断の目安の一つです。
本制度における重症度については、身体障害認定基準(身体障害者手帳の障害等級)を参考にしていますが、そのものによるのではなく、本制度としての専用の診断書および診断基準によるものとしています。
重度の運動障害については、「下肢・体幹」と「上肢」に分けて、それぞれの障害の程度によって基準を満たすか否かの判定を行います。
「下肢・体幹」に関しては、将来実用的な歩行※(注記)が不可能と考えられる状態を「重度の運動障害をきたすと推定される状態」としています。
「上肢」に関しては、両上肢(両腕)では握る程度の簡単な動き以外ができない状態、また一上肢(片腕)では機能が全廃※(注記)した状態を「重度の運動障害をきたすと推定される状態」としています。
これらの状態に該当するか否かを診断医(診断書を作成する医師)にて診断していただき、最終的には運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。
お子様の状態によって、
重度脳性麻痺であると診断が可能となる時期を待つ必要があります。
以下の場合は、早い年齢では診断や障害程度の判定が困難であるため、適切な時期に診断を受けてください。
将来実用的な歩行が可能か否かについては、それぞれの診断時期ごとに判断の目安を設けています。以下の状態に該当する場合は、重症度の基準を満たす可能性が高くなります。
年齢 | 重症度の基準を満たす可能性が高いお子様の状態 |
---|---|
6ヶ月から1歳未満のとき | 重力に抗して頚部のコントロールが困難である |
1歳から1歳6ヶ月未満のとき | 寝返りを含めて、体幹を動かすことが困難である |
1歳6ヶ月から2歳未満のとき | 肘這いが困難、床に手をつけた状態であっても介助なしでは坐位姿勢保持が困難である |
2歳から3歳未満のとき | 寝ている状態から介助なしに坐位に起き上がることが困難である |
3歳から4歳未満のとき | つかまり立ち、交互性の四つ這い、伝い歩き、歩行補助具での移動(介助あり)の全ての動作が困難である ただし、下肢装具なしの状態で、つかまり立ち、交互性の四つ這い、伝い歩き、歩行補助具での移動(介助あり)のいずれか一つの動作が可能であったとしても、他の動作が困難な場合には、児の発達段階を考慮し、基準を満たす場合がある |
4歳から5歳未満のとき | 下肢装具や歩行補助具を使用しないと、安定した歩行、速やかな停止、スムーズな方向転換が困難である |
★例えば
以下のような事例では「重症度の基準」を満たさない可能性が高いことになります。
ある程度の歩行が可能であっても、上肢(腕)の著しい障害があるお子様については、「重症度の基準」を満たすことになります。ただし、上肢の障害のみで補償申請を行う場合は、早い年齢では診断や障害程度の判定が難しいため、原則として3歳以降に診断を行っていただくことにしています。障害のある上肢ごとに判断の目安を設けており、以下の状態に該当する場合は、重症度の基準を満たす可能性が高くなります。
障害のある上肢 | 重症度の基準を満たす可能性が高いお子様の状態 |
---|---|
一上肢(片腕) | 障害側の基本的な機能が全廃している |
両上肢(両腕) | 脳性麻痺による運動機能障害により、食事摂取動作が一人では困難で、かなりの介助を要する |
★例えば、
以下のような事例では「重症度の基準」を満たさない可能性が高いことになります。
「下肢・体幹の運動障害」または「上肢の運動障害」のいずれかによる障害程度の判定では重症度の基準を満たさない場合でも、下肢・体幹および上肢の両方に障害がある場合(片麻痺等)は、下肢・体幹および上肢の運動障害の総合的な判断で基準を満たすことがあります。
例)片麻痺の場合
障害側の一上肢に著しい障害※(注記)1があり、かつ障害側の一下肢に著しい障害※(注記)2がある場合は、総合的な判断で基準を満たすと考えられます。
なお、片麻痺で補償認定請求を行う際、写真のみでは障害程度の判断が困難と考えられる場合は、歩行(階段昇降等)や上肢での動作の状況(握る、つかむ、物に手をのばす等の動作や食事の動作等)を撮影した動画を追加でお願いすることがあります。
【参考】産科医療補償制度補償約款(抜粋)
第二条 (用語の定義)≪一部抜粋≫
詳細については、「補償対象となる脳性麻痺の基準」の解説をご参照下さい。
産科医療補償制度では、2022年以降に分娩機関の医学的管理下(注)において出生したお子様が、産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金を支払います。
補償対象と認定されるには、第二条第一項第二号に規定された「脳性麻痺」の定義に合致する必要があります。産科医療補償制度では、「脳性麻痺」を以下のように定義しています。
第二条第一項第二号
「脳性麻痺」とは、受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた児の脳の非進行性病変に基づく、出生後の児の永続的かつ変化しうる運動又は姿勢の異常をいいます。ただし、進行性疾患、一過性の運動障害又は将来正常化するであろうと思われる運動発達遅滞を除きます。
★例えば
産科医療補償制度では、「脳性麻痺」を上記のとおり定義しているため、以下のような場合には「本制度の定める脳性麻痺の定義に合致しない」として、補償対象外となることがあります。
別表第一 補償対象基準
出生した児の在胎週数が28週以上であること
両側性の広範な脳奇形、染色体異常、遺伝子異常、先天性代謝異常または先天異常が
重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合
しかし、先天性の要因に示される疾患などがある場合でも、それだけをもって一律に補償対象外とするのではありません。重度の運動障害の主な原因であることが明らかでない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。その疾患などが重度の運動障害の主な原因であることが明らかか否かなどについては、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。
★例えば
広範な脳奇形がありかつ重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合は、補償の対象としません。しかし、脳奇形があっても、それが重度の運動障害の主な原因であることが明らかとは言えない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。
また、お子様の先天性の要因であることが明らかとは言えない場合も、「除外基準」に該当しないことになります。
分娩とは無関係に発症した髄膜炎、
脳炎、その他の神経疾患、虐待、その他の外傷などが
重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合
しかし、新生児期の要因(感染症など)であっても、分娩とは無関係に発症したものであることが明らかでない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。その疾患などが分娩後に、分娩とは無関係に発症したものであることが明らかか否かなどについては、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。
★例えば
分娩と関連があると考えられる新生児感染症は、生後7日以内に発症する早発性が多いことから、原則として7日以内に発症した感染症は分娩と関連があると考えます。なお、遅発性のものについては、何らかの兆候がある場合や産道感染など分娩時の感染と考えられる場合は、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。
★例えば
分娩後に呼吸停止が起こったが、呼吸停止が起こるまでの時間や新生児期の経過などから、分娩の影響が否定できない場合は、「除外基準」に該当しません。分娩機関の管理下で生後4日目に呼吸停止が起こった事例で、補償の対象となった場合もあります。
第四条(補償対象としない場合)
運営組織は、次に掲げるいずれかの事由によって発生した脳性麻痺については、この制度の補償対象として認定しません。
将来実用的な歩行ができるようになると考えられるか否かが、
判断の目安の一つです。
本制度における重症度については、身体障害認定基準(身体障害者手帳の障害等級)を参考にしていますが、そのものによるのではなく、本制度としての専用の診断書および診断基準によるものとしています。
重度の運動障害については、「下肢・体幹」と「上肢」に分けて、それぞれの障害の程度によって基準を満たすか否かの判定を行います。
「下肢・体幹」に関しては、将来実用的な歩行※(注記)が不可能と考えられる状態を「重度の運動障害をきたすと推定される状態」としています。
「上肢」に関しては、両上肢(両腕)では握る程度の簡単な動き以外ができない状態、また一上肢(片腕)では機能が全廃※(注記)した状態を「重度の運動障害をきたすと推定される状態」としています。
これらの状態に該当するか否かを診断医(診断書を作成する医師)にて診断していただき、最終的には運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。
お子様の状態によって、
重度脳性麻痺であると診断が可能となる時期を待つ必要があります。
以下の場合は、早い年齢では診断や障害程度の判定が困難であるため、適切な時期に診断を受けてください。
将来実用的な歩行が可能か否かについては、それぞれの診断時期ごとに判断の目安を設けています。以下の状態に該当する場合は、重症度の基準を満たす可能性が高くなります。
年齢 | 重症度の基準を満たす可能性が高いお子様の状態 |
---|---|
6ヶ月から1歳未満のとき | 重力に抗して頚部のコントロールが困難である |
1歳から1歳6ヶ月未満のとき | 寝返りを含めて、体幹を動かすことが困難である |
1歳6ヶ月から2歳未満のとき | 肘這いが困難、床に手をつけた状態であっても介助なしでは坐位姿勢保持が困難である |
2歳から3歳未満のとき | 寝ている状態から介助なしに坐位に起き上がることが困難である |
3歳から4歳未満のとき | つかまり立ち、交互性の四つ這い、伝い歩き、歩行補助具での移動(介助あり)の全ての動作が困難である ただし、下肢装具なしの状態で、つかまり立ち、交互性の四つ這い、伝い歩き、歩行補助具での移動(介助あり)のいずれか一つの動作が可能であったとしても、他の動作が困難な場合には、児の発達段階を考慮し、基準を満たす場合がある |
4歳から5歳未満のとき | 下肢装具や歩行補助具を使用しないと、安定した歩行、速やかな停止、スムーズな方向転換が困難である |
★例えば
以下のような事例では「重症度の基準」を満たさない可能性が高いことになります。
ある程度の歩行が可能であっても、上肢(腕)の著しい障害があるお子様については、「重症度の基準」を満たすことになります。ただし、上肢の障害のみで補償申請を行う場合は、早い年齢では診断や障害程度の判定が難しいため、原則として3歳以降に診断を行っていただくことにしています。障害のある上肢ごとに判断の目安を設けており、以下の状態に該当する場合は、重症度の基準を満たす可能性が高くなります。
障害のある上肢 | 重症度の基準を満たす可能性が高いお子様の状態 |
---|---|
一上肢(片腕) | 障害側の基本的な機能が全廃している |
両上肢(両腕) | 脳性麻痺による運動機能障害により、食事摂取動作が一人では困難で、かなりの介助を要する |
★例えば、
以下のような事例では「重症度の基準」を満たさない可能性が高いことになります。
「下肢・体幹の運動障害」または「上肢の運動障害」のいずれかによる障害程度の判定では重症度の基準を満たさない場合でも、下肢・体幹および上肢の両方に障害がある場合(片麻痺等)は、下肢・体幹および上肢の運動障害の総合的な判断で基準を満たすことがあります。
例)片麻痺の場合
障害側の一上肢に著しい障害※(注記)1があり、かつ障害側の一下肢に著しい障害※(注記)2がある場合は、総合的な判断で基準を満たすと考えられます。
なお、片麻痺で補償認定請求を行う際、写真のみでは障害程度の判断が困難と考えられる場合は、歩行(階段昇降等)や上肢での動作の状況(握る、つかむ、物に手をのばす等の動作や食事の動作等)を撮影した動画を追加でお願いすることがあります。
【参考】産科医療補償制度補償約款(抜粋)
第二条 (用語の定義)≪一部抜粋≫
詳細については、「補償対象となる脳性麻痺の基準」の解説をご参照下さい。