産科医療補償制度の補償申請について

補償対象の範囲と考え方

産科医療補償制度では、2015年以降に分娩機関の医学的管理下(注)において出生したお子様が、産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金を支払います。

(注)
「管理下」とは、分娩機関が自らの医学的管理の下に分娩を取り扱った場合を指し、複数の分娩機関が管理する場合は、基本的に分娩取扱いの対価である分娩料を徴収する分娩機関の管理下にあるものと考えられます。
自宅や緊急搬送中の分娩等については、関与する分娩機関、娩出時の状況等に従い、お子様の不利益とならないよう、個別に検討を行って決定されます。
産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義について

補償対象と認定されるには、第二条第一項第二号に規定された「脳性麻痺」の定義に合致する必要があります。産科医療補償制度では、「脳性麻痺」を以下のように定義しています。

第二条第一項第二号
「脳性麻痺」とは、受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた児の脳の非進行性病変に基づく、出生後の児の永続的かつ変化しうる運動又は姿勢の異常をいいます。ただし、進行性疾患、一過性の運動障害又は将来正常化するであろうと思われる運動発達遅滞を除きます。

★例えば
産科医療補償制度では、「脳性麻痺」を上記のとおり定義しているため、以下のような場合には「本制度の定める脳性麻痺の定義に合致しない」として、補償対象外となることがあります。

  • 重度知的障害のみによる重度の運動障害であることが明らかな場合
  • 進行性の脳病変が認められる場合 など

「補償対象」と認定される3つの基準

1.
在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上、または在胎週数28週以上で低酸素状況を示す所定の要件を満たして出生したこと
(注記)
在胎週数の週数は、妊娠週数の週数と同じです。
2.
先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること
(注記)
この他、お子様が生後6ヵ月未満で死亡した場合は、補償対象としていません。
3.
身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺であること
(注記)
補償申請の時点での手帳の取得の有無は、審査の結果には影響しません。
1. 補償対象基準について
生まれたときの在胎週数や出生体重などに関する基準です。

補償対象基準における「在胎週数」と「出生体重」の関係(イメージ)

一般審査の基準

在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上の場合は、分娩中の異常(注記)1や出生時の仮死(注記)2がなくても、「補償対象基準」を満たすことになります。

(注記)1
「分娩中の異常」とは、常位胎盤早期剥離、臍帯脱出、子宮破裂なども含め、胎児の心音、胎位、陣痛等において正常の経過ではみられない状況が生じることなどを言います。
(注記)2
「出生時の仮死」の程度は、一般にアプガースコアなどを用いて評価が行われます。
アプガースコアは、心拍数、呼吸数、筋緊張、刺激に対する反射、皮膚の色をそれぞれ0〜2点で採点し、合計点数(10点満点)が低いほど重症の仮死とされます。

★例えば
在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上の場合は、次のような事例でも「補償対象基準」を満たします。

  • アプガースコアが9点や10点だった場合
  • 無事にお産が済み、退院したときは特に異常がみられなかった場合

個別審査の基準

(注記)
具体的には、「在胎週数28週以上32週未満(出生体重は問わず)」、または「在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g未満」のいずれかに該当する場合のことを言います。

個別審査の基準を満たすことを証明する検査データ等の資料が提出されない場合は、原則として補償対象となりません。個別審査の基準を満たすことを証明する検査データ等の資料が提出できない場合でも、いずれかの基準を満たすと考えられるときは、以下の①〜③を考慮して判断しますので、理由をお示しください。

緊急性等に照らして考えると、データが取得できなかったことにやむを得ない合理的な事情がある
診療録から、胎児に突発的な低酸素状態が生じたことが明らかであると考えられる
仮にデータを取得できていれば、明らかに基準を満たしていたと考えられる

補償申請を行う場合には、以上の「補償対象基準」を満たすか否かを分娩機関にて証明してもらう必要があります(分娩機関に、所定の「補償対象基準に関する証明書」を作成していただきます)。

【参考】産科医療補償制度補償約款(抜粋)

別表第一 補償対象基準

出生した児が次の一又は二に掲げるいずれかの状態であること

出生体重1,400グラム以上であり、かつ、在胎週数32週以上であること
在胎週数28週以上であり、次の(一)または(二)に該当すること
(一)
低酸素状況が持続して臍帯動脈血中の代謝性アシドーシス(酸性血症)の所見が認められる場合(pH値が7.1未満)
(二)
低酸素状況が常位胎盤早期剥離、臍帯脱出、子宮破裂、子癇、胎児母体間輸血症候群、前置胎盤からの出血、急激に発症した双胎間輸血症候群等によって起こり、引き続き、次のイからチまでのいずれかの所見が認められる場合
突発性で持続する徐脈
子宮収縮の50%以上に出現する遅発一過性徐脈
子宮収縮の50%以上に出現する変動一過性徐脈
心拍数基線細変動の消失
心拍数基線細変動の減少を伴った高度徐脈
サイナソイダルパターン
アプガースコア1分値が3点以下
生後1時間以内の児の血液ガス分析値(pH値が7.0未満)
2. 除外基準について
脳性麻痺の原因が先天性または新生児期等の要因に基づく場合などは、補償対象とならないことについて定めた基準です。(出生年による基準の違いはありません)

先天性の要因

両側性の広範な脳奇形、染色体異常、遺伝子異常、先天性代謝異常または先天異常が
重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合

しかし、先天性の要因に示される疾患などがある場合でも、それだけをもって一律に補償対象外とするのではありません。重度の運動障害の主な原因であることが明らかでない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。その疾患などが重度の運動障害の主な原因であることが明らかか否かなどについては、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。

★例えば
広範な脳奇形がありかつ重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合は、補償の対象としません。しかし、脳奇形があっても、それが重度の運動障害の主な原因であることが明らかとは言えない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。

また、お子様の先天性の要因であることが明らかとは言えない場合も、「除外基準」に該当しないことになります。

新生児期の要因

分娩とは無関係に発症した髄膜炎、
脳炎、その他の神経疾患、虐待、その他の外傷などが
重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合

しかし、新生児期の要因(感染症など)であっても、分娩とは無関係に発症したものであることが明らかでない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。その疾患などが分娩後に、分娩とは無関係に発症したものであることが明らかか否かなどについては、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。

★例えば
分娩と関連があると考えられる新生児感染症は、生後7日以内に発症する早発性が多いことから、原則として7日以内に発症した感染症は分娩と関連があると考えます。なお、遅発性のものについては、何らかの兆候がある場合や産道感染など分娩時の感染と考えられる場合は、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。

★例えば
分娩後に呼吸停止が起こったが、呼吸停止が起こるまでの時間や新生児期の経過などから、分娩の影響が否定できない場合は、「除外基準」に該当しません。分娩機関の管理下で生後4日目に呼吸停止が起こった事例で、補償の対象となった場合もあります。

【参考】産科医療補償制度補償約款(抜粋)

第四条(補償対象としない場合)

1.

運営組織は、次に掲げるいずれかの事由によって発生した脳性麻痺については、この制度の補償対象として認定しません。

児の先天性要因(両側性の広範な脳奇形、染色体異常、遺伝子異常、先天性代謝異常又は先天異常)
児の新生児期の要因(分娩後の感染症等)
妊娠若しくは分娩中における妊婦の故意又は重大な過失
地震、噴火、津波等の天災又は戦争、暴動等の非常事態
2.
運営組織は、児が生後6月未満で死亡した場合は、この制度の補償対象として認定しません。
3. 重症度の基準について
脳性麻痺の程度が身体障害者手帳の1級または2級に相当するかどうかを、運動機能の障害の程度(重症度)によって判断する基準です。(出生年による基準の違いはありません)

重症度の判断の目安

将来実用的な歩行ができるようになると考えられるか否かが、
判断の目安の一つです。

本制度における重症度については、身体障害認定基準(身体障害者手帳の障害等級)を参考にしていますが、そのものによるのではなく、本制度としての専用の診断書および診断基準によるものとしています。

重度の運動障害については、「下肢・体幹」と「上肢」に分けて、それぞれの障害の程度によって基準を満たすか否かの判定を行います。

「下肢・体幹」に関しては、将来実用的な歩行(注記)が不可能と考えられる状態を「重度の運動障害をきたすと推定される状態」としています。

「上肢」に関しては、両上肢(両腕)では握る程度の簡単な動き以外ができない状態、また一上肢(片腕)では機能が全廃(注記)した状態を「重度の運動障害をきたすと推定される状態」としています。

これらの状態に該当するか否かを診断医(診断書を作成する医師)にて診断していただき、最終的には運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。

(注記)
「実用的な歩行」とは、装具や歩行補助具(杖、歩行器)を使用しない状況で、立ち上がって、立位保持ができ、10メートル以上つかまらずに歩行し、さらに静止することをすべてひとりでできる状態のことをいいます。
(注記)
「全廃」とは、すべての機能が使えない状態のことをいいます。

診断書の作成の時期

お子様の状態によって、
重度脳性麻痺であると診断が可能となる時期を待つ必要があります。


以下の場合は、早い年齢では診断や障害程度の判定が困難であるため、適切な時期に診断を受けてください。

  • 低緊張型脳性麻痺の場合・・・原則として3歳以降の診断
  • 上肢のみの障害で補償申請を行う場合・・・原則として3歳以降の診断
  • 「下肢・体幹運動」、および「上肢運動」のいずれかの障害程度では基準を満たしていないが、下肢・体幹および上肢の両方に障害がある場合(片麻痺等)・・・原則として4歳以降の診断および動画の提出

<下肢・体幹に関する判断目安>

将来実用的な歩行が可能か否かについては、それぞれの診断時期ごとに判断の目安を設けています。以下の状態に該当する場合は、重症度の基準を満たす可能性が高くなります。

年齢 重症度の基準を満たす可能性が高いお子様の状態
6ヶ月から1歳未満のとき 重力に抗して頚部のコントロールが困難である
1歳から1歳6ヶ月未満のとき 寝返りを含めて、体幹を動かすことが困難である
1歳6ヶ月から2歳未満のとき 肘這いが困難、床に手をつけた状態であっても介助なしでは坐位姿勢保持が困難である
2歳から3歳未満のとき 寝ている状態から介助なしに坐位に起き上がることが困難である
3歳から4歳未満のとき つかまり立ち、交互性の四つ這い、伝い歩き、歩行補助具での移動(介助あり)の全ての動作が困難である
ただし、下肢装具なしの状態で、つかまり立ち、交互性の四つ這い、伝い歩き、歩行補助具での移動(介助あり)のいずれか一つの動作が可能であったとしても、他の動作が困難な場合には、児の発達段階を考慮し、基準を満たす場合がある
4歳から5歳未満のとき 下肢装具や歩行補助具を使用しないと、安定した歩行、速やかな停止、スムーズな方向転換が困難である

★例えば
以下のような事例では「重症度の基準」を満たさない可能性が高いことになります。

  • 1歳から1歳6ヶ月未満の間に診断してもらったとき、寝返りができる場合
  • 1歳6ヶ月から2歳未満の間に診断してもらったとき、肘這いができる、床に手をつけた状態で介助なしで坐位姿勢保持ができる場合

<上肢に関する判断目安>

ある程度の歩行が可能であっても、上肢(腕)の著しい障害があるお子様については、「重症度の基準」を満たすことになります。ただし、上肢の障害のみで補償申請を行う場合は、早い年齢では診断や障害程度の判定が難しいため、原則として3歳以降に診断を行っていただくことにしています。障害のある上肢ごとに判断の目安を設けており、以下の状態に該当する場合は、重症度の基準を満たす可能性が高くなります。

障害のある上肢 重症度の基準を満たす可能性が高いお子様の状態
一上肢(片腕) 障害側の基本的な機能が全廃している
両上肢(両腕) 脳性麻痺による運動機能障害により、食事摂取動作が一人では困難で、かなりの介助を要する

★例えば、
以下のような事例では「重症度の基準」を満たさない可能性が高いことになります。

  • 一上肢(片腕)の障害のみで診断してもらったとき、本制度の専用診断書で示している動作・活動に関する項目が1つでも可能な場合
  • 両上肢(両腕)の障害で診断してもらったとき、自分の意思で物をつかみ、動かすことができる場合

<下肢・体幹および上肢の運動障害による総合的な判断に関する判断目安>

「下肢・体幹の運動障害」または「上肢の運動障害」のいずれかによる障害程度の判定では重症度の基準を満たさない場合でも、下肢・体幹および上肢の両方に障害がある場合(片麻痺等)は、下肢・体幹および上肢の運動障害の総合的な判断で基準を満たすことがあります。

例)片麻痺の場合
障害側の一上肢に著しい障害(注記)1があり、かつ障害側の一下肢に著しい障害(注記)2がある場合は、総合的な判断で基準を満たすと考えられます。

(注記)1 一上肢の著しい障害とは「握る程度の簡単な動き以外はできない状態」とします。
(注記)2 一下肢の著しい障害とは「4歳から5歳未満のとき、手すりにすがらなければ階段をあがることが困難な状態」とします。

なお、片麻痺で補償認定請求を行う際、写真のみでは障害程度の判断が困難と考えられる場合は、歩行(階段昇降等)や上肢での動作の状況(握る、つかむ、物に手をのばす等の動作や食事の動作等)を撮影した動画を追加でお願いすることがあります。



【参考】産科医療補償制度補償約款(抜粋)

第二条 (用語の定義)≪一部抜粋≫

「重度脳性麻痺」とは、身体障害者福祉法施行規則に定める身体障害者障害程度等級一級又は二級に相当する脳性麻痺をいいます。


詳細については、「補償対象となる脳性麻痺の基準」の解説をご参照下さい。

補償対象の範囲と考え方

産科医療補償制度では、2022年以降に分娩機関の医学的管理下(注)において出生したお子様が、産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金を支払います。

(注)
「管理下」とは、分娩機関が自らの医学的管理の下に分娩を取り扱った場合を指し、複数の分娩機関が管理する場合は、基本的に分娩取扱いの対価である分娩料を徴収する分娩機関の管理下にあるものと考えられます。
自宅や緊急搬送中の分娩等については、関与する分娩機関、娩出時の状況等に従い、お子様の不利益とならないよう、個別に検討を行って決定されます。
産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義について

補償対象と認定されるには、第二条第一項第二号に規定された「脳性麻痺」の定義に合致する必要があります。産科医療補償制度では、「脳性麻痺」を以下のように定義しています。

第二条第一項第二号
「脳性麻痺」とは、受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた児の脳の非進行性病変に基づく、出生後の児の永続的かつ変化しうる運動又は姿勢の異常をいいます。ただし、進行性疾患、一過性の運動障害又は将来正常化するであろうと思われる運動発達遅滞を除きます。

★例えば
産科医療補償制度では、「脳性麻痺」を上記のとおり定義しているため、以下のような場合には「本制度の定める脳性麻痺の定義に合致しない」として、補償対象外となることがあります。

  • 重度知的障害のみによる重度の運動障害であることが明らかな場合
  • 進行性の脳病変が認められる場合 など

「補償対象」と認定される3つの基準

1.
在胎週数28週以上であること
(注記)
在胎週数の週数は、妊娠週数の週数と同じです。
2.
先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること
(注記)
この他、お子様が生後6ヵ月未満で死亡した場合は、補償対象としていません。
3.
身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺であること
(注記)
補償申請の時点での手帳の取得の有無は、審査の結果には影響しません。
1. 補償対象基準について
生まれたときの在胎週数や出生体重などに関する基準です。

補償対象基準における「在胎週数」と「出生体重」の関係(イメージ)

【参考】産科医療補償制度補償約款(抜粋)

別表第一 補償対象基準

出生した児の在胎週数が28週以上であること

2. 除外基準について
脳性麻痺の原因が先天性または新生児期等の要因に基づく場合などは、補償対象とならないことについて定めた基準です。(出生年による基準の違いはありません)

先天性の要因

両側性の広範な脳奇形、染色体異常、遺伝子異常、先天性代謝異常または先天異常が
重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合

しかし、先天性の要因に示される疾患などがある場合でも、それだけをもって一律に補償対象外とするのではありません。重度の運動障害の主な原因であることが明らかでない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。その疾患などが重度の運動障害の主な原因であることが明らかか否かなどについては、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。

★例えば
広範な脳奇形がありかつ重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合は、補償の対象としません。しかし、脳奇形があっても、それが重度の運動障害の主な原因であることが明らかとは言えない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。

また、お子様の先天性の要因であることが明らかとは言えない場合も、「除外基準」に該当しないことになります。

新生児期の要因

分娩とは無関係に発症した髄膜炎、
脳炎、その他の神経疾患、虐待、その他の外傷などが
重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合

しかし、新生児期の要因(感染症など)であっても、分娩とは無関係に発症したものであることが明らかでない場合は、「除外基準」に該当しないことになります。その疾患などが分娩後に、分娩とは無関係に発症したものであることが明らかか否かなどについては、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。

★例えば
分娩と関連があると考えられる新生児感染症は、生後7日以内に発症する早発性が多いことから、原則として7日以内に発症した感染症は分娩と関連があると考えます。なお、遅発性のものについては、何らかの兆候がある場合や産道感染など分娩時の感染と考えられる場合は、運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。

★例えば
分娩後に呼吸停止が起こったが、呼吸停止が起こるまでの時間や新生児期の経過などから、分娩の影響が否定できない場合は、「除外基準」に該当しません。分娩機関の管理下で生後4日目に呼吸停止が起こった事例で、補償の対象となった場合もあります。

【参考】産科医療補償制度補償約款(抜粋)

第四条(補償対象としない場合)

1.

運営組織は、次に掲げるいずれかの事由によって発生した脳性麻痺については、この制度の補償対象として認定しません。

児の先天性要因(両側性の広範な脳奇形、染色体異常、遺伝子異常、先天性代謝異常又は先天異常)
児の新生児期の要因(分娩後の感染症等)
妊娠若しくは分娩中における妊婦の故意又は重大な過失
地震、噴火、津波等の天災又は戦争、暴動等の非常事態
2.
運営組織は、児が生後6月未満で死亡した場合は、この制度の補償対象として認定しません。
3. 重症度の基準について
脳性麻痺の程度が身体障害者手帳の1級または2級に相当するかどうかを、運動機能の障害の程度(重症度)によって判断する基準です。(出生年による基準の違いはありません)

重症度の判断の目安

将来実用的な歩行ができるようになると考えられるか否かが、
判断の目安の一つです。

本制度における重症度については、身体障害認定基準(身体障害者手帳の障害等級)を参考にしていますが、そのものによるのではなく、本制度としての専用の診断書および診断基準によるものとしています。

重度の運動障害については、「下肢・体幹」と「上肢」に分けて、それぞれの障害の程度によって基準を満たすか否かの判定を行います。

「下肢・体幹」に関しては、将来実用的な歩行(注記)が不可能と考えられる状態を「重度の運動障害をきたすと推定される状態」としています。

「上肢」に関しては、両上肢(両腕)では握る程度の簡単な動き以外ができない状態、また一上肢(片腕)では機能が全廃(注記)した状態を「重度の運動障害をきたすと推定される状態」としています。

これらの状態に該当するか否かを診断医(診断書を作成する医師)にて診断していただき、最終的には運営組織の審査委員会において個別事案ごとに判断します。

(注記)
「実用的な歩行」とは、装具や歩行補助具(杖、歩行器)を使用しない状況で、立ち上がって、立位保持ができ、10メートル以上つかまらずに歩行し、さらに静止することをすべてひとりでできる状態のことをいいます。
(注記)
「全廃」とは、すべての機能が使えない状態のことをいいます。

診断書の作成の時期

お子様の状態によって、
重度脳性麻痺であると診断が可能となる時期を待つ必要があります。


以下の場合は、早い年齢では診断や障害程度の判定が困難であるため、適切な時期に診断を受けてください。

  • 低緊張型脳性麻痺の場合・・・原則として3歳以降の診断
  • 上肢のみの障害で補償申請を行う場合・・・原則として3歳以降の診断
  • 「下肢・体幹運動」、および「上肢運動」のいずれかの障害程度では基準を満たしていないが、下肢・体幹および上肢の両方に障害がある場合(片麻痺等)・・・原則として4歳以降の診断および動画の提出

<下肢・体幹に関する判断目安>

将来実用的な歩行が可能か否かについては、それぞれの診断時期ごとに判断の目安を設けています。以下の状態に該当する場合は、重症度の基準を満たす可能性が高くなります。

年齢 重症度の基準を満たす可能性が高いお子様の状態
6ヶ月から1歳未満のとき 重力に抗して頚部のコントロールが困難である
1歳から1歳6ヶ月未満のとき 寝返りを含めて、体幹を動かすことが困難である
1歳6ヶ月から2歳未満のとき 肘這いが困難、床に手をつけた状態であっても介助なしでは坐位姿勢保持が困難である
2歳から3歳未満のとき 寝ている状態から介助なしに坐位に起き上がることが困難である
3歳から4歳未満のとき つかまり立ち、交互性の四つ這い、伝い歩き、歩行補助具での移動(介助あり)の全ての動作が困難である
ただし、下肢装具なしの状態で、つかまり立ち、交互性の四つ這い、伝い歩き、歩行補助具での移動(介助あり)のいずれか一つの動作が可能であったとしても、他の動作が困難な場合には、児の発達段階を考慮し、基準を満たす場合がある
4歳から5歳未満のとき 下肢装具や歩行補助具を使用しないと、安定した歩行、速やかな停止、スムーズな方向転換が困難である

★例えば
以下のような事例では「重症度の基準」を満たさない可能性が高いことになります。

  • 1歳から1歳6ヶ月未満の間に診断してもらったとき、寝返りができる場合
  • 1歳6ヶ月から2歳未満の間に診断してもらったとき、肘這いができる、床に手をつけた状態で介助なしで坐位姿勢保持ができる場合

<上肢に関する判断目安>

ある程度の歩行が可能であっても、上肢(腕)の著しい障害があるお子様については、「重症度の基準」を満たすことになります。ただし、上肢の障害のみで補償申請を行う場合は、早い年齢では診断や障害程度の判定が難しいため、原則として3歳以降に診断を行っていただくことにしています。障害のある上肢ごとに判断の目安を設けており、以下の状態に該当する場合は、重症度の基準を満たす可能性が高くなります。

障害のある上肢 重症度の基準を満たす可能性が高いお子様の状態
一上肢(片腕) 障害側の基本的な機能が全廃している
両上肢(両腕) 脳性麻痺による運動機能障害により、食事摂取動作が一人では困難で、かなりの介助を要する

★例えば、
以下のような事例では「重症度の基準」を満たさない可能性が高いことになります。

  • 一上肢(片腕)の障害のみで診断してもらったとき、本制度の専用診断書で示している動作・活動に関する項目が1つでも可能な場合
  • 両上肢(両腕)の障害で診断してもらったとき、自分の意思で物をつかみ、動かすことができる場合

<下肢・体幹および上肢の運動障害による総合的な判断に関する判断目安>

「下肢・体幹の運動障害」または「上肢の運動障害」のいずれかによる障害程度の判定では重症度の基準を満たさない場合でも、下肢・体幹および上肢の両方に障害がある場合(片麻痺等)は、下肢・体幹および上肢の運動障害の総合的な判断で基準を満たすことがあります。

例)片麻痺の場合
障害側の一上肢に著しい障害(注記)1があり、かつ障害側の一下肢に著しい障害(注記)2がある場合は、総合的な判断で基準を満たすと考えられます。

(注記)1 一上肢の著しい障害とは「握る程度の簡単な動き以外はできない状態」とします。
(注記)2 一下肢の著しい障害とは「4歳から5歳未満のとき、手すりにすがらなければ階段をあがることが困難な状態」とします。

なお、片麻痺で補償認定請求を行う際、写真のみでは障害程度の判断が困難と考えられる場合は、歩行(階段昇降等)や上肢での動作の状況(握る、つかむ、物に手をのばす等の動作や食事の動作等)を撮影した動画を追加でお願いすることがあります。



【参考】産科医療補償制度補償約款(抜粋)

第二条 (用語の定義)≪一部抜粋≫

「重度脳性麻痺」とは、身体障害者福祉法施行規則に定める身体障害者障害程度等級一級又は二級に相当する脳性麻痺をいいます。


詳細については、「補償対象となる脳性麻痺の基準」の解説をご参照下さい。

参考事例は、こちらからご覧いただけます。

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