青山さん1 先週土曜日の朝、慶應SDM委員長の前野先生のお部屋に、UターンIターンの成功やさざえカレーなど食材の地域活性化で有名な隠岐・海士町の町役場の青山さんが、「しあわせのコミュニティ」プロジェクト関係者とともに来訪されたのに、同席させていただきました。
UターンIターンの成功とメディアは持ち上げるが、そういう路線の広報はしたことがないとのこと。
実は一貫して、広域合併をせず、過疎自立支援法の補助金もできるだけもらわず、顔の見えるコミュニティとして離島で自立した暮らしを立てていくにはどうしたらよいか、考え行動してきたら、このような活動になったとのことでした。
公的セクターの助成に頼らず、じぶんたちがじぶんたちで食べていける、顔の見えるコミュニティでの地域活性化をやろう。町議会や町役場、商工会、農協などのメンバーをはじめとする地域のステークホルダーが覚悟したのは、人口高齢化と人口減少中でこのままではどうしようもなくなるという絵を描いていた、町の長期財政シュミレーションを共有したときだったのだそうです。
海士町をひとつのてづくりデパートとして、みなが雇用を得て自立する町にしたい。そういう意気込みで10年以上頑張られてきたそうです。コミュニティのしあわせと活性化に、顔が見えるということは本当に大切になのですね。まちつくりが自分ごとになる、ということでしょうか。
青山さん2 地域活性化の成功例として取り扱われることの多い海士町ですが、青山さんはあえてこれから新しい活性化の計画を作っていきたいと展望を語られました。研究者もメディアも海士町を取材し、自在に書いて去っていかれるのだが、海士町の当事者たちが活性化に向けて研究を進めたいというという思いに対して、研究者やメディアの方々とのコラボはあまり多くはなかったそうでした。ちょっと意外でした。
地域活性化のよきツールとしてあげられることの多い、農業、観光、アンテナショップも、流通と販売を地元の手に取り戻さなければ、流通と販売に多くの付加価値を握られたまま、地元は衰退していく、と語っておられたのも印象的てした。
真の地域活性化とは何なのか、金言を多くいただいた2時間でした。とても勉強になりました。
以下のその金言のいくつかをそのまま記します。
「町は定住で補助金など出したことはない。ただひとつやったことは、お店を365日開けること。役場やお店の自分の都合で閉めた店をせっかく来てくれた人に見せても、残念に思われるだけ。」「海士町へはどうやって行くの? 土日にかかってきた電話に、観光協会が親切に対応するだけで、反応はまったく違う。」まさに顧客のリクワイアメントを把握するというシステム分析の第一段階のツボですね。
「島の行商人大募集、島のおかみさん大募集、島の案内人大募集、という海士町の試みは、海士町デパートのバックヤードの仕組みを作るという試み。多くの過疎の町がアンテナショップや観光など、フロントに飛びつくが、大事なのは、いかにバックヤードをしっかり作るかということ。それがなければ赤字続きで続かない。」仕組みづくり、とは、われわれの言葉でシステムを構築するということ。同じ物語を語っていることにびっくりしました。海士町デパートという言葉で、海士町が取り組んでいる地域活性化の試みをひとつの統合されたシステムとして表現しておられました。
「過疎でたとえ自立できなくても、自立しようという試みの中で何かできることがある。それが大事。」そう、ソーシャルイノベーションは、変革への志の海の中でうねって実現していく、非線形の局面をたどるのです。
「町役場も農協も観光協会も商工会も、過疎で町が小さくなっていく中で、自立して小さく、そして自分たちで食べていけるようにしていくことが、今日の海士町を支えている。」自立する社会システムを作るための、ソーシャルイノベーション。「創造的過疎」とおっしゃっておられた徳島・神山町のNPOグリーンバレーの大南さんもそうでしたが、地域でイノベーションを起こす思考の改革の先導役をファシリテーターとして担われておられるのでした。
慶應SDMが進めている、社会システムとして自立している地域の仕組みづくりの研究内容にとても親和性の高い、共感することの多いお考えでした。わくわくした2時間のダイアログ。海士町の青山さん、関係者のみなさま、慶應SDMの前野先生、白坂先生、本当にありがとうございました。
福澤先生の「独立自尊」精神を彷彿とさせる離島の地域活性化の成功例。新たなステージに向かってさらに伸びていっている予感がします。自立した、地域のファシリテーターたちが活躍して、地域の方々がしあわせを価値あるものにする地域活性化の事例を可視化し、構造化したい。そういう研究の意欲を一層かきたてられた至福の2時間でした。
- 2013年09月01日(日) 18:59:54|
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