・ダム地点の計画高水流量 300m3/sのうち 180m3/sの洪水調節を行い、佐田川および筑後川本川沿岸の洪水被害の軽減を図る。ダムの諸元は、堤高83m、堤頂長 420m、堤体積 300万m3、総貯水容量1800万m3、地質は黒色片岩、ロックフィルダム、総事業費 254億円、起業者は水資源開発公団(現・水資源機構)、施工者は(株)間組、日本国土開発(株)共同企業体である。なお、補償関係については用地取得面積 114ha、水没関係5集落 147世帯のうち移転数57世帯となっている。
・筑後川下流の既得取水の補給を行うなど、流水の正常な機能の維持と推進を図る。
・両筑平野の甘木市など2市3町の農地約5900haに農業用水最大8.05m3/sを江川ダムとの総合利用により補給する。
・水道水3.65m3/s(福岡地区水道企業団 1.669m3/s、福岡県南広域水道企業団 0.777m3/s、佐賀東部企業団 1.065m3/s、鳥栖市 0.139m3/s)の必要補給量を江川ダムとの総合利用により供給している。
【調査所が発足いたしまして実質的に業務が軌道にのりましたのは、46年の3月に入ってからでございました。まず最初は、形どおりの事業説明会を開きまして各地区を廻ったようなわけでございますが、ただ、初期の段階におけますこの種の交渉の成否如何によっては、その後の交渉事を大きく左右する素因にもなりかねないということを十分に戒め、慎重に対処いたしました。特に、用地問題に多くの時間をさき、水没者等の質問に対しましては、抽象的な表現をできるだけさけ、その場で理解願える意志をもって具体的にわかり易く説明することを心がけておりました。私共は、用地知識を積極的に水没者に与えることよって、諸問題の解決のための判断材料にしてほしいという考えからでございます。】その「補償の精神」は、水没者の一番関心事である用地問題(生活再建)に多くの時間をさいて、用地知識を積極的に与え、アカウンタビィリティー(説明責任)を十分に果たしたことである。
・繰り返すことになるが、最初の説明会では、ダムの必要性、技術的な説明は控えめにして、用地補償の件について多くの時間をさき、抽象的な表現は避け、その場で理解できるようにわかりやすく説明を行った。これらを通じ、最初の調査時に水没関係者との信頼関係を得たことは、その後の補償基準、上下流地区に係わる公共事業、事業損失の各々の交渉にも労苦はあったものの、より良い結果をもたらした。なお、昭和49年8月9日、用地補償基準の調印式には水没者夫婦同伴の出席のうえ行われている。
・役員に『損失補償基準要綱の解説』の本を配付し、補償に係わる学習を行い、用地補償の知識を積極的に吸収することによって、補償問題の解決のための判断材料としてもらうように心掛けた。
・建物、立木、庭木の調査方法には、水没関係者の注視のもとで、モデル調査を実施した。
・土地調査については、国土調査法に基づく地積調査が完了済であったため、一筆調査に代え、公図の使用の了解を得た。
・調査の了解時に、水没線標示杭設置の測量も併せて了解を得た。これによって、相互に補償物件の適格な状況が把握可能となった。
・調査前に、補償基準を示せとの要求に対し、水没者全員注視のもとで、水没家屋の平均的な1戸を想定し、隣接の昭和44年における江川ダムの妥結補償の基準を採用し、補償額を算定し、今後の生活設計の目安にしてもらった。
・調査時には、役員と一緒に氏神様に調査の無事息災を祈願した。