第二条 本法律の適用範囲は、中華人民共和国領域内での水資源の開発、利用、節約、保護、水資源の管理及び水害防御である。本法律で称する水資源とは、地表水と地下水である。この水法には、水資源である地表水と地下水の所有権は国に属し、水資源の所有権限は、国務院が国家を代表して行使すると規定されている。この根本理念は旧水法から引き継がれ、大規模な水資源開発施設の建設事業は国務院において行われている。なお、洪水防御については、1998年『中華人民共和国洪水防御法』が施行された。
第三条 水資源の所有権は国に属す。水資源の所有権限は、国務院が国家を代表して行使する。農村集団経済組織が所有する溜池と農村集団経済組織が建造し管理している水庫(ダム湖)の水は、当該農村集団経済組織が使用する。
・ 10年1回の洪水を 100年に1回に抑えることができる。このように、国務院は三峡ダムの利点を挙げているが、治水、観光、生態保護、開発住民に関して、メリットのみをもたらすとは一概に言えないようだ。
・ 発電能力1820万kw、年間発電量 846.8億kwhをおこす。
・ 昌から重慶まで 660kmの水運が危険個所、単線航行の個所がなくなる。
・ 水位が上ることによって、「大足石刻」、「高嵐」、「小三峡」、「神農加」の名勝地は新名勝地に生まれ変わる。
・ 移住者は移住先地で家をつくり、道路や橋も建設され地域の経済発展、生活の向上を発展させることができる。
・ 発電年間 4,000万トンから 5,000トンの石炭使用が削減され環境汚染が軽減される。
住民移転対策費をすべて個人に頭割りで配分して補償するのでなく、住宅の整備、工場等の建設、住民の職業訓練なども併せて実施するやり方である。例えば、住宅の場合、移転先の地方自治体が代わりに補償費を受け取り、新しい家屋を建設して、移転住民に現物支給するケ−スが多い。・・・・・・このように補償費の全額が直接移住者に支払われないことが問題を複雑にしており、住民の不満を募らせる原因となっている。・・・・・省は省の中、市は市の中、県は県の中、郷は郷の中、村は村の中で移転問題を解決していく。農家の場合は原則として、いまの居住地の後背地に移転する。後背地に適当な土地がない場合には旧居住地から2キロ以内で政府が責任を持って探すことになっている。また、市街地住民の場合には市街地への移転が原則だが、全く新しい新市街地を政府が建設し、都市機能をまちごと移転させるやり方も平行して進めていく。このような基本方針がどうしても無理な場合には、域外へ移転することとなっており、さらに「二次移民」の問題も生じている。当初の移住者 113万人を越えて 180万人に増加するとも言われている。
・都市の土地は、国家的所有に属する。次に、住民移転対策については、条例を挙げて、その問題点を指摘している。
・農村及び都市郊外地区の土地は、法律により国家的所有に属すると定められたものを除き、集団的所有に属する。宅地、自留地および自留山も集団的所有に属する。
・国家は、公共の利益の必要のために、法律の定めるところにより、土地を収用することができる。
このように、農村および都市郊外の土地は、農民集団所有の下に置かれているのであるが「公共の利益」の必要がある場合には、国家により収用されるとされている。この場合、土地を収用される側での同意は必要とされない。換言すれば、国家の側での一方的意思だけで土地収用行為が実施されるのである。
1991年1月25日には、国務院により、「大中型水利水電工程建設征地補償和移民安置条例」(大中型水利・水力発電プロジェクト建設の土地収用補償と移住者の再定住に関する条例)が制定された。この条例では、「開発性移民」という新たな概念が導入された。この点について、第3条では、次のように規定されている。さらに、この書では、開発型移住について「長江三峡工程建設移民条例」に、次のように規定されている、とある。
「国家は、前期に補償と補助を提供し、後期に生産支援を行うという方法での開発型移住を唱導し、かつ支持する」また、この条例でも、「従前の生活水準の維持」という保証は明記されていない。その代わりに、第4条第2項では、次ように定められている。「移住者の再定住、ダム貯水池の建設、資源開発、経済発展のそれぞれを結び合わせて、移住者の従前の生活水準を漸次的に達成するかないしは陵駕するようにする。」
「定住者は、まず最初に、当該の県と区において再定住が図られる。当該の県と区で再定住できない場合には、湖北省と重慶市の人民政府により、それぞれの行政区域内のその他の市、県、区において再定住が図られる。・・・・・湖北省と重慶市において再定住できない場合には、その他の省、自治区、直轄市において再定住が図られる。」このようにみてくると、まず、国家の収用行為には異議を唱えることはできない。次に、補償については開発型移住方式である。即ち「移住先地に新築の家屋を与えられるものの、生活の安定は、移住先地開発における経済発展に伴って、移住者の従前の生活を漸次的に達成するか、ないし陵駕するようにする」とある。前述したように、移転対策費は住宅の整備等の実施により、地方自治体に支払われる。この費用をもって自治体は産業等の発展を計る。このように補償費が移住者に直接支払われない仕組みとなっているため、補償費をめぐって汚職が広がっているという。新しい産業による経済発展はタイムラグを生じ、また計画的に発展できるかどうかも明らかではない。この「補償の精神」に係わる基本的な考え方があまりにも漠然としている。行政側はあくまでも努力はしますが、保証はできませんよと言っているようなものである。さらに、再定住については、三峡地区に適当な移住先がない場合、行政側からその他の省、市、県へ斡旋(外遷という)を受ける。これでも移住できない場合は、立ち退きの補償金によって、親戚、友人を頼って自主的に再定住を図らねばならない。自主外遷と呼ばれ、移住者に対して公平な生活再建対策とはいえない。これらの補償もまた移住者は国家に対し、何ら異議の申し立ての権利は認められていない。これに反し、不満をもって異議を唱えれば公序秩序を乱したとして罰せられる。
「三峡ダムの貯水池地域の農村移住者が、政府組織による外遷と親戚や友人を頼っての自主外遷を行う場合には、三峡プロジェクトの受益地区と良好な条件を備えた省、自治区、直轄市、並びにそれらの市、県、区は、これを受け入れるものとし、また適時に関係手続きを処理し、移住者の生産と生活を統一的に按配するものとする。」