インフルエンザとは

(IDWR 2005年第8号掲載) インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症であるが、「一般のかぜ症候群」とは分けて考えるべき「重くなりやすい疾患」である。

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インフルエンザ抗体保有状況 -2024年度速報第1報- (2024年11月27日現在)

はじめに

感染症流行予測調査事業における「インフルエンザ感受性調査」は、毎年、当該シーズンのワクチン接種前・流行前の抗体保有状況(免疫状況)を把握し、抗体保有率が低い年齢層に対する注意喚起等を目的として実施している。

わが国におけるインフルエンザワクチンは、2015/16シーズンからB型の二系統を含む4価ワクチンの使用が開始されている。本感受性調査では今シーズン(2024/25シーズン)のワクチン株に用いられた4つのインフルエンザウイルスについて抗体保有状況の検討を行った。

1. 調査対象および方法
2024年度の調査は、15都道府県から各198名、合計2,970名を対象として実施されている。インフルエンザウイルスに対する抗体価の測定は、健常者から採取された血液(血清)を用いて、調査を担当した都道府県衛生研究所において赤血球凝集抑制試験(HI法)により行われた。HI法に用いたインフルエンザウイルス(調査株)は以下の4つであり、各ウイルスの卵増殖株を由来としたHA抗原を測定抗原とした。また、採血時期は原則として2024年7〜9月(インフルエンザの流行シーズン前かつ当該シーズンのワクチン接種前)とした。

a)A/Victoria(ビクトリア) /4897/2022 [A(H1N1)亜型]
d)A/California(カリフォルニア) /122/2022 [A(H3N2)亜型]
d)B/Phuket(プーケット)/3073/2013 [B型(山形系統)]
d)B/Austria(オーストリア)/1359417/2021 [B型(ビクトリア系統)]

なお、本速報では抗体保有率として、感染リスクを50%に抑える目安と考えられているHI抗体価1:40以上について示した。

2. 調査結果
2024年11月26日現在、北海道、栃木県、神奈川県、新潟県、福井県、長野県、三重県、高知県の8道県から合計1,982名の結果が報告された。5歳ごとの年齢群別対象者数は、0-4歳群:89名、5-9歳群:80名、10-14歳群:120名、15-19歳群:156名、20-24歳群:144名、25-29歳群:198名、30-34歳群:242名、35-39歳群:182名、40-44歳群:131名、45-49歳群:135名、50-54歳群:172名、55-59歳群:120名、60-64歳群:101名、65-69歳群:58名、70歳以上群:54名であった。

【年齢群別抗体保有状況】
A/Victoria(ビクトリア) /4897/2022 [A(H1N1)pdm09亜型]:
図1上段
今シーズンのA(H1N1)亜型のワクチン株は、昨シーズンから変更されておらず、2年連続で同じ株となった。本調査株に対する1:40 以上のHI抗体保有率は、全年齢で30%未満であった。10-14歳群をピークに5-9歳群から25-29歳群の若年層と65-69歳群において20%以上(20-29%)となったが、そのほかの年齢群は10%前後(7-13%)にとどまった。昨シーズン前に比べ微増したが、全体的に30%未満と低い傾向であった。

A/California(カリフォルニア) /122/2022[A(H3N2)亜型]:図1下段
今シーズンのA(H3N2)亜型のワクチン株は昨シーズンから変更された。1:40以上のHI抗体保有率は、5-9歳群をピークにおおむね20%以上(18-53%)であった。4歳以下を除く5-9歳群と10-14歳群の小児では、46-53%の抗体保有率で他の年齢に比べ高く、0-4歳群、25-29歳群、および65-69歳群を除く50-54歳群以上の群で20%前後(18-24%)の抗体保有率となった。

B/Phuket(プーケット)/3073/2013 [B型(山形系統)]:図2上段
B型(山形系統)のワクチン株は2015/16シーズンから変更されていない。1:40以上のHI抗体保有率は、0-4歳群で約10%と最も低い割合を示した。35-39歳群と60-64歳群をピークに二峰性を示し、これまでの結果と同様の結果となった。

B/Austria(オーストリア) /1359417/2021[B型(ビクトリア系統)]:図2下段
B型(ビクトリア系統)のワクチン株は2022/23シーズンから変更されていない。1:40以上のHI抗体保有率は、昨シーズン前の結果と同様の傾向を示し、50-54歳群以下で30%未満の低い保有率であった。特に0-4歳群と30-34歳群で10-12%と低く、55-59歳群以上で比較的高い傾向が観察された。


図1


図2

コメント
今シーズンはA(H3N2)亜型のワクチン株が変更となり、A(N1H1)pdm09亜型、B型山形系統およびB型ビクトリア系統では変更がなかった。本調査では、インフルエンザ流行前のこれら4つのワクチン株抗原に対するHI抗体保有状況を調査している。 2024/25シーズン(2024年36週以降)における2024年11月26日時点での週別インフルエンザウイルス分離・検出報告数は、シーズン開始の36週からA(H1)pdm09とA(H3)が分離・検出され、48週までにA(H1)pdm09が204件、A(H3)が30件分離・検出された。https://kansen-levelmap.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data2j.pdf (2024年11月26日時点) また、感染症発生動向調査のインフルエンザ流行レベルマップによると、2024年第46週の定点当たりのインフルエンザ報告数は1.88(患者報告数9,309)となり、前週の定点当たり報告数1.06よりも増加した。全国の保健所管轄区域のうち6か所が注意報レベルを超えており、6都道府県に分布していた。https://kansen-levelmap.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/2024_2025/2024_46/jmap.html (2024年第46週)今後の推移については不確定であるが、例年の傾向として今後さらに患者数が増加する可能性が示唆される。抗体保有率の低い年齢層においては注意が必要である。特に全てのインフルエンザワクチン株に対する0-4歳群での抗体保有率の低値が懸念される。今回の結果は11月26日時点の暫定値で2024年度インフルエンザ抗体保有状況の速報第1報であり、今後結果が変化する可能性があることに注意が必要である。


国立感染症研究所 感染症疫学センター/インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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