「戦争モード」に突入したウクライナ情勢
民族問題が周辺諸国に飛び火する可能性も浮上
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ウクライナ南部のクリミア半島で16日に実施された住民投票では、投票した住民の96.7パーセントがロシアへの編入を支持。この結果を受けたロシアのプーチン大統領は18日、上下両院議員を前にして行った演説でクリミア自治共和国をロシアに編入すると表明。編入を認める条約にも署名している。同じ頃、クリミア半島のシンフェロポリにあるウクライナ軍施設を覆面姿の武装集団が急襲。ウクライナ国防省の発表によると、ウクライナ軍兵士1名が死亡し、複数の兵士が拘束された模様だ。大規模な武力衝突の危険性も指摘されるなか、ウクライナ情勢はどのような方向に進むのだろうか。
国防軍が新設され
市民の軍事訓練が始まった
18日に突如発生したウクライナ軍基地襲撃事件。
16日にウクライナのテニュフ国防相代行はキエフで報道陣に対し、ウクライナとロシアの国防省の間で21日までクリミアにおける戦闘行為を禁じる休戦協定が結ばれたと語ったが、ロシア軍関係者と思われる武装勢力にウクライナ兵が殺害されたと各メディアが一斉に報じると、多くのウクライナ人が「裏切られた」と激しく憤慨。SNS上では多くのウクライナ人ユーザーが「戦うしかない」といった内容の書き込みを行った。襲撃後、ウクライナ政府は軍人の武器使用を許可したことを発表している。
クリミア住民投票が行われる前から、ウクライナ国内では国土防衛のために必要な軍事力の不足が問題視され、早急な対応を取るべきとの声は市民からも上がっていた。ロシアによる軍事介入がクリミア以外の地域にまで拡大する可能性を危惧したウクライナ暫定政府のトゥルチノフ大統領代行は11日、国民防衛軍の創設を発表し、退役軍人を中心とした志願者による防衛部隊を増設していく方針を打ち出している。
前回の特別レポートでは「ブダペスト覚書」によって、ソ連崩壊直後に国内に5000発以上の核弾頭を保有していたウクライナから核弾頭が全てなくなり、結果として大国を前に「核による抑止力」というカードが使えなくなった現状を紹介した。しかし、ウクライナが失った抑止力は実は核弾頭だけではなかった。
ソ連崩壊直後のウクライナは約80万の兵力を誇り、約7000台の戦闘車両、1000機以上の戦闘機・攻撃機などを保有し、十分に抑止力となりうる軍事力を擁していたのだ。しかし、1994年から約10年続いたクチマ政権ではコストがかかりすぎるという理由で国防予算が縮小され、2012年の国防予算は約5000億円。人口がウクライナの4分の1ほどのギリシャですら国防予算の額ではウクライナを上回っていたほどだ。
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