100歳の直木賞作家、佐藤愛子が教える「人生に必要なもの、必要ないもの」
特別インタビュー【前編】
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成功や幸せを追い求めるのは面倒くさい。100歳を迎えた直木賞作家、佐藤愛子さんの言葉はどれもシンプルで力強い。この100年の間に日本人の気質は大きく、そして良くない方向に変わってしまったという。作家として時代を捉え続けてきた佐藤さんが危惧する現代日本人の考え方とは何か。さらに、自身の波乱万丈な人生において「必要だったもの、必要なかったもの」を振り返ってもらった。(取材・構成/山口雅之)
長生きの秘訣は
「わがままに生きる」
――100歳おめでとうございます。お元気そうでなによりです。
元気だなんてとんでもありませんよ。耳も遠くなったし、もう書きたいという気力もなければ体力もない。食欲もめっきり落ちましたけど、朝はお手伝いさんがパンと卵やトマトを用意してくれるのでそれを口に入れて、あとは庭を見ながら日がな一日ボーっと過ごしています。
――若いころは美食家だったのですか。
もともと食事にはそれほど興味がなかったのです。仕事を盛んにしていたときは食事のことなんか考えもしませんでしたよ。
――長寿の秘訣は食にありというわけではなさそうですね。では何だと思いますか。
さあ、長生きしたいとはもともと思っていませんでしたし。わがままに生きるってことじゃないですか、人間好きなことをやっていれば元気になるんですよ。
――好きなことですか。でもよっぽど才能がないと、好きなことだけじゃ食べていけないでしょう。
そんなことはないんじゃないですか。私だって特別才能があったから作家になったのではありません。書くこと以外できなかったのです。まあ、おかげでわがままに生きられたのはよかったですけどね。
父(佐藤紅緑)は怒りたいときに怒るといった人でした。本当にわがままに生きて、死んでいった。私は幼いころからその姿を間近に見て育ったので、わがままが許されるのが作家なんだと思っていたのです。
でも、女の作家なんて外れ者、当時はそういうふうに世間から見られていました。いまは何をやったって後ろ指を指されるようなことはないでしょ。
昔は女の人が親や弟妹を養うために、泣きの涙で苦界に身を落とすと、それは世間から冷たい目で見られたものですが、昨今は女の人が自分の都合でそういう道を選んでも、誰も何も言いやしません。いい世の中になったものです。
だから、好きに生きればいい。才能があるかないかなんてあまり熱心に考えなくてもいいのですよ。人生なんてなるようにしかならないのだから。
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