円安で業績が「かさ上げ」されていた日本企業がこれから覚悟すべきこと
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12月7日に円相場は一時141円台となった。日本銀行による早期のマイナス金利政策の解除への思惑が高まったのもあり、円安トレンドに変化が見え始めている。今後、主要通貨に対する円上昇の傾向が強くなる場合、輸入物価の上昇を抑える一方で、自動車をはじめとする輸出型企業の収益減少や株価下落など、日本経済への逆風にもなりかねない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
円安トレンドにようやく変化?
ごく最近、円安のトレンドに変化が見え始めている。11月13日、ドル・円の為替レートは151円台後半まで下落した。しかし、その後はそれまでのドル上昇の傾向が変化している。12月1日の終値は146円80銭前半だった。その間、主要通貨に対するドルの騰落率を示すドル・インデックスは2%程度下落した。
「米ドルが最強」(ドル独歩高)の風向きが、少しずつ変わり始めているといえるだろう。その最大の要因は、米国の景気減速懸念が上昇したことだ。米国では労働市場の改善ペースが鈍化し、家計や商業用不動産のクレジットも一部で悪化した。2024年の年初以降、景気減速が顕著になるとの見方が増えている。
そうした状況を反映して、投資家たちに「米FRB(連邦準備制度理事会)が金融政策を引き締めから緩和に転じる」といった観測が増えた。11月下旬、金融政策の先行きを反映しやすい2年を中心に、米国の金利(国債の流通利回り)低下に拍車がかかった。一方、日本銀行に対しては「来年の春先までにマイナス金利政策の解除に踏み切る」との予想が増えた。日米の金利差は縮小し、円を買い戻す投資家は増えている。
今後、日米の金利差はさらに縮小する可能性がある。その結果、ドル売り・円買いの圧力は高まることが想定される。今後、主要通貨に対する円上昇の傾向は強まるかもしれない。それは、輸入物価の上昇を抑える一方、輸出型企業の収益減少、株価下落などわが国経済への逆風にもなりかねない。
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