三井住友トラストで社長交代、メガ銀との差別化は「道半ば」の実情

ダイヤモンド編集部
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SMTHトップ交代三井住友トラスト・ホールディングスの高倉透新社長(左)と三井住友信託銀行の大山一也新社長 Photo by Takahiro Tanoue

1月28日、三井住友トラスト・ホールディングスと傘下の三井住友信託銀行が、社長交代の人事を同時に発表した。二人の新社長は旧住友信託銀行出身者であり、二席の社長の座を旧中央三井トラスト・ホールディングス出身者とで分け合う「たすき掛け」人事に幕を引いた。だが、かねての宿題である信託銀行らしいビジネスモデルへの変革は道半ばだ。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

三井住友トラストと三井住友信託で社長交代
メガバンクと「根本的に違う」事業変革は道半ば

「メガバンクグループが"排除"されていることに意味がある」

昨年12月、経営共創基盤が1000億円規模の投資会社である「日本共創プラットフォーム」を立ち上げたときのことだ。出資者には、ゆうちょ銀行や複数の地方銀行、そして大手銀行の中から三井住友信託銀行が唯一名を連ねていた。

新会社は地方企業を対象とした地方創生ファンドであり、三井住友信託に出資の引き合いがあったのも、信託銀行ならではの不動産ノウハウを期待されたが故だ。ただ、ある三井住友信託幹部は、冒頭の通り出資した本音を付け加える。

大手銀行グループのうち、信託専業を掲げるのは三井住友信託を傘下に持つ三井住友トラスト・ホールディングス(HD)のみだ。ただ、事業規模に差はあれども、どのメガバンクグループも信託銀行を傘下にぶらさげていて、信託サービスが何も三井住友トラスト・HDの専売特許というわけではない。

つまり、日本共創プラットフォームの出資者の中で存在感を発揮するためにも、三井住友信託にとっては「メガバンク抜き」がファンドに参加する必要条件だった様子がうかがえる。

それから約1カ月後の1月28日。三井住友トラスト・HDは、HD社長と三井住友信託社長の2トップを同時に交代する人事を発表した。新HD社長に就任する高倉透氏は人事部や企画部の経験が豊富であり、新信託社長に就任する大山一也氏も企画部に長年在籍。どちらも銀行の中枢部門を歩んできた人物だ。

記者会見の場で、メガバンクとの提携の可能性について質問を受けた高倉氏は、「ビジネススタイルはメガバンクグループと根本的に違う。我が国唯一の自主独立の専業信託銀行グループであり、ザ・トラストバンクの実現に向けて邁進する」と語るなど、ここでもメガバンクへの対抗意識を隠すことなく言い放っている。

大山氏も、昨年からの中期経営計画は「新たな経営モデルに変革することを中心テーマに掲げた」と指摘。まさに商業銀行を中心とするメガバンクグループと、どう差別化を図っていくのかが問われることになる。

しかし、長年取り組んできた信託銀行らしい事業モデルへの変革は、「残念ながらまだまだ道半ば」(橋本勝・現信託社長)だ。特に、繰り返し言及してきたメガバンクとの差別化を図った成長が、実現できていない点が大きな課題となる。

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