自動車業界を襲うコロナ後の「移動」大激変、生産ライン停止だけでは終わらない
【提言】ローランド・ベルガー 高橋啓介パートナー、山本和一プリンシパル
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新型コロナウイルスをきっかけとした生活様式の劇的な変化に伴い、移動の在り方までもが大きく変容し、自動車業界は"勝ちパターン"を読みにくい暗中模索の時代に突入した。特集『外資コンサル総力解明 7業界の生存戦略』(全12回)の#10では、不確実性が極まる中、自動車各社が成長チャンスをつかみ取るための戦略をローランド・ベルガーが提言する。業界の打撃と展望が一目で分かる関係者必携の「ティアシート」(B4判)付き。(構成/ダイヤモンド編集部 新井美江子、杉本りうこ)
その移動は必要か?
コロナで気付いた"不都合な真実"
誰もが一度は口にしたことがあるであろう缶詰が、日本で一般に普及したのはいつかご存じだろうか。ずばり、1923(大正12)年だ。日本製缶協会の資料によれば、その年に起こった関東大震災で避難民の救済に使われたのがきっかけなのだという。缶詰は日本でも明治時代に商業生産が開始されていたのだが、日清戦争、日露戦争時の兵隊食に利用されて以降、関東大震災までは欧米人向けの輸出品として扱われることが多かった。
関東大震災で日本人が缶詰のおいしさ、有用性に気付いたように、世間では新型コロナウイルスによっても気付かされたことがある。リモートワークの意義が最たるものだろう。いまや、取引先の大企業の役員に対して行うプレゼンテーションですらテレビ会議が普通に活用されるようになった。会議室をわざわざ用意する必要もなければ、その会議室に出席者全員が集まる手間も生じないテレビ会議の方が、むしろ手軽でいいとさえいわれるようになっている。
では、コロナを境に移動に関して明確に生じた気付きとは何か。本稿では、日本の産業の屋台骨である自動車産業をはじめとしたモビリティ業界全般における市場変化の在り方と、モビリティ各社がつかむべき中長期の成長チャンスについて論じていきたい。
(1)コロナの打撃
コロナの感染拡大を防止するため、外出自粛要請が出ていたのだから当然だが、データで見ると、コロナによって国内の移動量がいかに減少したかを改めて実感することができる。
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