イランの対米「開戦行為」は、日本を微妙過ぎる立場に追い込んだ
詳細はこちら
イランが8日未明(日本時間同日朝)、イラク国内の米軍駐留基地に複数の弾道ミサイルを発射した問題は、始まったばかりの2020年の国際情勢をにわかに不安定にしている。株式市場はさらなる情勢悪化を懸念し軟調、原油価格は石油産出国でのリスク増大により急伸した。国際関係を研究し防衛動静に明るい拓殖大学の佐藤丙午教授は、「日本は極めて居心地の悪い立場に追い込まれている」と指摘している。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)
イランの「反撃」には驚いた
国際法としては開戦行為に等しい
イラン革命防衛隊による米国に対する「反撃」には驚いた。事態のエスカレーションを防ぐため、反撃をしないよう国際社会が説得したにもかかわらず、イランが国境を越えてイラク領土内に攻撃を行ったことは、対立の局面を相当エスカレートさせるものだ。革命防衛隊はイランの最高指導者ハメネイ師直属の精鋭部隊であり、正規軍に近い性質を持つ。正規軍が他国領内を攻撃したとなれば、これは国際法としては開戦行為に等しい。
この局面を直接的に招いた米軍による革命防衛隊司令官の殺害は、トランプ米大統領による大胆すぎる判断だった。米国の歴代政権も、司令官が中東地域の不安定要素だと理解していた。だが過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いで米国に間接的に協力した人物でもあり、何よりイランにおける政治アイコン(偶像)だった。こういった政治的に大きな影響力を持つ人物の殺害は「ヘッドダウン」、つまりギロチン戦略と呼ばれるが、歴史的にはこの戦略は状況をむしろ流動化させ、失敗に終わるケースが少なくない。
あなたにおすすめ