「ソフトウェア革命」が起きつつある今、
日本は「物作り」に執着していてよいのか

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シリコンバレーでは「ソフトウェア革命」と言う言葉が囁かれている。IT革命はハードウェアとソフトウェアを両輪にした革命であったが、今度はソフトウェアだけの革命が起きるという。この革命はIT業界だけに関係するものではない。すべての業界に関係する。対応いかんでは既存の企業の競争力に甚大な影響を及ぼす恐ろしい革命である。

8月にシリコンバレーで衝撃的な発表があった。ヒューレット・パッカード(HP)がPC部門を閉めるという。HPはPC業界のリーダー的存在である。それでも閉めるという。余剰になった経営資源はソフトウェアとサービスに集中するという。これを発表した社長は社内の根回しなく発表したらしい。取締役会から独断専行と批判され解任された。最近決まった新社長はPC部門を再検討すると記者会見しているが、衝撃は収まらない。

7月には全米に500店舗を構える業界第2位の本屋Bordersがウェブへの対応に遅れて倒産した。この国では書店に出向く人は年々激減している。Amazonのウェブサイトから検索して注文すれば足りるからだ。更に本を郵送してもらわなくても済む。全文をPCなり携帯端末にダウンロードして読むことも出来るからだ。「本」という「物」を「ソフトウェア」が駆逐したのだ。

このところAmazonのkindleやAppleのiPadを使って新聞や雑誌を読む人を多く見かけるようになった。月10ドル程度の購読料を支払うと、その日の朝刊がkindleやiPadに自動的にダウンロードされる。新聞社のウェブサイトから新聞を読むことは可能なのだが、広告が付いてくる。kindleやiPadだと広告を見る煩わしさがない。この傾向が続けば、新聞配達が要らなくなり、広告収入に依存した新聞社と広告代理店の収益が落ち込む。「新聞」という「物」を「ソフトウェア」が駆逐しているからだ。

昨年からAmazon はAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)というクラウド・コンピューティング・サービスを提供するようになった。自社が物販をするために開発してきたソフトウェア一式を誰でも使えるように公開したのだ。物販をしたい会社はわざわざ自社開発をしなくて済む。年間使用料を支払ってAWSを利用すれば足りる。Amazon はいまや「物販」の会社から「ソフトウェア」の会社に軸足を移している。

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