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学ぶことで世界は広がる。65歳で修士号を取得した私が、還暦を過ぎてからの「学び直し」で得たもの #リカレント#老後も楽しむ 公開日 | 2023年07月03日 更新日 | 2023年07月03日 finalvent(佐藤信正) 「学生時代に、もっと勉強しておけばよかった」 「実は新しく学んでみたいことがあるけれど、なかなか重い腰が動かない......」 年齢を重ねる中で、そんな思いを抱えている方は少なくないかもしれません。 20年にわたって書評などを続けてきた人気ブログ「極東ブログ」の筆者・finalventさんは、60代で放送大学の大学院に入学し、念願だった修士号の取得を成し遂げました。 年齢を重ねて体力・知力の衰えを感じる中、finalventさんはいかにして学び直すことができたのでしょうか。また、年齢を重ねてから学び直すからこそ、得られたものとは? 大学での経験と、現在の思いをつづっていただきま
2025年2月28日、ホワイトハウスでドナルド・トランプはウクライナの大統領ウォロディミル・ゼレンスキーと激しく言い争い、会談は決裂した。その場で飛び出したトランプの言葉、「プーチン氏は私と一緒に多くの苦難を経験した」「詐欺師のハンター・バイデン」「民主党のぺてん」は、一見すると脈絡のない怒りの爆発に聞こえる。NHKが全文報道しているので、そこから該当部分を再録する。 トランプ大統領 「どうするも何も、今あなたの頭に爆弾が落ちたらどうするのか。彼ら(ロシア)が破ったらどうなるのかなど、知ったことではない。バイデンと(の合意)なら破るだろう。バイデンへの敬意はなかった。オバマにも敬意はなかった。 私のことは尊敬している。プーチン氏は私と一緒に多くの苦難を経験した。うそっぱちの魔女狩りに遭って、彼とロシアは利用された。ロシア、ロシアと。聞いたことがあるか。詐欺師のハンター・バイデン、ジョー・バ
現代の社会においてSNS(ソーシャル・ネットワーキング)は、「正しさ」を競い合う巨大な闘技場と化してきた。ある社会問題について「意見」を述べると、即座に賛否両論が飛び交い、それぞれの陣営が「正しさ」を独占しようと激しい論争を繰り広げる。しかしそれらは最初から、まるで予約チケットのように席が決まっているのだ。環境政策をめぐる議論では、「規制強化」か「経済活動の自由」かの二者択一を迫られ、その中間的な立場や別の観点からの提案は、まるで存在しないかのように無視される。教育改革に関する議論でも同様の構図が見られる。「詰め込み教育」対「ゆとり教育」、「STEAM教育推進」対「人文教育重視」といった具合に、複雑な教育の問題がアプリオリに単純な二項対立に還元されている。 厄介なのは、このような状況下では、慎重な判断を示そうとする発言者に対して「立場を明確にしない卑怯者」「問題から逃げている」といったレッ
2024年11月17日に行われた兵庫県知事選挙は、これまでの地方選挙の枠を超えた注目を集める選挙となった。不信任決議を受け、メディア的にバッシングされた前知事の斎藤元彦氏が再出馬し、そして民意によって再選を果たすという展開は、政治の混乱とそれに対する市民判断の新しい局面を象徴する出来事となるかもしれない。私は東京都民であり、この話題には関心がなく、メディア報道もSNSの動向も事実上無視していた。しかし、この結果には驚いた。他地域の市民にとっても、この兵庫県知事選挙の結果は地方政治にとどまらず全国的な影響を持つ可能性もあるかも知れない。 今回の兵庫県知事選挙には過去最多となる7人が立候補し、投票率は前回の41.10%から大幅に上昇して55.65%を記録した。高い投票率とも言えるだろう。その背景には、斎藤氏の再出馬をめぐる議論や、候補者間の激しい政策論争が有権者の関心を引きつけたことがある。そ
長い間ブログを休止していた。この間、大学院生であったという理由が大きい。25歳に最初の大学院を中退し、それから40年かけて大学院修士を終えたという感じだ。10年前の著書には、「もう諦めた」と書いたが、子供が4人成人したのをきっかけに修士に再挑戦した。というわけで2年間、放送大学で大学院生をやっていた。ようやく修論が終わり、取得単位もクリアしたので、今月末には卒業ということになる。 この間、修論研究にけっこう専念していた。コロナ禍もあってか、朝から深夜まで研究ばっかりしていたこともある。加えて、大学院の単位取得もそう容易いということでもなかった。40年前の大学院の単位も復活できるかとも思ったけど、手続きミスがあり、諦めた。結果からいうと、それでよかった。認可待ちしていると、大学院の単位の計算が不確定になっただろう。取得単位という点では、結局、学院を2つ出たような感じだが、あれだなあ、学問の風
ジェフリー・ヒントンの警告 AIと人間の共生における知能の退化は避けられないのではないだろうか。ジェフリー・ヒントンのエピソードから話を切り出したい。2024年にノーベル物理学賞を受賞したヒントンは、AIの安全性や人間の知能の衰退に対する深い懸念を示していた。彼は、教え子でもあるサム・アルトマンが主導するOpenAIが営利目的に傾倒し、AIのリスクを軽視していると批判し、その危険性を強調した。彼の懸念は、AIが持つ高度な操作能力が人間の心理に深刻な影響を与え、人々がAIに依存しすぎることで、自らの意思決定能力や批判的な思考力が失われることにあった。 この懸念は、単なる技術のリスクにとどまらない。AIの進化によって、私たちの社会がどのように変貌し、私たち人間自身がどのように変化していくのか、より深い問題に根ざしている。特に「AIと人間の共生」というテーマを考えるとき、そこには大きなリスクとし
トランプ米大統領は米国時間の2月28日、ウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで会談し、ウクライナの鉱物資源の権益に関する合意文書に署名する予定だったが、渦中で厳しい口論となり、会談は決裂した。合意文書には署名されず、共同記者会見も中止となり、ゼレンスキー大統領はホワイトハウスから追い出された。 まず、口論の流れをまとめておこう。 発端:バンス副大統領とゼレンスキー氏の対立 状況: 記者からの質問でトランプ氏がロシアとの関係性について問われた後、バンス副大統領がバイデン政権の対ロ政策を批判し、「平和への道は外交かもしれない」と発言。 ゼレンスキー氏の発言: 「感謝はしています。しかし、あなたが話す『外交』とは何ですか? プーチンはミンスク合意を破り、2014年に我々の東部とクリミアを占領しました。オバマ、トランプ、バイデン、そして今またトランプ大統領と、アメリカの大統領は変わりまし
なぜならAIに書かせた記事を最低限の校閲もせずにそのまま公開しているからである。 http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2025/08/post-fe05b0.html 甲子園大会は戦後日本の夏を彩ってきた 甲子園球場はそもそも第10回全国中等学校優勝野球大会を行うために、1924年に作られた球場である。つまり戦後に区切る意味はない。 2024年、日本の高校生人口はおよそ100万人。昭和後期のピーク時から半減し、その影響は高校野球にも直撃した。2015年に約17万人いた野球部員は、2023年には10万人を下回った。 https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/2024.htm 実際には2024年の高校生人口は300万人。. https://www
バイデン政権はひどいものだったなあという印象が強いが、なかなか主要メディアは口を拭ってるものだと思っていた。が、BBCにそれなりの記事が掲載されていた(参照)まあ、そうだろう。それを参考に書いておきたい。率直にいって、老化したトランプ次期大統領もこうなりかねないのだから。 2025年初頭、ホワイトハウスの記者会見場でのバイデン大統領の姿は、歴史に残る象徴的なものとなった。言葉に詰まり、視線を彷徨わせる瞬間が繰り返され、聴衆の中に沈黙と不安が広がった。かつてオバマ政権時代に副大統領を務め、熱意ある演説で国民を鼓舞した「巧みなコミュニケーター」としての面影は、無惨なほどそこにはなかった。 バイデン氏の「年齢の影響」という疑念は、すでに2023年の大統領選テレビ討論会で最高潮に達していた。共和党候補として再出馬したトランプとの対決は、かつての「トランプvsバイデン」の再現として注目を集めたが、結
文化庁の文化審議会が2025年8月20日、ローマ字表記を約70年ぶりに見直し、ヘボン式を基本とする答申をまとめた。これにより、「ち」を「chi」、「し」を「shi」とする英語寄りの表記が学校教育で採用される見込みである。しかし、この方針は日本語の音韻体系を忠実に反映する訓令式を軽視し、英語圏の文化に迎合するものである。言語学的な観点から、ヘボン式への一本化が日本語の独自性を損ない、混乱を招く理由を以下に述べる。 訓令式の言語学的優位性 日本語の音韻体系は、開母音(母音で終わる音節、例:か・き・く・け・こ)に基づく簡潔な構造を持つ。これをローマ字で表す際、訓令式は「ち」を「ti」、「し」を「si」と表記し、日本語の発音を一貫して再現する。例えば、「しんぶん」は「sinbun」と書き、音節の規則性(子音+母音)を明確に反映する。この規則性は、日本語の音韻構造をそのまま文字に落とし込む点で優れて
2024年の大統領選挙において、民主党は、あれから8年ということか、再び「自己崇拝」の罠に陥り、壮大な内紛を展開している。選挙戦の最終段階になってようやく党内で激しい議論が繰り広げられ、資金の使い方や広告戦略の失敗、そしてリーダーシップの欠如について多くの異論が噴出した。誰が責任を取るべきかについても各派閥で意見が分かれ、明確な合意が得られない。まあ、得られるわけもないが。このような内部の対立はメディアにも取り上げられ、民主党内の結束がいっそう揺らぐ結果となる。内部対立は深刻化する。民主党やその支持者は自らを「知的で正義」とか「公平で倫理的」とか見なし、他党との差別化を図ってきたが、その結果として内部で愚かな争いを続け、ドタバタを招いている。このような矛盾した行動は誰の目にも明らかであり、まさに、ありがちな滑稽さが浮き彫りとなった。 民主党じゃないだろのバーニー・サンダースは、民主党が労働
2025年3月18日、WHOがCOVID-19をパンデミックと宣言してからちょうど5年が経過した。約700万人の命が失われ(WHO推定、2025年3月)、世界は未だにその起源を巡る議論に決着をつけられずにいる。2025年1月26日、CIAが「低確信度ながらラボ漏洩説を支持」と発表したが、その後新たな証拠はなく、既存データの再分析に留まっている(NBC News、2025年1月27日)。しかし、この発表は、初期に「陰謀論」と排除されたラボ漏洩説が再評価される流れを示していることは明らかだ。なぜ当初、流出説は排除され、情報隠蔽が起きたのか。 コロナ禍初期:情報隠蔽の兆し パンデミックが始まった2020年初頭、関連情報の混乱が広がった。2020年2月、武漢で発生したウイルスが世界に広がる中、起源に関する議論が過熱し、自然発生説(動物市場起源)とラボ漏洩説(武漢ウイルス研究所からの流出)が浮上した
真夏の炎天下、砂塵舞うグラウンドで白球を追い、流した汗と涙が「青春の象徴」として語られる。そんな甲子園大会は戦後日本の夏を彩ってきた。しかし、その構造や価値観は戦前からほとんど変わらず、時代の大きな流れから取り残されつつある。いまや、少子化・人材不足・経済的困難・価値観の断絶という複合的な要因が、大会そのものの存在意義を問い直している。そろそろ、甲子園を「当然あるべきもの」とする思考停止をやめ、廃止や大幅な形態変更も含めて議論するべき時期に来ているのではないか。 少子化が削る"競技人口"の土台 2024年、日本の高校生人口はおよそ100万人。昭和後期のピーク時から半減し、その影響は高校野球にも直撃した。2015年に約17万人いた野球部員は、2023年には10万人を下回った。これは単なる数字の減少ではなく、大会の競技的価値を揺るがす問題だ。 特に地方の現場は深刻だ。岩手県では3〜4校が合同で
人類の性別を決定するY染色体が、遠い将来に消えるかもしれないという話は、生物学の分野では長年囁かれてきたが、その未来は何千も先のことにも思われていた。しかし、それが思ったよりも早く訪れていた。現状、報告される事例はごくわずかだが到来している。しかし、想定されていた事態とは異なり、男性が消滅するのではない。その逆である。Y染色体がなくても「男性」を作り出す仕組みが、すでに一部の人類に現れつつあるのだ。この発見は、しかし、予期はされていた。鍵を握るのは、奄美大島に生息する小さなネズミ、アマミトゲネズミである。 Y染色体の退化:人類の危機か進化か? 基本からおさらいしておこう。人間の性別は、23対ある染色体のうち、性染色体によって決まる。女性はXX、男性はXYという組み合わせだ。このうちY染色体には、性決定遺伝子「SRY」(Sex-determining Region Y)が存在し、これが胎児の
2025年5月18日、ジョー・バイデン元米大統領(82歳)が前立腺がんに罹患し、骨に転移していると公表された。グリーソン・スコア9という高リスクの進行がんである。このニュースは、単なる個人の健康問題ではない。2024年大統領選の選挙戦中、バイデンが世論の健康診断要求を事実上無視した結果、そう結果的にではあるが、真実を狡猾に隠し、米国民と世界を欺いた「詐術」ともいえる結末である。この怠慢は、選挙の歴史を歪め、民主主義の信頼を揺るがし、バイデン自身の公衆衛生メッセージを自ら否定した。これを意図的でないとすることはできる。しかし、それが許されてよいはずはない。 グリーソン・スコア9 まず、バイデンの診断の重さを医学的に理解する必要がある。前立腺がんの悪性度は、グリーソン・スコアで評価される。これは、針生検で採取した組織のがん細胞の形態を、顕微鏡で観察し、正常組織からの逸脱度を1〜5のグレードで分
2025年4月10日、トランプ大統領が発動したばかりの「相互関税」をわずか24時間で一部停止するという発表が世界を駆け巡った。停止期間は90日間とされ、日本やEUが対象に含まれた。この急転直下の動きは、トランプの貿易政策がもたらす不確実性と、同盟国との関係の複雑さを改めて浮き彫りにしている。 事の発端は4月9日、トランプが米国への輸入品に対して一律10%の関税を課す「相互関税」を発動したことだ。特に自動車関連には25%という高い税率が設定され、対象国には日本、EU、カナダなどの同盟国も含まれていた。具体的な税率として、イギリスには10%、EU全体には20%、日本には24%が課されたとされる。この差別的な税率設定は、特に日本に対する厳しい姿勢を示しており、トランプが日本を「経済的な脅威」と見なしつつ、「押さえつけられる相手」と軽視している可能性を浮き彫りにした。 発動直後の市場の反応は激しか
2025年8月26日、NHKはJICA(国際協力機構)の「ホームタウン」事業をめぐる誤情報の問題を報じた(参照)。この事業は、TICAD9(アフリカ開発会議)に合わせて日本の4自治体をアフリカ諸国の「ホームタウン」に指定し、交流を深めるものだ。千葉県木更津市はナイジェリアと結び付けられたが、SNS上で「移民の定住を促進する制度」「特別ビザの発行」といった誤解が広まり、市役所に700件以上の抗議電話が殺到した、という。林芳正官房長官は記者会見で、事業は短期研修を目的とし、移民や特別ビザを想定していないと説明。ナイジェリア政府の誤記載にも訂正を求めたと述べた。 しかし、このNHKの報道は極めて不十分であった。誤情報の発生源と拡散プロセスを明確に分離せず、「SNSで誤情報が広がった」と概括するのみで、具体的な起点や背景に踏み込んでいない。特に、ナイジェリア政府の誤記載を報じたBBC Pidgin
ジョン・ミアシャイマー教授が、12月12日、「グローバルピースTV」(参照)でウクライナで進行中の戦争を終わらせるトランプ大統領の可能性について分析していた。私はトランプ次期米国大統領がこの戦争を終結してくれるのではないかと期待していたが考えを改めるべきだろうと思った。以下、ミアシャイマーの見解をまとめておく。 トランプ大統領が、ウクライナという問題領域が米国の外交政策を根本的に変えることになるだろうと発言したことは間違いない。彼はすぐに紛争を終わらせると言っているが、すぐに終わらせるとは思えない。彼は善意を持っているかもしれないが、それは起こらない。その理由は、彼がプーチンが示したこの紛争を解決するための条件を受け入れなければならないからであり、どの米国大統領もそれを決して受け入れないだろうと思っている。 具体的には、プーチンは交渉を始める前に、これは和平合意をまとめるための交渉を始める
ドナルド・トランプが再びアメリカ合衆国の大統領に就任して以来、特に、2月28日のトランプ米大統領とゼレンスキー宇大統領の口論による関係の齟齬の後、欧州指導者たちは神経を尖らせている。Fox Newsが3月2日に報じたように(参照)、バイデン政権下でロシアのウクライナ侵攻(2022年)に対応して増派された約2万人の米軍が撤退する可能性が浮上し、NATOの安全保障体制がかつてない試練に直面している。 現在の米軍駐留数は、Center for Strategic and International Studies(CSIS)のデータによれば7.5万〜10.5万人と変動しており、この2万人の撤退は全体の20%近くを占める規模である。欧州の指導者たちは、トランプの「米国第一主義」やロシアへの友好的な姿勢を警戒し、彼が予測不能な形で軍事プレゼンスを縮小するのではないかと恐れている。 この問題は単なるト
ウクライナ戦争は2025年の春と夏のロシアの攻勢により、ウクライナにとって壊滅的な局面を迎えている。ロシア軍はドンバス地域のコンスタンティノフカやポクロフスクを包囲し、スムイやニプロペトロウシクでの進軍を加速した。ウクライナ軍は防空ミサイル、装甲車両、ドローン、人員の不足に直面し、キエフの防空はほぼ崩壊している。この危機的状況下で、ゼレンスキーは権力維持、西側からの資金確保、ロシア領内での非対称戦を通じた抵抗継続を目指している。彼の末路として、亡命大統領としての抵抗、国内での抑圧強化、国際的孤立という三つのシナリオが考えられるが、これらは歴史的な亡命指導者であるシャルル・ド・ゴールや李承晩の経験とどの程度似ているのだろうか。 シナリオ1:亡命大統領として抵抗の象徴となる ゼレンスキーの末路の第一のシナリオは、ウクライナが軍事的に崩壊した後、亡命先で「抵抗の大統領」として活動を続けることであ
2024年12月9日、バシャール・アル・アサド政権が崩壊し、イスラム主義勢力「ハヤート・タハリール・アル・シャーム」(HTS)がダマスカスを掌握した。この出来事は、シリア内戦の終局を象徴するとともに、中東地域全体の地政学を根本的に変える転機となった。 シリア内戦は2011年3月、アラブの春の影響を受けて始まった。アラブの春とは、2010年末に北アフリカや中東諸国で発生した民主化を求める抗議運動であり、シリアでは反政府デモの拡大につながった。この内戦は、アサド政権と反政府勢力の間で長期にわたる戦闘を引き起こし、ロシアやイランなどの勢力が介入する複雑な争いに発展した。 当時のオバマ政権は、シリア内戦初期に慎重な姿勢を取った。2013年、アサド政権による化学兵器使用が発覚した際、「レッドライン」発言で軍事介入を示唆したが、実行には至らなかった。この決定はアメリカの信頼性を損ね、ロシアとイランがア
2025年8月、経済同友会代表幹事でありサントリーホールディングス(HD)会長の新浪剛史氏が、麻薬取締法違反の疑いで福岡県警の家宅捜索を受けた。この事件は、米国で購入したサプリメントに大麻由来の違法成分THC(テトラヒドロカンナビノール)が含まれていた可能性を端緒とする。新浪氏は9月1日付でサントリーHD会長を辞任し、社会的失脚に追い込まれた。 事件の経緯はこうである。2025年4月、新浪氏は米国出張中に市販のサプリメントを購入した。時差ぼけ対策として健康目的で入手し、米国では合法と認識していた。その後、ドバイ経由でインドへの出張が入り、両国での薬物規制の厳格さから、米国在住の知人にサプリを日本に送るよう依頼した。知人は日本に持ち込み、新浪氏の自宅に郵送したが、新浪氏の家族は「送り主不明の荷物は廃棄する」ルールに従い、これを破棄した可能性があると新浪氏は述べる。 しかし、8月、知人が福岡県
先日の兵庫県知事選挙や米国大統領選挙の結果に違和感を持つ人々が増えている。そして、その原因としてSNSやYouTubeなどのスマホベースのメディアが批判されることが目立つ。若者が新聞を読まず、正しい情報が広まらないことが選挙結果に影響しているという主張である。一方で、それに真っ向からの反論もある。既存メディアも偏見に満ち、真実を伝えていないというのだ。このような対立は、なにか、この問題の重要な部分を捉えていないように思える。 現代の情報環境 SNSやYouTubeは情報を即時に広範囲に共有できる点で非常に便利であると言っていい。私自身そのなかにすっぽりといる。世界中の出来事やニュースを瞬時に知ることができるという点では、旧来メディアとは変わりないが、その面では、SNSやYouTubeで二番煎じのことが多い。むしろ、旧来メディアでは知ることのできない、奇妙ともいえるディテールがわかることがあ
ウクライナ戦争における米国の関与について、米国時間3月29日のニューヨーク・タイムズにジャーナリストのアダム・エントゥスが『パートナーシップ:ウクライナ戦争の秘密の歴史 (The Partnership: The Secret History of the War in Ukraine)』(参照)と題する、ほぼ一冊の本に匹敵するほどの詳細な記事を公開し、この問題に関心を寄せる人々で大きな話題となった。記事は、ウクライナ、アメリカ、イギリス、ドイツ、ポーランド、ベルギー、ラトビア、リトアニア、エストニア、トルコの政府、軍事、情報機関の関係者と1年以上にわたり、エントゥス氏が300回以上のインタビューを実施してそれをもとに書かれたものである。いずれ日本語で正式な全文が書籍などで出版されることになるだろうが、すでに国際水準でウクライナ戦争を考察する人々にとっては常識になっているので、ここでも今後
2024年のノーベル平和賞は日本の核兵器廃絶運動に大きな希望の光を当てた。しかし、その栄誉が果たして現実に即したものであるかどうかについては、疑問の声も上がっている。核兵器廃絶は確かに人類の理想であり達成すべき目標であるが、その過程において様々な団体がそれぞれの立場を持ち、運動はしばしば分裂と対立に満ちた歴史があったことは、現在日本では忘却されやすい。この背景には、国際政治の複雑な駆け引きや核抑止力に対する日本国内の多様な見解が存在する。 核兵器廃絶運動の歴史 核兵器廃絶運動は1954年の第五福竜丸事件を契機に始まった。米国のビキニ環礁での水爆実験により被曝したこの事件は、日本国内における反核の機運を高めうことになった。1955年には「原水爆禁止世界大会」が広島で開催され、翌年には「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」が結成された。被団協は、広島・長崎の被爆者を中心に結成され、核兵器
2025年3月20日、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスで、子供たちに囲まれた象徴的な場面で、米国教育省(U.S. Department of Education)の解体を命じる大統領令に署名した。この瞬間は、トランプの選挙公約であると同時に、共和党保守派が40年以上にわたり夢見てきた「小さな政府」の実現を象徴する出来事だった。トランプは「我々はできるだけ早く閉鎖する」と宣言し、教育省を「驚くべき失敗」と断じ、その予算と権限を州に戻すと約束した。署名から翌日には、約4,400人の職員のうち2,100人が休職に追い込まれ、実質的な機能縮小が始まった。 この動きは、単なる行政改革ではない。教育省が管理する学生ローンや低所得者向け支援(タイトルI、ペル・グラント)の将来に不安を投げかけ、すでに訴訟が提起されるなど、激しい政治的対立を引き起こしている。しかし、完全な閉鎖には議会の承認が必要
日本の憲法議論は、左派の護憲姿勢が市民社会への根本的な不信を表している点で、独特な特徴を持っている。日本国憲法とはどのような憲法なのだろうか。 フランス式の成文憲法は、本来、市民契約として位置づけられるものである。つまり、国家と市民が合意したルールとして、時代とともに変化し、成熟した市民社会がその改正を担う仕組みであるはずだ。しかし、日本の左派は、この成文憲法の改定を絶対的な禁忌として扱い、改憲を強く拒否する傾向が強い。このような態度は、単なる憲法擁護ではなく、日本の市民社会全体に対する信頼の欠如を示している。左派は、市民が憲法を変える能力や判断力を信用せず、自分たちこそが正しい憲法の守護者であるという優越感を抱いているのである。この優越感は、護憲の主張を攻撃的なものに変え、他者への不信に基づく批判に発展する。たとえば、改憲派を「戦争推進者」とレッテル貼りするような議論もそれである。こうし
この夏、64歳になった。父が62歳でなくなっていて、その姿を老いに思っていたのだから、それからさらに2年近くも生きている自分が奇妙な気もしないでもないが、親族には90歳近く生きる人もいるし、思えば父の父、私の祖父、そして曽祖父も長寿な人であって、父も長生きするつもりでいたのだろうと思う。 自分はというと早世すると信じていたので、長く生きたものだ。人生を振り返ってもいい時期には達しているせいか、そんなことを思うのだが、実際に思うのは存外に些細なことが多い。その一つが無意味な暗記である。なんとなく暗記しているが、それになんの意味があったんだろうかという奇妙な感じのするあれである。 具体例。私は般若心経を暗記している。260文字なので暗記しようと思えば暗記できるものではなかろうか。というのを16歳のころ思って暗記した。ついでに観音経の偈文も暗記したのだが、途中で飽きた。理由は簡単で、事実上無意味
日本における年金制度は、少子高齢化の進展と経済停滞の中で、マクロスライドという仕組み上、制度崩壊はしないものの、その実質的価値が問われても「ナンセンス」な存在になりつつある。こうしたなか、2025年5月24日、自民党と立憲民主党は年金改革法案の修正で合意に達した。基礎年金の給付額を底上げし、低所得高齢者の生活困窮を緩和するこの施策は、一見、年金問題への対処に見える。しかし、中長期的な視点で見ると、この「改革」は年金制度の構造的課題を放置し、選挙向けの対症療法に終始している。そこには、年金制度の持続可能性や世代間公平を真剣に考える政治の不在が浮上する。 マクロ経済スライドと「ナンセンス」な年金 2004年に導入されたマクロ経済スライドは、年金給付の伸びを物価や賃金の上昇率以下に抑え、財政健全化と将来世代の負担軽減を目指す仕組みである。2050年までに年金給付水準を現役世代の賃金の50%程度に
ブログは久しぶりになる。この間、ほとんど日々ツイッターでなにかしらつぶやいていたので、多少なり私に関心ある人がいても私の健在は伝わっていたかと思う。ブログを実際上休止していたのは、ブロクを書く気力がなかったことと、来年に向けて準備を進めていることに注力したかったからだ。後者についてはだいたい準備は終わった。来年の方向も見えてきた。何をするかというと、少しアカデミックな研究をしたい。世の中は「独学」がブームのようでもあるし、私も独学的な人であるが、できるだけそうではない方向になるだろう。 今年を振り返って、もう一つ私事の方向転換で次に心にかかっていたことは、現実に私を取り巻く人々の関連でもあるが、簡単に言えば、4人もいる子育てにそろそろ終止符を打ち、老後の人生に向かうことだ。この夏、63歳の誕生日をきっかけにいくつか年金書類の申請をした。自分が老人になったのだと思った。 さて、このブログにも
現代という時代をどう特徴つけるかという問題はむずかしいが、誰もが納得する一つの特徴は、人々が不寛容になったことだろう。「こんなやつは許せない」という情念による悪意はネットに溢れている。他罰的な正義によってしか自分や連帯を維持できない人々に溢れているのは、こうしたネットの世界が顕著だが、現実の世界も同じようになってきた。そして、それらが生み出す全体図は、結果としては不合理で不毛な緊張と争いでしかない。どうすればいいのか。 一つには、18世紀啓蒙主義者ヴォルテールの言葉とされている「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」という格律が有効であるかのように思える(余談だが、この言葉の典拠は本書にも言及があるが不明である)。そして、森本あんりの新著『不寛容論: アメリカが生んだ「共存」の哲学』はこう謳われている。 《こんなユートピア的な寛容社会は本当に実現可能な
私だけの感覚だろうか。今年の安倍内閣のことがうまく思い出せない。令和時代最初の内閣であり、一年ほど続いた第4次安倍第2次改造内閣なのだが、あれはなんだったのだろうと、奇妙に遠い過去のように思えてくる。内閣の終焉は、表向きは、安倍晋三が持病に負けたということだが、コロナ騒ぎに潰れたという思いのほうが強い。おそらくその感覚はそう間違ってもいないだろう。唐突な終わり方でもあったせいか、その内閣の路線継続は誰もの脳裏に自然にあり、ゆえに長期安倍政権の内実を担ってきた菅義偉氏が自然に首相となっても違和感はない。そこまでは、いいだろう。だが、だから菅義偉首相のことがわかるかというと、実質安倍政権の継承だろうとは思うものの、なにか私は腑に落ちない。菅義偉内閣のことも、再考すると、実はよくわからない。一つには、彼が本格的な長期政権の軸となるのか、なんらかの権力の移行期間の現象なのか、ということも、よくわか
人生は、中年を過ぎていくあたりから、砂時計にも似ているように思えてくる。あるいは、昔見た映画館での長い映画フィルムのようなものかもしれない。生まれた瞬間からカメラは回り始め、私たちの日常を、そして感情の機微を、余すところなく記録していくが、普段、私たちは、その撮影者と人生という物語の仕上がりに意識することはない。映画館の暗闇の中で、スクリーンに映し出される物語に夢中になっている観客のように、日々の生活に没頭している。が、ふとした瞬間、ハッとする。クライマックスはもう過ぎている。フィルムの残りが少なくなっている。 それは、若い頃のようには身体が思い通りに動かなくなった時かもしれない。長年親しんだ作家や歌手など、さらに身近で親しい友人が人生というスクリーンから姿を消した時かもしれない。あるいは、鏡に映る自分の姿に、フィルムの劣化、色褪せ、ノイズを見た時かもしれない。死んだ父に似た顔や死んだ母に
2025年9月発売予定のジェフ・セリンゴの著書『夢の学校(DREAM SCHOOL)』は、現在の米国の高等教育の危機を浮き彫りにしてすでにメディアで話題になっている。そこに掲載された調査によると、大学を「良い投資」と考える家庭は2015年の85%から56%に低下し、44%が非投資的と評価する。背景には、学費高騰(2023年平均14,688ドル)、学生ローン1.7兆ドル、学位インフレ(卒業生の40%が学位不要の職に就く)がある。大学進学率は頭打ち(学部入学:男性-10.2%、女性-7.8%、2019-2021年)、代替教育(職業訓練、インターンシップ)が台頭し、Z世代の出願数は増加(1300万件、2001年の3倍)だが、アイビーリーグなどエリート校に集中する。この状況を基に、大学教育の価値、大卒比率、教養教育、修士号の必要性、AIとマイクロクレデンシャルの影響、そして人類知の「飽和点」を考察
一昨日、昨日と続く東京市場の大暴落と今日の回復に関連して、この市場の変動と世界経済の今後について、AI (LLM) と対話を行い、その対話のログから、インタビュー記事を自動生成してみました。というわけで、以下がその結果です。ヴィンセント博士はAI (LLM) で記者は私です。 「世界経済の行方 - AI (LLM) が語る最新動向と展望」 記者: 本日は、経済アナリストのヴィンセント博士をお招きし、世界経済の最新動向と今後の展望についてお話を伺います。ヴィンセント博士、よろしくお願いいたします。 ヴィンセント博士: こちらこそ、よろしくお願いいたします。 記者: まず、最近の日本の株式市場の動きについて伺いたいと思います。8月5日に大暴落があり、翌日には回復しました、この急激な変動をどのように分析されますか? ヴィンセント博士: はい、8月5日の日本株式市場の大暴落とその翌日の急激な回復は
本書『自閉症は津軽弁を話さない リターンズ ---コミュニケーションを育む情報の獲得・共有のメカニズム』は、本書でも当然触れているが3年前に出された『自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く』の続巻とも言える。内容は、この現象、つまり、自閉症は方言を話さないという現象についての、学際的な広がり、実態報告、実証研究などであり、さらに、方言を話す自閉症についても言及されている。小説ではないので、ネタバレにもならないだろうが、本書の結語とも言えるのは、《自閉症と方言、解くべき謎はまだ残されているようです》ということだろう。この領域に関心を持たざるをえない私としても、全容はつかめていないように思えた。 まず、もっとも重要であり、議論の前提となるのは、「自閉症は方言を話さないという現象」である。前著に研究経緯があり本書でも言及されているが、概ね実証レベルでその現象がまずもっ
自分を紹介するとき、「ブロガー」と書くことがあった。「アルファブロガー」というのもあった。まあ、それなりに、そう言ってもいいかもしれないとは思ったが、嘘くささは感じていた。いったい何本のブログ記事を書いたら、一人前のブロガーと名乗れるのだろうかね。そんなことを考えながらブログの投稿画面を開いていたら、ふと気がついた。この記事が4000本目になる。単純計算で、1日1本書いたとして11年くらいになるはずだが、私の場合は20年以上の歳月をかけての到達だ。たいしたことないじゃないか。そうか? まあ、その間、4人の子どもたちは成長し、全員が成人して親離れもした。時の流れとはなんと不思議なものだな。 よく「継続は力なり」と言うが、というか、これは赤尾好夫の言葉なんだけど、この4000本に特別な継続という実感はない。そもそも人に何かを伝えることの困難さは、ブログを始める前から知っていた。それでも書き続け
ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ blog.hatenablog.com www.sucharaka-zaren.com 『はてなブログ』にカテゴリー別のランキング機能が! というのをみて、僕は驚いてしまいました。 いま、2023年だよね? 『はてなブログ』だよね? まさか、『エンピツ』(という日記レンタルサイトがあったのです。というか、今もあります)の「投票数ランキング」が現代によみがえってくるなんて...... www.enpitu.ne.jp 僕もずっと、こんな日記を書いていました。 www.enpitu.ne.jp この日記のもっとも新しい日付が2013年ですから、もう10年前になるんですね。 さまざまな日記レンタルサービスやブログのプラットフォームが終了しているなかで、まだずっとデータを残してくれている『エンピツ』は、本当に良心的ですね。「有料で永久レンタル」というのを作
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