2018年2月10日土曜日

Neve1272を改良する(ラインレベルも受けられる!)

Neve1272

一般的にNeve1073,1066等の代用HAとして使われることが多いNeve1272 ですが、実は大きな問題点があります。実際に使ったことがある方は実感したことがあると思いますが、かなり入力が歪みやすいのです。特にマイク録音に関してはソースがピーキーになりやすいですし、マイク本体が真空管マイクなどになると大元の出力が大きめになりますので、余計に歪みやすくなります。しかも、オリジナルのラッキングものにはPADスイッチが付いていないことも多い…と実際エンジニアさんもお悩みの方が多いはず。今回は、そういった一連のウィークポイントを解決する改造を紹介したいと思います。




そもそも入力が歪みやすい原因を探ると 、1272の構造に問題がありました。元々ラインアンプではあるのですが、入力トランス(10648)を通過したあとにそのままアンプであるBA283 へ入力されるようになっています。BA283はご存知の通りシングルアンプで入力初段のエミッタ抵抗値でゲインを調整するようになっているうえ、更に既にトランスの昇圧で+6dbの利得がその前にあります。なのでこの時点で信号が大きくなりすぎます。Neveの動作電圧は+24Vですから元々ヘッドルームも狭いことも相まって、クリップし易かったのです。

つまりこれを改善するにはアンプの初段の手前で信号をある程度トリムする必要性があります。ここで入力を調整しつつ後ろのアンプである程度信号をゲインアップできれば、Neveの音色を活かした音作りも可能になりますね。そこでこのように配線をし直しましょう。

Neve 1272 改造図

追加で必要な部品は5kAカーブのボリュームと240Ω、22Ωの抵抗、あとはトグルスイッチです。
(プッシュプルスイッチ付きボリュームでも可)
入力トランスの負荷抵抗は不要なので外してしまいましょう。

見ての通り、入力トランスの直後に5kAのボリュームで信号をトリムするようになっています。ここで信号を可変で絞ることにより、かなり大きな信号でも歪みづらくなり融通が効くようになります。またフロントアンプのゲイン調整用抵抗(240Ω)は固定にしていますが、ここをトグルスイッチで22Ωに切り替えることにより、ゲインが+18dbとなりますのでトータルゲインは今まで通りトランスの昇圧分を含めて60db近く稼ぐことができます。(リアアンプのゲインを調整する端子“K”はオープンでゲイン固定しています)入力インピーダンスは1.2kΩとなります。

増幅前の信号をボリュームに通して音質的にいいの?と思う人もいると思いますが、ひとまずお試しください。違和感はほぼないですし、しかもゲインがスムーズに可変できるようになった使いやすさのほうに感動すると思います。特に1つの入力でマイク/ラインレベル両方をこのまま受けることができますから、サミング・アンプとして使う場合は非常に便利です。オススメです。

いわゆる1272タイプのクローンはオリジナルの回路を踏襲しているため、このヘッドルームの狭さ・歪みやすさも継承してしまっているのですが、新しくNeveタイプのプリアンプを製作する場合はこちらの回路で作ったほうが良い結果が得られると思います。PADも不要ですしね。

2018年2月5日月曜日

チューブラ型のコンデンサ

BA283 のリキャップ作業をしていました。最近よく使いかますからね。古いコンデンサーは全て新品に交換します。

日本では電解コンデンサは殆どが縦向きに実装するラジアル型と呼ばれるものですが、海外の製品だと横向きに実装するチューブラ型(Axial型)が使われていることが多いので、元々チューブラが付いていた場所には同じチューブラのコンデンサを再度付け直します。

ニチコン・チューブラ型VX

慣れていないと間違えやすいのがコンデンサの極性で、矢印(>>>)が向いている先がマイナス側です。ラジアル型と違って+の記号がついていないものが殆どですので、間違えて逆に付けて爆発させたりしないようにしましょう。

国産コンデンサだとチューブラの選択肢が殆どないので、オリジナルに準じてフィリップス製のチューブラをいままで使っていたのですが、最近Vishayブランドになって見た目が変わったようです。ちょっとまだ違和感があります。

2017年9月25日月曜日

Neve 1272 Racked by Brent Averill

奥がLO1166/10468 手前がBA283


NeveのノックダウンものではメジャーになりましたNeve1272です。

こちらも元々はコンソールのラインアンプですが、中身はBA283 アンプカードにMarinair/St.Ivesの入出力トランス (10468+LO1166)を組み合わせたものです。つまりNeve1073/1066などのチャンネルストリップのヘッドアンプ部分を取り出したものとほぼ同じものになります。(厳密にはゲインアップなどの定数がちょっと違いますが)

元々ライン・アンプであるものをヘッドアンプとして…というのはNeve3415と共通ですね。今回の個体はBrent Averillでラッキングされたものです。

Brent Averill氏は現在はBAEという会社を立ち上げ、Neveクローンを製造・販売していますが、元々はNeveオフィシャルのライセンスを受けて修理や改造をしており、このラッキングされたNeve1272もその時代のものです。


NEVE 1272 と表記されているのでオリジナルモジュールです


モジュールが枯渇した後はBAEでクローンのモジュールを作るようになり、オリジナルのNeveモジュールは使われていません。製造時期はフロントパネルの文字で判別することが可能です。MADE FROM NEVE 1272 MODULEと印字されていれば初期型でNeveオリジナルモジュールが使われている時期です。MADE FROM 1272 MODULEと印字されている時期はリプロダクトされたクローンモジュールです。

Neve1073に代表されるチャンネルストリップ型のモジュールはもうだいぶ昔から高騰しましたので、「ヘッドアンプだけでも同じ音で…」という人が増え、こちらの1272が用いられることが多くなりましたが、いまとなっては代用の1272でさえ枯渇し倍近く高騰。もはや市場にNeveオリジナルモジュールが出てくることも少なくなりました。

2017年6月7日水曜日

臼井ミトン氏のレコーディング in USA

臼井ミトン氏が先月末からアメリカに渡り、レコーディングをした様子がブログにまとめられています。


にしても、すごいミュージシャンの顔ぶれですね。前作でも参加しているウィル・リーをはじめリック・マロッタ、デヴィッド・スピノザとレジェンド級のミュージシャンと一緒にベーシック・トラックをレコーディングされたとのこと!そしてそのRecにうちでラッキングした機材も使って頂きましたよ。感無量ですね。

今後は日本で他のトラックのダビングやmix作業をすすめていくとのこと。完成が楽しみですね。

2017年5月18日木曜日

Quad Eight MP404 Traveler

非常にコンパクトになりました

QuadEightのMP404モジュール を持ち運び易いモバイル・ケースにノックダウンしました。

MP404モジュールについてはコチラを参考にして頂くとして。

オーナーの臼井ミトン氏 の「海外や遠征先でも大荷物にならないで気軽に運べる状態にしたい。そしてなるべく小さく&軽く」という要望により2Uの大型ケースからMP404を新しい筐体へ移植することとなりました。旅先にに持っていける“トラベラー”仕様をご所望とのこと。

まず本体を小さくするので、電源は外部PSUから供給する方式に。PSU自体もスイッチング電源を使ってなるべく軽量化を図りました。

一番厄介だったのが、このMP404本体は出力がアンバランスなので、出力をバランスにするにはライントランスをかます必要性があります。いままでは容量に余裕のある2Uケースだったので中に大型のライントランスが余裕で入っていたのですが…。


しかし、トランスという部品はサイズも大きいうえに4つも取り付けなければいけません。あまり奥行きを増やすと今度は筐体を小さくした意味が薄れてしまう…。なのでEdcorの一番小さいサイズのトランスを横向きに4chぶん並べることに。結局ギリギリで収まりました。(本当にギリギリ!)



モバイルケースなのでサイドにはバンドの取っ手もついており、持ち運びやすくなりました。
この大きさの4chディスクリートマイクプリって、たぶん世間にはないと思います。
月末からアメリカで活躍されるようです!

2017年3月30日木曜日

2種類のBA283?

うちではNeveの心臓部として取り扱うことの多いNeve BA283 ですが、実は厳密には2つのバージョンがあるのをご存知でしょうか。

最近お問い合わせの多いBA283…?

例えばこれ……基板の右側はブランクになっていますね。一見ただの未実装の基板ですが左側にはモトローラのパワートランジスタ2N3055をはじめ部品がしっかり実装されています。

そもそもBA283はプリアンプと出力アンプが2回路含まれているものです。その半分だけ実装されているということは……そう、これは出力アンプのみが実装されたBA283なんです。型番はBA283AMといいます。

このAMという型番はソケットの端子番号に由来します。BA283の一番最初の端子はAから始まり、終わりがVなのです。AからMまで実装済みのタイプなのでBA283AM。つまり全ての部品がフル実装されているものはBA283AVとなります。

AMのバージョンはいわゆるトランス出力を追加する部分に使われていたようです。もちろんこのブランク部分に部品を実装していけばそのままAVバージョンと同じものになります。(AMバージョンでもゲインは18db程度あるので、ちょっとしたプリアンプを作ることはできますけどね)

うちではFDNV-02 をはじめBA283を使った製品も製作しております。是非!

2017年2月22日水曜日

クローン機材の落とし穴?


プロオーディオの世界でも、古くから誰しもが認める名機と謳われる機材がいくつもあります。
いわゆるヴィンテージ機材と呼ばれるものです。


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