企業向けサービス価格指数(2005年基準)の概要
2009年10月
日本銀行調査統計局
作成部署、作成周期、公表時期等
作成部署:調査統計局物価統計担当
作成周期:月次
公表時期:速報値…原則として、翌月の第18営業日の8:50。
確報値…翌月分の速報公表時。
- (注)指数の遡及訂正を年2回(3、9月:2、8月速報公表時)、定期的に実施(対象は原則として、過去1年半分)。
公表方法:インターネット・ホームページ、日本銀行本店情報ルーム(月〜金、8:50〜17:00)
刊行物等:「物価指数季報」「金融経済統計月報」「日本銀行統計」
データ始期:1985年1月
1. 調査対象
- 企業間で取引されるサービスの取引価格
- 調査先数:823(参考指数を含むベース、2009年6月時点)
- 調査価格数:3,463(参考指数を含むベース、2009年6月時点)
2. 統計内容
(1)目的・機能
企業向けサービス価格指数は、企業間で取引されるサービスの価格変動を測定するものである。その主な目的は、企業間で取引されるサービス価格の集約を通じて、サービスの需給動向を把握し、景気動向ひいては金融政策を判断するための材料を提供することにある。また、名目金額で表示される生産額から価格要因を除去して数量(実質生産量)を算出するデフレーターとしての機能のほか、企業間での個々の商取引における値決めの参考指標としての機能も有している。
(2)対象範囲
企業向けサービス価格指数は、企業間で取引されるサービスを対象としている。個人向けサービスは対象外としているが、主として個人向けであっても企業が同様に需要するサービス(郵便、電話など)は、調査対象としている。
ただし、継続的に信頼性のある価格を調査することが困難で、かつ採用品目の中に、属性の類似するサービスや価格動向を近似できる適当なサービスがないもの(金融仲介、卸小売など)については、対象外としている。
(3)指数体系、品目分類編成、ウエイト
企業向けサービス価格指数の指数体系は、基本分類指数と参考指数から構成される。基本分類指数は、企業間におけるサービス取引のうち、国内取引と輸入取引を対象としている。一方、統計利用者からのニーズを考慮して、基本分類指数に属さないものや、基本分類指数を加工したものを、参考指数として公表している。詳細は、「2005年基準 企業向けサービス価格指数(CSPI)指数体系・統計始期」を参照。
基本分類指数
総平均、7大類別、20類別、49小類別、137品目から構成される。
ウエイトは、総務省『産業連関表』(2005年)におけるサービス部門の企業間取引額(中間需要部門+国内総固定資本形成+家計外消費支出)を基礎データとして算出している。
指数は、消費税を含むベースで作成するほか、契約通貨が外貨建ての取引価格は円換算して集計している。
参考系列として、「総平均(除く国際運輸)」のほか、外貨建て価格を円換算せずに集計した「契約通貨ベース」を作成・公表している。外貨建て価格を調査している比率は、「契約通貨別構成比」を参照。
参考指数
参考指数として、「消費税を除く企業向けサービス価格指数」、「リース料率」、「輸出サービス価格指数」を作成・公表している。
「消費税を除く企業向けサービス価格指数」の品目分類編成およびウエイトは、基本分類指数に準じる。その他の参考指数はウエイトを設定していない。
(4)指数の基準時およびウエイト算定年次
指数の基準時およびウエイト算定年次は2005年。
(5)採用品目
採用品目の選定は次のとおりである。まず、『産業連関表』における基準年(2005年)の企業間取引額が、原則として、5,000億円以上のサービスを「小類別」として採用する。次に、各小類別を構成する個別品目のうち、ウエイトデータが利用可能であり、かつ、品質一定の下で継続的な価格調査が可能なものを、採用品目として選定している。2005年基準改定における品目改廃内容は、「改廃品目一覧(1990年基準〜2005年基準)」を参照。
(6)調査価格
企業向けサービス価格指数は、品目内に複数の調査価格を設定している。
調査価格の設定に際しては、1)当該品目の需給を敏感に反映する代表的なサービスであること、2)サービスの品質、取引条件などを十分に固定できること、の2点を特に重視している。
調査段階
サービスは提供者(生産者)から需要者へ直接供給されるケースが一般的なため、原則、サービスの提供者(生産者)から価格を調査している。
調査時点
原則として、サービス提供時。
価格調査方法
原則として、サービスの内容、取引相手先、取引条件などを固定した「実際の取引価格」を、継続的に調査している。
ただし、価格設定が多様化しているサービスや、サービス内容の個別性が強いサービス(オーダーメード・サービス)については、取引実態に応じて、以下の価格調査方法を採用している。
- 標準価格
サービス内容や取引条件を特定した実際の取引において、目安とされる標準的な価格を調査。 - 平均価格
品質一定の条件を損なわない範囲で、サービス内容、あるいは取引相手先や取引条件の異なる複数の取引をグルーピングして売上高を集計し、合計販売数量で除した平均価格を調査。 - モデル価格
価格設定が多様化しているサービスについて、1)取引条件の異なる複数の需要者を想定し、それぞれの需要者にとっての最安値を、需要者のウエイトで平均した価格を調査。
オーダーメード・サービスについて、2)仮想的な取引(サービス内容、取引相手先、取引条件)を設定し、その条件でサービスを提供する場合の見積もり価格を調査。 - 労働時間当たり単価(人月単価)
労働投入量(人月)が品質に比例するとみなし得るサービスについて、労働時間当たりの単価を調査。
また、従価制料金が適用される(金融やリースなど取引金額に対する料率で価格を設定する)サービスについては、以下の価格調査方法を採用している。
- 料率×インフレーター
料率に適当な価格指数(インフレーター)を乗じ、従量制に変換した価格を調査。
各品目において採用している価格調査方法の詳細は、「2005年基準 企業向けサービス価格指数(CSPI)調査対象サービス一覧」「2005年基準 企業向けサービス価格指数(CSPI)調査価格の性質一覧」を参照。
毎月の価格は、原則として、翌月央に書面で調査している。
外貨建て価格を調査している場合は、調査時点における銀行の対顧客電信直物相場(月中平均、仲値)を用い、円換算している。
欠測価格の取扱い
統計公表までに報告がない場合や、取引の成約がない場合等に生じる「欠測価格」は、原則として、前月の価格と同値(横這い)とする。外貨建て価格を調査している場合は、外貨建て価格を前月と同値とし、円換算する。
一方、複数月に亘る契約期間の終了後に価格が確定する場合など、統計公表までに正式な価格が確定しない場合も、「欠測価格」が発生する。この場合は、(1)仮価格(価格が正式に決定するまでの間、実際の取引に使用される暫定的な決済価格)、(2)見込み価格(見積もり内容、または、一部の価格情報に基づく見込み価格)、(3)直前の確定価格、のいずれかを利用する。
なお、「欠測価格」は、成約がない場合を除き、事後的に入手した計数に置き換えている。
外部データの採用
海上貨物輸送や土木建築サービスなどの一部品目では、精度が高く、継続的に利用可能な他機関統計や外部のデータベースを調査価格として採用している。詳細は、「2005年基準企業向けサービス価格指数(CSPI)外部データ一覧」を参照。
調査価格の変更および品質調整方法
調査価格について、調査対象サービスの代表性喪失、取引相手先の変更、調査先の変更などが生じた場合、速やかに調査価格の変更を行う。この際、新旧調査価格の価格差から両者の品質の変化に相当する価格差を除いた純粋な価格変動分のみを指数に反映する。品質調整方法としては、直接比較法、オーバーラップ法、コスト評価法、単価比較法、ヘドニック法の5つを用いている。
品質調整方法
名称 | 内容 |
---|---|
直接比較法 | 新旧調査価格の品質が本質的に同一で、両者の品質差を無視し得るものと判断し処理する方法。 |
オーバーラップ法 | 同一条件の下で、一定期間、並行販売された2つのサービスの価格比が安定している場合、同一時点における新旧調査価格の価格差を品質差とみなし、価格指数を接続する方法。 |
コスト評価法 | 調査先企業からヒヤリングした新旧調査価格の品質変化に要したコストを、両調査価格の品質差に対応する価格差とみなし、新旧調査価格の価格差の残り部分を「純粋な価格変動」(=物価の変動)として処理する方法。 |
単価比較法 | 新旧サービスは数量こそ異なるが、新旧調査価格の品質は本質的に同一とみなされる場合において、新旧サービスの単価比を価格比とみなし、価格指数を接続する方法。 |
ヘドニック法(注) | サービス間の価格差の一部は、これらサービスの有する共通の諸特性によって測られる品質差に起因していると考え、サービスの諸特性の変化から「品質変化に見合う価格変動」部分を回帰方程式により定量的に推定し、残り部分を「純粋な価格変動」として処理する方法。 |
- (注)他の品質調整方法の適用が困難である、ないしは十分な品質調整が行えない場合において、特性を定量的に示すデータが継続的に入手可能であることを前提に、適用を検討している。
(7)指数算式
各時点ごとに各種サービスの価格をまず指数化し、その価格指数を基準時に固定した金額ウエイトにより加重算術平均する「固定基準ラスパイレス指数算式」を用いている。
- chart1
品目指数の算出
調査価格ごとに、当月の報告価格(「比較時価格」)をそれぞれの「基準時価格」(基準年平均=100.0に相当する価格)で除して個別の調査価格指数を算出する。この調査価格指数に各々の調査価格ウエイトを乗じ(調査価格の加重指数)、当該品目に属する全調査価格の加重指数の合計(品目加重指数)を当該品目のウエイトで除することにより、品目指数を算出している。
上位段階の指数の算出
総平均、大類別、小類別といった上位段階についても、品目指数と同様の集計方法により、当該分類に属する全調査価格の加重指数の合計を当該分類のウエイトで除することにより、指数を算出している。
(8)指数の公表
企業向けサービス価格指数は、毎月第18営業日(ただし、月間の営業日数が短い場合などには公表日を若干繰り上げる)の午前8時50分に、前月分の速報値および前々月分の確報値を公表している。また、年2回(3、9月:2、8月速報公表時)、指数の定期遡及訂正を実施している。
指数を非公表とする品目
複数調査先による3調査価格以上を設定できない品目は、価格情報を秘匿するため、同じ小類別に属する別の1品目と共に非公表とし、これを"x"と表示する(指数公表に調査先からの同意が得られた場合を除く)。
指数の訂正
確報値の公表以降に判明した計数を指数に反映するため、遡及訂正を実施している。
定期遡及訂正は、原則として、過去1年半分を対象とする。複数月に亘る契約期間の終了後に価格が確定する場合など、統計公表までに入手できない「欠測価格」は、定期遡及訂正時に確定価格に置き換えるため、大幅な指数の訂正が生じる場合がある(特に、「携帯電話・PHS」「受託開発ソフトウェア」「公認会計士サービス」「建築設計」の4品目)。各品目において定期的に発生する遡及訂正内容は、「2005年基準 企業向けサービス価格指数(CSPI)調査対象サービス一覧」を参照。
なお、総平均指数に影響が及ぶなどの大きな変動が生じた場合には、定期遡及訂正とは別に、判明した直後の公表月に遡及訂正を実施することがある。
(9)接続指数
企業向けサービス価格指数は、基本分類指数を対象に、接続指数を作成・公表している。指数の接続は、原則として、2005年基準の系列と同一のサービス対象範囲に該当する全系列について行っている。各系列の統計始期および過去の基準指数との対応については、「2005年基準接続指数・過去基準との対応表」を参照。
3. 2005年基準に関する資料
企業向けサービス価格指数は、5年に一度の頻度で、指数の基準時およびウエイト算定年次を更新する基準改定を行っている。
資料名 | |
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見直し方針 | 「2005年基準企業向けサービス価格指数の見直し方針へのご意見のお願い——サービス物価の捕捉の現状と課題について——」(2008年7月) 「2005年基準『企業向けサービス価格指数』基準改定方針の一部変更のお知らせ——対象範囲拡大とウエイト計算方法の変更——」(2009年1月) |
最終案 | 「企業向けサービス価格指数・2005年基準改定の最終案——見直し案に対するご意見と基準改定の概要——」(2009年6月) |
改定結果 | 「企業向けサービス価格指数・2005年基準改定結果——基準改定結果の概要と2005年基準指数の動向——」(2009年10月) |