ArCSIIプロジェクトの研究基盤
北極域研究には、北極圏の調査観測によるデータ収集とその解析が不可欠です。国立極地研究所、海洋研究開発機構、北海道大学と宇宙航空研究開発機構が保有する設備・施設を中心に研究基盤として運用し、各研究を支えます。またこれらの研究基盤は人材育成、アウトリーチ、情報提供のためにも積極的に活用されます。
国際連携拠点
国際共同研究ならびに人材育成等の基盤として、国立極地研究所と海洋研究開発機構が北極圏国の研究機関と提携して運用・維持している観測施設を国際連携拠点として活用します。国際共同研究等の実施を通じて国際連携を強化するとともに、若手研究者等の人材育成の場としての利用も行います。
国際連携拠点の整備・運用計画
カナダ
カナダ極北研究ステーション(CHARS)
CHARSには日本の研究者や学生が研究・観測や訓練・実習等に利用できる施設があり、またフィールド訓練等を経験豊かな現地住民の協力を得て実施することができます。
CENステーション
ラバル大学、ケベック大学リモースキー校およびケベック大学州立科学研究所からなるセンターで、カナダ東岸の北緯53度から北緯83度の間に8つほどのステーションを維持しており、カナダ高緯度地域における研究施設として利用します。
デンマーク(グリーンランド)
カナック-シオラパルク
DMI(デンマーク気象研究所)や現地協力者との協力でグリーンランド北西部に拠点を設け、現地観測や調査を更に推進します。
グリーンランド天然資源研究所(GINR)
グリーンランド自治政府が置かれるヌークに所在するGINRは主に北極圏の生態系を中心に研究を行っており、この分野を含め、グリーンランドにおける幅広い分野の共同研究拠点としてや文献調査などに活用します。
フィンランド
パラス-ソダンキュラ
FMI( フィンランド気象局)の協力により、各種気象観測施設、衛星センサー地上検証サイトを活用します。
ノルウェー(スバールバル諸島)
ニーオルスン基地
国立極地研究所は北緯79度のニーオルスンに1991年から基地を開設し、我が国の北極域研究の最前線基地の一つとして利用してきました。多くの国がニーオルスンでの研究活動に力を入れており、我が国も最重要拠点の一つとして施設整備と有効活用を進めています。
スバールバル大学(UNIS)
UNISは世界最北の高等教育研究機関として北極域研究に関わる充実した観測施設や教育訓練コースを運営しており、国立極地研究所が賃借する研究スペースを利用することができます。
ロシア
ケープバラノバ
ロシア北極南極研究所(AARI)が2013年に再開した北極海に面したケープバラノバ基地での観測活動を実施し、大気・降水データの取得を行います。
スパスカヤパッド
ロシア科学アカデミーシベリア支部北方圏生物問題研究所(IBPC)と協力し、フラックス観測タワーを中心とした観測活動を行います。
アメリカ(アラスカ)
アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター(IARC)
アラスカ地域における我が国の研究・観測拠点として利用するほか、共同研究に関する調整や交流などを行います。
ポーカーフラットリサーチレンジ観測サイト(PFRR)
フラックス観測タワーを中心に陸域の観測サイトとして利用します。
観測船
海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」は、先端的な観測機器・船上/ 船内設備と航行性能を有する海上の研究基盤です。プロジェクト期間中に北極海の観測航海を実施し海洋環境変化や海洋生態系調査を行います。
また北海道大学の練習船「おしょろ丸」の提供も予定しており、教育・アウトリーチ活動の手段としての活用を推進します。
地球観測衛星データ
北極域を時空間的に幅広くカバーする衛星観測の強みを活かし、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測衛星による海洋、陸域、生態系、雪氷圏などの観測データを北極域データアーカイブシステム(ADS)と連携して研究者が使いやすい形式で提供します。
北極域データアーカイブシステム(ADS)
北極域で取得された研究データの収集・管理・公開を一元的に進め、北極域研究の「オープンサイエンス」基盤の開発と「ビッグデータ」の国内外の相互流通を推進します。
ADSでは船舶航行を支援するためのシステム「VENUS」、データ可視化ツール「VISION」など独自技術の開発を進めており、研究成果の社会実装やデータを利用した教育・アウトリーチ活動に貢献します。