北極大気環境研究
概要
北極大気中の温室効果気体(GHG)やエアロゾルなどの大気物質や雲は、放射収支への影響を通じて、北極気候に大きな影響を与えていると考えられています。本研究では日本の強みを活かした先端的な観測と数値モデル研究により、これらの大気物質や雲の動態や変動要因の解明を目指します。
GHG研究では、地上基地や航空機、「みらい」船舶を利用して北極大気中のGHG濃度や同位体比の高精度観測を実施し、大気輸送モデルや陸域生態系モデルも駆使することにより、GHGの放出源・吸収源フラックスを高い信頼性で推定します。
エアロゾル研究では、太陽放射を強く吸収するブラックカーボン(BC)の北極域でのネットワーク観測を実施するとともに、北極の代表的な観測点であるニーオルスンにおいて、放射や雲微物理に影響する様々なエアロゾルの全体像の把握を目指します。
また雲微物理量の連続観測などにより、これらのエアロゾルの影響を含めた北極域の雲の動態を明らかにすることを目指します。さらにアジアやシベリアの人為的発生源および森林火災から発生し北極へ輸送されるエアロゾルの輸送過程や影響を、広域的な観測ネットワークや個別粒子を追跡可能な先端的モデルにより定量化します。
これらの研究は、MOSAiCなどの国際観測プロジェクトやCMIP6などの国際モデル相互比較プロジェクトなど様々なレベルでの国際共同研究として実施します。そして得られた知見を緩和策の策定などのための科学的根拠として、北極評議会などへ提供することにより社会への貢献を目指します。