ArCS II北極域研究加速プロジェクトの概要
北極域に関する先進的・学際的研究を推進し、その社会実装を目指します
北極域研究加速プロジェクト(ArCS II: Arctic Challenge for Sustainability II)は、北極域研究推進プロジェクト(ArCS、2015〜2019年度)の後継となる、北極域研究のナショナルフラッグシッププロジェクトです。国立極地研究所、海洋研究開発機構(JAMSTEC)および北海道大学の3機関が中心となり、2020年6月から2025年3月まで約4年半の期間で実施されます。
ArCS IIはプロジェクトゴールとして、「持続可能な社会の実現を目的として、北極域の環境変化の実態把握とプロセス解明、気象気候予測の高度化などの先進的な研究を推進することにより、北極の急激な環境変化が我が国を含む人間社会に与える影響を評価し、研究成果の社会実装を目指すとともに、北極における国際的なルール形成のための法政策的な対応の基礎となる科学的知見を国内外のステークホルダーに提供」することを掲げています。
プロジェクトの背景
北極域は、地球温暖化の影響が最も顕著に現れている地域です。海氷の急速な減少や氷床融解の加速など、北極域の自然環境の急激な変化は、北極域にとどまらず、地球全体の環境や生態系に大きな影響を与えることが科学的に指摘されており、将来への深刻な懸念が国際的に共有されています。
一方で、北極域の海氷の減少は、北極航路の利活用や海底資源開発などによって経済活動の飛躍的な拡大につながることが期待されており、北極圏国だけでなく、多くの非北極圏国が強い関心を抱いています。
しかしながら、このような開発等の経済活動の拡大は、復元力に乏しい北極域の環境や生態系に不可逆的なダメージを与えるのみならず、地球規模での環境変化を拡大させるリスクも有します。
日本がこれまでに行ってきた北極域研究プロジェクトは、北極温暖化の増幅メカニズムや地球全体への影響の仕組みを解明し、科学的成果をステークホルダーへ伝えてきました。また北極域は脆弱な環境のもとでバランスしており、局所的な変化が複合的に連鎖して波及することを明らかにしてきました。
しかし未だ観測地域やデータは限られており、国際協力によって観測の空白域を解消し、より正確な実態把握ならびに精緻で高度な将来予測の実現が求められています。北極域環境の変化を先住民の権利や資源開発などのローカルな視点だけでなく、グローバルな視点からもその社会活動に与える影響を正確に把握し、対応策を構築していくことが喫緊の課題です。
こうした北極域における課題に対処するためには、北極圏国のみならず、非北極圏国からの参加による科学的な国際協力の強化と、北極を巡る国際的な法政策的秩序の維持が必須となっており、それらを統合的に実現する研究プロジェクトが強く求められています。
プロジェクトゴール
持続可能な社会の実現を目的として、
- 北極域の環境変化の実態把握とプロセス解明
- 気象気候予測の高度化などの先進的な研究を推進すること
により、北極の急激な環境変化が我が国を含む人間社会に与える影響を評価し、研究成果の社会実装を目指すとともに、北極における国際的なルール形成のための法政策的な対応の基礎となる科学的知見を国内外のステークホルダーに提供します。
運営体制
ArCS IIでは、運営委員会、プロジェクト推進本部、国際助言委員会、 事務局を設置してプロジェクトを運営します。
代表機関
国立極地研究所
副代表機関
海洋研究開発機構
北海道大学
プロジェクトディレクター(PD)
榎本 浩之(国立極地研究所)
サブプロジェクトディレクター(SPD)
宮岡 宏(国立極地研究所)
菊地 隆(海洋研究開発機構)
深町 康(北海道大学)
統括役
青木 輝夫(国立極地研究所)
羽角 博康(海洋研究開発機構)
杉山 慎(北海道大学)
西本 健太郎(国立極地研究所)
運営委員会
プロジェクト推進本部の要請に基づき、プロジェクトの運営に係る重要事項を審議し、承認します。プロジェクトディレクター(PD)、サブプロジェクトディレクター(SPD)、外部有識者で構成されます。
運営委員会委員 | |
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氏名 | 所属 |
榎本 浩之(PD)(委員長) | 国立極地研究所 |
柏木 孝夫 | 東京工業大学 |
菊地 隆(SPD) | 海洋研究開発機構 |
佐藤 正樹 | 東京大学 |
角南 篤 | 笹川平和財団 |
中谷 和弘 | 東京大学 |
西村 浩一 | 日本雪氷学会/名古屋大学 |
長谷川 眞理子 | 総合研究大学院大学 |
深町 康(SPD) | 北海道大学 |
道田 豊 | 東京大学 |
宮岡 宏(SPD) | 国立極地研究所 |
安成 哲三 | 総合地球環境学研究所 |
敬称略、50音順
プロジェクト推進本部
プロジェクトの円滑な推進のため、運営に係る事項を協議し、決定します。プロジェクトディレクター(PD)、サブプロジェクトディレクター(SPD)、統括役で構成されます。
国際助言委員会(IAB: International Advisory Board)
国際的な北極研究プロジェクトの代表者や北極研究を行う研究機関の長など、世界的な北極研究の第一人者を委員として迎え、プロジェクトの計画や成果等に関し、国際的な観点から助言いただきます。
IAB委員 | |
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氏名 | 所属 |
Dr. Betsy Baker | Wilson Center Polar Institute, United States |
Dr. Nicole Biebow | Alfred Wegener Institute, Helmholtz Centre for Polar and Marine Research (AWI), Germany |
Dr. Hajo Eicken | International Arctic Research Center (IARC), the University of Alaska Fairbanks, United States |
Dr. Kim Holmén | Norwegian Polar Institute (NPI), Norway |
Dr. Vladimir Pavlenko | The Institute of Geology of Ore Deposits, Petrography, Mineralogy and Geochemistry of the Russian Academy of Sciences (IGEM RAS), Russia |
Dr. Peter Schweitzer | Department of Social and Cultural Anthropology, University of Vienna, Austria |