月が本当に人間に影響を与えている可能性、驚きの最近の証拠
睡眠や月経、精神疾患などで、長年の否定論に疑問を投げかける
太古の昔から、世界中の人々は、満月が心と体に変化をもたらし、われわれをより暴力的にしたり、奇妙な行動をとらせたりすると信じてきた。研究者らは長い間、そうした主張を否定してきたが、最近の研究では、月のサイクルが一部の人々にかすかな影響を与えることが示唆されている。とりわけ、睡眠、女性の月経周期、双極性障害の人の気分の変動といった、周期的な現象においてだ。
月の周期の影響を受ける動物はいる。海では、月は潮の満ち引きだけでなく、そこで暮らす生物にも影響を及ぼす。多くのサンゴや多毛類(ゴカイなど)、ウニ、軟体動物、カニが満月の前後に産卵 するのは、光の増加によるものだと考えられている。(参考記事:「月のリズムを体に宿す奇妙な海洋生物たち」 )
人間にも月のサイクルが影響するのかについては、研究者たちは長らく否定的であり、影響が「ある」か「ない」かで互いに矛盾する多くの研究結果が発表されてきた。実際、殺人 や外傷センターへの入院、精神科への入院 については、満月の前後での増加は見られないとする大規模な研究がある。(参考記事:「16人を殺害、オオカミ男として処刑「シュトゥンプ事件」とは」 )
しかし、最近の研究により、潮目が変わりつつある。
近年の発見は、月がわれわれに影響を与えることはないという長年の認識に疑問を投げかけるのに十分であり、月が人間の体や心にどのように影響しているのかを調査する必要があると、オーストリア、ウィーン大学の時間生物学者クリスティン・テスマール・ライブレ氏は述べている。
「これはデータですから、われわれは科学者としてそれを理解し、説明するよう努めなければなりません」
睡眠と月
米シアトルにあるワシントン大学の睡眠研究者、オラシオ・デ・ラ・イグレシア氏は、2021年1月に学術誌「Science Advances」に発表した研究 の結果に驚かされたという。
デ・ラ・イグレシア氏らのチームは、活動をモニターする腕時計型センサーを使って、2つの非常に異なる集団の睡眠パターンを、1週間から2カ月にわたって追跡した。ひとつ目のグループは、アルゼンチンの先住民トバ族(コム族)のコミュニティーに属する約100人であり、多くは電気がない、または室内灯はあるが街灯はない環境で暮らしている。ふたつ目のグループは、ワシントン大学の学部生数百人だ。
先住民の参加者は、満月前の数日間には、平均で約20分遅く眠りにつき、全体の睡眠時間も短くなった。しかし、デ・ラ・イグレシア氏にとって予想外だったのは、シアトルの学生たちの多くも、満月の前には睡眠時間が減っていたことだ。シアトルは大都市であり、人工的な光が月明かりをかき消し、学生たちは満月がいつなのかさえ知らない場合が多い。
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