朝鮮戦争で特需到来、日本航空の育成を誌面で主張、ホンダ、ソニー..."戦後派"企業の活躍【ダイヤモンド111周年〜戦後復興期 2】

記事をクリップ
URLをコピー
記事を印刷
Xでシェア
Facebookでシェア
はてなブックマークでシェア
LINEでシェア
noteでシェア

【40】1952年
不徹底に終わった財閥解体
国際競争力強化に向け再結集へ

戦後、GHQ(連合国軍総司令部)は、経済の民主化と独占の防止を目的に、財閥解体を命じた。

まずは三井、三菱、住友、安田、富士(中島飛行機)の五大財閥の解体を指令した。続いて、渋沢、大原、野村、辰馬、日産、川崎、浅野、日窒、古河、大倉、理研、日曹等々、財閥の解体はさらに広範囲に及んだ。また財閥の解体と並行して持株会社整理委員会が設立され、これら財閥の所有する有価証券は政府の手に収められた。

これらの施策は、財閥による経済支配を排除し、公正な競争環境を作ることを目指したものだ。また、財閥と軍部や政界との結びつきを解き、軍需産業などの重工業への経済力集中を解消し、平和的な経済発展を促す目的もあった。

しかし冷戦の影響や朝鮮戦争の勃発を機に、米国は日本経済の早期再建を目指し、強力な産業基盤の再構築を優先することに政策の軸を移したため、財閥解体は不徹底のままに終わる。そして、51年に日本が"自主独立"を手にし、占領下に取られた経済政策が見直される中、完全に終了することとなった。

1952年5月1日「戦後経済・7年の総決算」の中では、「財閥解体――行き過ぎで経済力弱化 今後は漸次是正の方向へ」との見出しで振り返っている。

財閥解体の狙いが、経済の民主化にあったことは言うまでもないが、半面、財閥解体によって被った不利益や不便も多々あると、記事では指摘している。特に、「財閥の解体で最も打撃を受けたのが貿易部門であり、日本経済の自立が貿易にある以上、経済的に大きな弱点となっていることは否定できない」と述べている。

1952年5月1日「戦後経済・7年の総決算」1952年5月1日「戦後経済・7年の総決算」
PDFダウンロードページはこちら(有料会員限定)
『大資本を有する企業が、あらゆる点において小資本の企業にたちまさるのは事実である。
しかも、金融資本を中心に、あらゆる産業分野にわたって、資本的に密接な連ながりをもった経済組織が、有利であり、且つきわめて合理的なものであることは否定しがたいところである。
その故にこそ、三井物産、三菱商事があれだけ大きく世界市場において活躍できたのである。
ところが、財閥解体における群小商社ではどうだろう。なにしろ金がない、人がない、連ながりあるメーカーがない。ないないずくしで、結局、商売も成り立たないときている。
(中略)
財閥の解体も、私的な家族的支配の排除のみに止めておいたならば、ある意味では、わが国の経済復興も、より早くなされたのではないか、とも思えるのである。
したがって、今後国際競争場裡に立ち向っていくためには、ある程度の独占、集中化は当然容認されていいのではないか』

財閥解体によりバラバラになった企業の一部は再編され、新しい形で経営されることとなった。三井や三菱などの企業グループは再集結を果たし、多角化経営やグローバル展開を通じて、経済成長に貢献していった。

記事一覧

欧州戦争で株暴騰、化学・海運・造船...軍需で儲けた会社評、「渋沢に盲従」を批判、物価高騰と米騒動【ダイヤモンド111周年〜大正期 1】

2024年7月2日

111年111本 厳選記事でたどる「激動の日本経済史」記事本文PDFダウンロード

2024年7月2日

関東大震災と戦後不況、武藤山治・藤山雷太・松永安左エ門...論客経営者が続々、東京市電に民営化を進言【ダイヤモンド111周年〜大正期 2】

2024年7月9日

高橋是清が鎮めた金融恐慌、井上準之助が誌上で論じた金解禁、相次ぐテロ事件と軍国化への道【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 1】

2024年7月16日

二・二六事件の戒厳令下で編集作業、日中戦争の勃発で統制経済体制に突入、小林一三の日比谷大劇場街化計画【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 2】

2024年7月23日

戦時下の翼賛体制と言論弾圧、人造石油への期待、ロボット飛行機の荒唐無稽...空襲で休刊へ【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 3】

2024年7月30日

終戦で誓った平和と日本再生、渋沢蔵相の手腕を辛辣批判、超インフレを収束させた"劇薬"ドッジ・ライン【ダイヤモンド111周年〜戦後復興期 1】

2024年8月6日

朝鮮戦争で特需到来、日本航空の育成を誌面で主張、ホンダ、ソニー..."戦後派"企業の活躍【ダイヤモンド111周年〜戦後復興期 2】

2024年8月13日

家電三種の神器、国民車構想、為替・貿易自由化の波...「もはや戦後ではない」経済成長の始まり【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 1】

2024年8月20日

東京五輪の前後で景気が激変、「所得倍増計画」の功罪、ケネディ米大統領暗殺の影響は?【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 2】

2024年8月27日

サントリーと宝酒造が"2弱"のビール戦争、新日本製鉄誕生、セブン参入以前のコンビニ事情【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 3】

2024年9月3日

1ドル360円の終わり、日本列島改造論、石油ショック、三菱も狙っていたディズニーランド誘致【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 1】

2024年9月10日

ロッキード事件の闇、松下電器のトップ交代、深刻化する"サラ金"問題、火花散る日米経済戦争【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 2】

2024年9月17日

「土光臨調」の行政改革と民営化への道筋、トヨタの"工販合併"、日米スパコン摩擦【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 3】

2024年9月24日

バブルへの入り口「プラザ合意」、男女雇用機会均等法、究極のカネ余りと日本企業の"米国買い"【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 4】

2024年10月1日

バブルの絶頂と崩壊で平成が幕開け、株価下落で証券会社に不正横行、先見えぬ"新型不況"に突入【ダイヤモンド111周年〜平成前期 1】

2024年10月8日

阪神・淡路大震災の衝撃、先送りされた住専問題、価格破壊とデフレの始まり【ダイヤモンド111周年〜平成前期 2】

2024年10月15日

山一証券の破綻、大蔵省ノーパンしゃぶしゃぶ事件、そごう倒産、ビットバレーとネット人脈【ダイヤモンド111周年〜平成前期 3】

2024年10月22日

小泉改革の痛み、「竹中プラン」でりそな銀行が国有化へ、勢いを失った"家電王国"【ダイヤモンド111周年〜平成前期 4】

2024年10月29日

増える非正規雇用、リストラ父さんと氷河期フリーター息子、ハゲタカの日本買い、忍び寄るサブプライム危機【ダイヤモンド111周年〜平成前期 5】

2024年11月5日

トヨタも大赤字のリーマンショック、民主党政権誕生、はやぶさ帰還で宇宙ブーム、そして東日本大震災【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 1】

2024年11月12日

ものづくり日本を支配するアップル経済圏、日銀の異次元緩和、自治体消滅・人口減少ショック、東芝不正会計【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 2】

2024年11月19日

マイナス金利という奇策、ブラック企業と働き方改革、堕ちた日産のカリスマ、「サブスク元年」で変わるビジネス【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 3】

2024年11月26日

新型コロナによる"7割経済"、「脱炭素」という踏み絵、物流危機への備え、半導体と電池の地政学的争奪戦【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 4】

2024年12月3日

おすすめの会員限定記事

この記事に関連する企業

あなたにおすすめ

特集

アクセスランキング

  • 最新
  • 昨日
  • 週間
  • 会員

最新記事

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /