インフレ原因から読み解く世界経済「4つのシナリオ」、前日銀審議委員・片岡氏の展望
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インフレ鎮静化と引き換えに
不況入りを覚悟する必要がある
インフレの世界的な拡大が続いている。直近時点における全ての財を含むベースの消費者物価指数(CPI)前年比上昇率を見ると、米国(8月)は前年同月比8.3%と物価の高止まりが続いている。ユーロ圏(7月)は8.9%と過去最高を更新し、英国(7月)は10.1%と40年ぶりに10%を超えた。
一方、日本の物価は主要国の中で最も低いものの、7月は2.6%と上昇ペースが加速。携帯通信料値下げの影響がなくなる今年秋口以降は3%台に高まる見込みである。
もっとも、深刻なインフレに直面している欧米諸国は、ただ手をこまねいているわけではない。金融政策に関して、米連邦準備制度理事会(FRB)は今年に入り幾度となく利上げを行ってきた。8月に開催されたジャクソンホール会議では、パウエル議長が「インフレを鎮静化させるまで引き締め策を続ける」と改めて言明したのは記憶に新しい。
また、欧州中央銀行(ECB)も9月に利上げを開始し、イングランド銀行(BOE)も今年に入り利上げを続けている。そして、各国政府は、原材料価格の上昇に苦しむ家計への給付や、エネルギー価格上昇抑制策といった措置を講じている。
ただし現時点では、これらの対策が十分な成果を上げているとは言い難い。また、各国中央銀行の利上げが物価を有意に下げることになれば、その過程で景気悪化は避けられない。
折しも、ゼロコロナ政策を行う中国経済の落ち込みが鮮明となりつつある中、欧米諸国がインフレ率の鎮静化と引き換えに景気後退に陥った場合、世界経済は一時的にせよ不況局面に突入することを覚悟する必要があるだろう。そこで以下ではグローバルインフレの原因分析を通じて、今後の世界経済が直面し得る4つのシナリオを展望したい。
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