0706Photo1 慶應SDMの看板科目「デザインプロジェクト」は、昨日7/6日から、実戦的なイノベーションへのソリューションをひと夏かけてチームで生み出す第三フェーズに入りました。上の写真は、第三フェーズの意義についての講義を、食い入るような表情で聞き入る大学院生たち。
この日は、素晴らしいニュースの紹介もありました。世界屈指のデザイナーで、このデザインプロジェクトの講師になっていただいている
田子學先生がデザインされた某製陶会社の食器が、世界3大デザイン賞のひとつといわれる
Red Dot Design Award 2013のBest of Best 20に選ばれたのです。田子さんは世界3大デザイン賞のうち、もうひとつの
iF Design Awardの金賞を受賞されています。日本のグッドデザイン賞も入れると3冠ということになります。おめでとうございます、田子先生!
世界3大デザイン賞のうちのふたつが、ハノーバーとエッセンというドイツの工業デザインの本場でのコンテストというのも興味深いですね。残りのひとつはアメリカの賞だそうです。
0706Photo2 上の写真は、Red Dotの雰囲気を解説してくださる田子先生です。
×ばつデザイン'思考で生成する方法論と60以上の技法を学ぶlearning phase。そして6月の1か月を使った第二フェーズは、active learning phaseと呼ばれ、自分たちが自発的に編成したチームで、ブロポーザーと呼ばれる企業等からいただいた製品サービスのイノベーションや組織の問題解決のイノベーティブソリューションの課題を、習った技法をすべて使って、まずは自ら実践してみるフェーズです。
そしてこの日からはじまった第三フェーズは、世の中にイノベーションを送りだすために、企業等からいただいた課題を、自らが会得した手法を自由自在に応用して、市場や組織に提案できるように、実際に自由に解いていくフェーズです。教員やプロポーザーの企業等の方々も厚い支援を行いますがの、結果はチームの自己責任。高いレベルの錬度がソリューションに求められます。
実は、学生たちは前週の土曜日6/29土に、第二フェーズの発表会を行い、教員・TAやプロポーザ企業の方々から、とても多くの助言と叱咤激励を受けています。改善すべきところ、もっと詰めていくところ。次のフェーズでは失敗は許されません。復習する学生たちの表情も真剣そのものです。
0629Photo4 6/29土の第二フェーズ発表会では、発表の際いただいた示唆・コメントをもとに、チームごとに再検討・戦略の練り直しを行い、さらに「自省」の発表を行いました。
0629Photo3 どこを改善するのか。フィールドワークは十分か。プロトタイプはどこで作るのか。ステークホルダーの声(VOX)の収集とエスノグラフに間違いはなかったか。アイデアは十分に発散したか。イノベーションへのロードマップはきちんと書けていたのか。systematic & systemicの発想はできていたか。プロポーザ企業の方々も入ってのチームの打ち合わせは熱気を帯びたものになります。
0629Photo2 そして、7/6日に迎えた第三フェーズの始まり。「実戦配備」の熱い夏が始まります。この日はチームごとに、教員・TAとの間でプロポーザ企業等の方々からの意見のフィードバックと、これからの方向性についてディスカッションを行いました。
0706Photo3 これからリアルイノベーションプロジェクト。やるぞー、という意気に皆燃えています。デザインプロジェクトの最終発表会は9月末。慶應SDMの学生に夏休みはないようです。フィールドワークやプロトタイプづくり、そしてブレーンストーミングやバリューグラフづくりに、早速みなフル展開していきました。熱い夏、身体に気をつけて! イノベーションの誕生に挑む学生たちに応援の声がこだましていました。
- 2013年07月07日(日) 13:36:25|
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Hijino先生 慶應SDMの春学期の土曜日は隔週で、「社会システムのシステムズ・アプローチ」の講義。社会システムはカバレッジが広いので、多くの先生方に講義していただく試みを行っています。6/22土は、比較政治システムがご専門の、慶應SDMの
ヒジノ先生。
アクター間の利害対立、制度と規範、政治システムの構造などの基本概念をカギに、政治システムを学術的に比較する楽しさを、豊富な実例を挙げながらご講義いただきました。政治学をシステムズ・アプローチから分析することの興味深さを学生たちは堪能しました。
フランシス・ローゼンブルスらの新制度学派による日本の政治システムの分析など、1990年代から日本の実証研究の蓄積が注目されています。政治学における社会システムを比較していくことで、社会システム論のアプローチが政治学にも有効に機能することを熱情を込めてご講義いただきました。ヒジノ先生、ありがとうございました。
- 2013年06月22日(土) 15:50:22|
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Photo1 30人を超える有志が初夏の快晴にもかかわらず集まりました。6/15土の午後。北海道の私学の雄、
北海学園大学の「法学部カフェ」。
ワールドカフェをほうふつとさせる、この「法学部カフェ」の記念すべき第20回に、カフェ店長こと法学部長の
樽見先生にお呼びいただいたのでした。素晴らしいモチベーションで、アイスブレーク、ブレーンストーミング、親和図法へと進みます。
Photo2 ブレーンストーミングで思わず笑みがこぼれ、爆笑となったテーブル。このフロー状態が、イノベーティブなアイデアを生むのですね。
Photo3 「あったらいいな、こんな大学」をテーマにブレスト、そして親和図法へと進むと、発想は物理的な大学の枠をどんどん跳び越えていきます。
Photo4 大学と地域の協創は今一番旬のテーマ。慶應SDMが研究・開発をしてきた構造シフト発想法を使い、「北海学園大学2.0」を目指して、大学の目的、機能、コンポーネントの従来型の発想パターンにシフトをかけます。
Photo5 テーブルごとに選んだ「イケてる目的-機能-コンポーネントの組み合わせ」を、サラスらが70年代から実践していたプレイバックシアターの手法を使って表現。即興とイノベーションには、深い関係があるのです。
Photo6 この日のワークショップではなんと、大学の先生方もワークショップとスキットに積極的に参加していただきました。とてもとてもうれしかったです。「出前Open KiDS」として、無給ボランティアのでのお手伝いでしたが、参加された北の都の気鋭のリーダーの方々のアウトプットに、こちらが学んだことが多かった実り多き一日でした。素晴らしい設営と準備をいただいた樽見先生及び先生・スタッフのみなさま、本当にありがとうございました。
- 2013年06月16日(日) 17:02:43|
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高尾先生2 慶應SDMの科目『社会システムのシステムズアプローチ』では、理論倒れにならず、社会システムの学術と現場をバランスよく学ぶため、きらりと光る外部の専門家の先生方に講義をときどきお願いしています。
6/8土の講師は、価値総研の高尾真紀子主任研究員。介護や年金は、国家財政やナショナルミニマムという超マクロでばかり議論されたり、あるいは、介護現場の疲弊と苦労という超ミクロに脚光があたりがち。高尾先生は、「鳥の目・虫の目」を行ったり来たりするように、マクロとミクロのバランスをとりながら、きわめて説得的に分析を紹介していかれます。
高尾先生は、介護、年金、少子化などの分野で、理論と現場の双方に精通する日本でも傑出されたご専門家のひとり。素晴らしいご研究と
ご経歴を持っていらっしゃるのだが、とても謙虚なお人柄で、温かく学生に接してくださるので、学生たちもとても身近に感じた様子。
高尾先生1 介護のように、「準市場」という、公的性格を持つ市場サービスは、高尾先生が
この本でお書きになっておられるように、要介護者と介護サービス提供者の間の情報の非対称性をいかになくしていくかがカギ。
慶應SDMは社会人学生が大半を占めるからでしょうか、実はこの日の教室の半数以上が、なんらかの介護体験を持っていました。そのせいか、学生たちは真剣そのものの表情で、講義に聞き入り、メモを取っています。これほどメモを必死に学生たちがとる講義は久しぶりでした。
高尾先生3 当初は、ブレーンストーミングや因果ループを使ったワークショップを高尾先生のご講義後に予定していましたが、学生たちのたってのお願いで、講義後は、それぞれの学生が付箋紙に自らの介護についての気づきを書き、それをもとに高尾先生と学生たちがダイアログするという、サンデル先生の白熱教室とワールドカフェを足したような形になりました。ワークショップを設計しているTAや有志学生さんたちのフレキシブルでスポンテイニアスな対応に、わたくしもうれしい驚きです。
高尾先生4 出席した学生たちも、自らの体験をもとに、日本の財政状況や地域差の話など、「介護の迷信」ともいえる数々の「思いこみ」にダイアログを武器に切り込んでいきました。
それにしても、わたくし自身もとても勉強になる貴重な90分間でした。介護施設やサービス付き高齢者住宅の顧客視点というか、ユニバーサルデザインはこの数年ぐっと進歩を遂げていて、お風呂や廊下、台所などでもイノベーションの嵐が起きているのだとか。そして、介護の需給は地域格差が大きく、東京の近郊はこれから介護では大変チャレンジングな状況になるのだとか、これまでいわば「介護の迷信」にとらわれていた自分自身の誤りを正すよい機会をいただきました。介護こそが、イノベーションの最前線なのですね。
高尾先生5 講義と対話の最後に、学生たちは思い思いの気づきを記した付箋紙を、黒板に貼り、高尾先生と対話を楽しんで、チェックアウトしていきました。なかには、上の写真のように、感激のあまり、なぜか「アベノミックス」という名のお茶菓子(旅行のお土産だとか)をお渡ししてしまう社会人学生もいて、教室は笑いの渦でした。高尾先生、素晴らしいご講義とダイアログを本当にありがとうございました。
- 2013年06月09日(日) 16:41:13|
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Dr.NishimizuLecture1 「人生で変わらぬことはただ一つ。すべては変わるということだ」5/31金の夜も更けて。慶應SDMの特別講義。西水美恵子・前世銀副総裁の静かな、そして教室中を感動させたお話はこうはじまりました。
ブータンの前国王・雷龍王四世に謁見して以来、前国王を心の師と仰ぎ、教えを実践してきたのだといいます。前国王は、日本でも近年注目を集めている国民総幸福(Gross National Happiness: GNH)の発想者で、17歳の即位以来、トレッキングや民泊も重ねて高い山地にあるブータン全土を、国民と対話するために廻ったのだそうです。
西水さんは、前国王の教えにインスピレーションを受け、90年代後半にパキスタンの貧村に住み込み、現地の女性たちの苦しさを身を以て共有する研修を、自らも率先して体験するために始めます。世銀の真のクライアントとは、一日2回の水くみに山を上り下りで何時間もかけて行き、炊事のための薪あつめと子供の世話で一生を終えていくような、途上国の貧しい村のひとたちだからです。
この研修から帰った西水さんはこう宣言して、巨大な官僚組織でもある世銀改革に乗り出します。「あなたの知っていた美恵子はもう死んだ。ここにはいない。」リーダーが頭ではなく、身を以て本気を出さなければ、組織は変わらない。そう、西水さんは話します。
Dr.NishimizuLecture3 西水さんの静かで、しかし心の底からのお話に、何人もの学生がとまらぬ涙をぬぐっています。西水さんの卓抜のリーダーシップ論は最近出版されたされた
この本に詳しいですが、筆者が特に感銘を受けた西水さんの言葉のいくつかをここに記します。
「リーダーシップとはチーム精神を育むこと」
「チーム精神は飛び火する」
「さかさまになりなさい」(筆者注: つねに逆転の視点からものごとを考えなさいという意味にとりました。)
「何ごともリーダーシップの本気につきる」
「世界の優れたリーダーに共通なのは、心と心がつながりやすい、子供がそのまま大人になったようなひとだ」
「ひとはだれでもリーダーシップを持って生まれてくる。赤ちゃんをご覧なさい」
Dr.NishimizuLecture2 西水さんは、日本でも最近ありがちな、ブータンやGNHをただほめそやすだけの、ふわふわとした最近の一部の幸福論にも厳しい目を向けています。幸福という目的実現のためには、手段としての経済成長が必要。だけれど、手段としての経済成長が目的になってしまっては、幸福が実現しません。
もともと、ブータンのGNHそのものが、インドと中国という巨象に挟まれた小国ブータンの高度な生き残りのための安全保障戦略だといいます。西水さんの講義での言葉です。「Happiness is hard. So it's good for business.」わたくしなりのつたない訳ですと、「幸福を実現するのは、とてもしんどいことだ。だからこそ、それを仕事にするに値する。」
この混沌とする東アジアの情勢の下、社会システムのイノベーションを加速して、日本の価値を高めるという安全保障戦略をギリギリと本気になって、お前は取り組んでいるのか? まだ甘いのではないか? 腹の底からそう感じているのか? そう西水さんに問いかけられているように感じ、筆者の自省の日々が金曜日の夜から続いています。
上の2枚のサムネイルは、90年代にブータンで筆者が買い求めた2枚の絵です。いずれもブータンの伝統的なデザイン。上の絵は、動物たちが協力して木の実をとるという協創の絵。そして下の絵は、それぞれの花が曼荼羅というホリスティックな絵柄に通じていくという吉祥紋の絵と聞いています。
当時、筆者はインドに勤務。インドの辺地や貧困地帯で社会インフラを建設するためのファイナンスの仕事をしていました。西水さんと、当時ニューデリーでお会いした記憶がありますが、その日以来、約20年ぶりに再びお会いできたのでした。
担当国のひとつだったブータンにも何度か足を運びました。当時は何も考えなかったけれど、この2枚の絵を買ったことは、慶應SDMで研究したり教えたりしている価値協創や社会システムデザインへの「正夢」だったのかもしれませんね。ブータンという国が、20年のときを経て、わたくしを慶應SDMという現場に立たせてくれているのかも知れません。
西水さん、感動の講義を本当にありがとうございました。西水さんのご決心とはおそらく、万と一以上に違うと叱られそうですが、タテ割を打破して、横につなぎ、社会システムのデザインとイノベーションに本気で共感してもらえるよう、頭と心を同時に共感できる物語を語っていきたいと思います。
- 2013年06月02日(日) 16:33:24|
- 研究
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