はじめに「このキャラはリアルだ/リアルじゃない」という議論は、作品について語るシーンで必ず現れる。とりわけアニメ・漫画・小説などのポップカルチャー、キャラクターを中心に展開される物語を論ずる際には、リアリティの有無が作品評価の主要な軸として扱われがちだ。多くの場合、「キャラクターはリアルなほど良い」という前提が暗黙の了解となっている。 しかし、大抵の議論は「リアル」という語の意味を定義しないまま進む。 ある人は「心理描写の細かさ」をリアルと呼び、またある人は「現実にいそうな性格類型」をリアルと呼び、さらにある人は「世界観との整合性」をリアルとする。さらに別の立場では「キャラクターの一貫性」や「行動原理の納得感」をもってリアルとする。 ここで問題となるのは、これらがすべて「リアル」という一語に押し込められ、しばしば「リアルなほど良い」「リアルでない=浅い」という価値判断と結びつけられている点