図ー3 電気慣性式シャシダイナモ
メータの構成例

慣性力相当の負荷量(正負)が試験車に与えられるように、ダイナモメータの吸収トルクを制御する

×ばつ[瞬時加速度(ローラの回転パルス信号から検出) ]の抵抗力を電気的に作り出す方式です。

この原理から、慣性量の設定が無段階で行えるだけでなく、シャシダイナモ設備の固定慣性量より軽い車の場合でも、マイナス慣性を与えて試験できます。また構造上、右図のようにコンパクトな設備になるので、省スペースになります。

さらに、ローラ及び電気慣性シャシダイナモを前後2組用意し、前輪側と後輪側の回転とトルクを複合的に制御する機能を設けて、4WD車用シャシダイナモメータにすることも可能です。(後ページ参照)

良いことずくめのような電気慣性式シャシダイナモメータですが、機械式と異なり慣性抵抗力が電気的に作られていて、しかも加減速時のみに作用するため、性能確認が難しい問題があります。モード試験中に電気慣性による吸収負荷量が正確だったか、あるいはダイナモの制御機能等に経年変化による狂いが生じていないか等をチェックするしくみが必要になります。
(b)電気慣性式シャシダイナモメータ

純粋の機械慣性方式で問題なのは、慣性設定の最大値、最小値、そして分解能が、フライホィールの数とサイズで決まってしまう点です。このことから、設定できる慣性量は段階的にならざるを得ません。

これらの点から最近のシャシダイナモメータでは、無段階に慣性量が設定できる電気慣性式が主流になっています。

機械慣性式の特長は、精密加工され慣性モーメントが正確に計量されたフライホィールが使われているため、設定慣性量が確実であり、また時間経過によっても値が変化しないことです。しかしこうしたフライホィールを製造するには高度な金属加工技術が必要で、設備の価格アップにつながります。また複数のフライホィール群を設置するスペースの確保が必要なことや、慣性板セットの中から選択したものを回転軸に固定する自動脱着機構なども必要になります。さらに歯車で増速する機構が入る場合には、機械損失(メカロス)の増加につながる場合があります。

図ー2機械慣性式シャシダイナモ
メータシステムの構成例
機械慣性方式は、図-2に示すように慣性モーメントの異なる複数の慣性板(フライホィール)のセットの中から、合計量が試験車の等価慣性質量に一致する組み合わせを選択し、ローラにつながる回転軸に固定することで、試験車の駆動輪に慣性抵抗が作用するようにします。重量の大きな車を試験するには慣性板も大きくなりますが、設置スペースがない時は、途中に増速機を入れて回転を高めることで慣性力を確保しています。
(a)機械慣性式シャシダイナモメータ
表ー1 JC08モード試験法における等価慣性質量の設定値
図ー1JC08モード試験法とWLTCモード試験法の等価慣性重量の設定方法の違い

わが国の現在の排出ガス・燃費試験法では、試験車の重量に応じて等価慣性重量をシャシダイナモメータに設定することが規定されています。2018年10月移行に新型モデルとして型式指定を受け発売される自動車に関しては、国際統一基準モードであるWLTCモード法によって排出ガス試験、燃費試験を行うことになっています。またそれ以前の車(継続生産車も含む)に関しては、わが国独自のモードであるJC08モードによって排出ガス性能と燃費性能が評価されてきました。
慣性力の与え方は、図1に示すようにJC08モード法とWLTCモード法では異なる規定になっています。JC08モード法がスタートした頃は、シャシダイナモの回転軸に取り付ける慣性盤の選択により慣性力を試験車に与える純粋の機械慣性方式も使われていたことから、図1の左側に示すように試験車重量に応じてステップ状で等価慣性重量を設定することになっていました。試験車重量に応じたJC08モード試験法の等価慣性質量の規定は表1に示す通りです。なお慣性盤では設定できない細かな範囲の等価慣性質量の調整を後述する電気慣性方式と組み合わせて行うシャシダイナモメータもあります。

(1)慣性力の吸収方式による種別

3.シャシダイナモメータの方式、種類

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技術解説

技術解説ーシャシダイナモメータによる車両評価3
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