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統計研修受講記(平成28年度 No.2)
特別コース「明日に役立つ統計セミナー」を受講して
東京都総務局統計部調整課 下野 隆照
私の日頃の担当業務の一つ目は、東京都第3次産業活動指数及び東京都全産業活動指数を毎月作成し公表することです。二つ目は庁内から寄せられる統計理論等に関する各種相談への対応です。これら二つの担当業務を精確かつ効果的に遂行していくためには、統計理論に関する専門知識の習得が必要不可欠です。こうした中、今回の研修は『統計学が最強の学問である』の著者である西内啓先生が講師であると知り、本著を興味深く読んだ者として是非受講したいと考え、研修に参加させていただきました。本研修を受講することによって、リサーチデザインの考え方と仮説検定の考え方を習得し、今後の業務で活用できるのではないかと感じたからです。
まず、リサーチデザインの考え方において最も印象深かったのは、経験に基づく論理的解決法(ロジカルシンキング)に頼り過ぎると、結論を間違える危険性があるというものです。具体例を挙げると、急性心筋梗塞発症後に不整脈で死亡している患者が多くいるという「経験」から、急性心筋梗塞後に抗不整脈薬を投与すれば死亡者を減らせるはずだという「論理」に基づき治療方針を決定することの危うさについての講義がありました。実際に抗不整脈薬を投与したグループと何の効果もない薬を投与したグループとで、その後の死亡率を計測してみると、前者のグループの死亡率が高いという統計的に有意な研究結果が報告されていることが示されました。証拠に基づいた対処をしなければ逆効果を生む可能性を認識することができ、統計的アプローチの重要性を改めて感じることができました。
次に、仮説検定の考え方については、データの関連性を検証するための基本手法として、t検定とカイ二乗検定を学びました。t検定については、質的データと量的データの関連性を、カイ二乗検定は、質的データ同士の関連性を検証する際に用いるということをエクセルの実習を通じて学びました。また、これら検定手法とは別に単回帰分析・重回帰分析の手法もエクセルを用いた実習を行ったことで、それら分析を行うためのノウハウを身に付けることができました。仮説検定、単回帰分析、重回帰分析の手法を用いることで、データ同士の関連性の度合いを判定できるということが体感できたことは、今後の業務にも活かせるものになりました。ただし、今回の研修は1日コースであったため、基礎知識がないと講義スピードについていくことが難しく、内容の理解と知識の定着のためには2日コースが適当ではないかと思います。今回の講義内容を基に引き続き自己啓発に努めていきたいと考えます。
最後になりますが、熱心に講義していただいた西内先生、研修環境を整えていただいた事務局の皆様方に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
(統計調査ニュース 平成28年11月号より)