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統計Today No.110

被災地から届いた「家計簿」
〜家計調査2016年4月分結果から見た平成28年熊本地震の影響〜

総務省統計局統計調査部 消費統計課調査官 佐藤 朋彦


1 はじめに

平成28年(2016年)熊本地震で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。また、被災された世帯の皆様の一時も早い復興を心より願っております。
被災地でも、家計調査の調査世帯があります。その中には、避難所生活を余儀なくされた世帯や、余震が続いていたこともあって車中泊をされた世帯もあったとの報告を受けています。
そのような状況の中、熊本県から2016年4月第2期分(4月16日〜30日)の家計簿が5月13日に届きました。内容を拝見しますと、地震で被災した後の非常時においても避難先などで家計簿の記帳を続けていただいた世帯がありました。また、それらの世帯の家計簿には震災の影響が生々しく反映され、被災後の支出状況が克明に記録されていました。統計を作成する者として、ただただ頭の下がる思いです。
そこで、本稿では熊本地震で被災された調査世帯のデータ((注記)1)を含む4月分の結果において、家計の支出に被災の影響が見られる点を紹介します。

((注記)1) 熊本県内にある調査世帯(二人以上の世帯:132世帯)のうち、2016年4月分を回収できたのは99世帯であった。


2 熊本市ではミネラルウォーターの購入が前年同月の11倍

最初に、4月分の熊本市の結果を見ると、消費支出全体では前年同月に比べ名目で3割以上減っています((注記)2)。しかし、その内訳を品目別に見ますと、食料品では「ミネラルウォーター」が前年同月の11.0倍、「カップ麺」が2.4倍、「魚介の缶詰」が2.3倍となっています。また、ペットボトルのお茶などの「茶飲料」や「おにぎり・その他」などの購入も1.5倍前後となっています。食料品以外では、「電池」が前年同月の2.8倍、カートリッジ式ガスボンベが含まれる「他の光熱のその他」が2.3倍となったほか、「温泉・銭湯入浴料」が2.6倍となっています。(表1、図1)

((注記)2) 集計した2016年4月分の熊本市の結果(65世帯の平均)は、平均世帯人員が2.95人と前年同月(3.38人)に比べて少なく、また世帯主の平均年齢が58.1歳と前年同月(53.3歳)に比べて高くなっており、前年同月分(92世帯の平均)などと比較する際は注意する必要がある。


表1 熊本市における震災の影響で増加したとみられる主な品目の1世帯当たり1か月間の支出金額と対前年同月名目増加率

図1 熊本市における震災の影響で増加したとみられる主な品目の1世帯当たり1か月間の支出金額の推移

<食料品>

<食料品以外>

3 全国平均でも「ミネラルウォーター」、「カップ麺」などは大幅に増加

次に2016年4月分の全国平均の結果を見ると、前年同月に比べ食料品では「ミネラルウォーター」が名目34.7%増、「カップ麺」が同16.3%増と、大幅な増加となっています。また、食料品以外では「電池」が名目9.4%増となっています。(表2)
さらに日別集計の結果を見ると、「ミネラルウォーター」の購入は4月15日から18日までの間で前年を大きく上回っています。また、地震発生前(1日から13日まで)と地震発生後(14日から30日まで)を比較してみると、「ミネラルウォーター」は前年同月に比べ地震発生前が2.8%増、発生後が45.7%増となっています。「カップ麺」や「電池」も同様に地震発生後に大幅な増加となっており、この地震を契機に被災地以外でも災害に備えてこれらの品目を購入した世帯が多かったとみられます。(表2、図2)


表2 震災の影響で増加したとみられる主な品目の対前年名目増減率(全国)


図2 「ミネラルウォーター」への日別支出金額の推移(全国)


4 復興に欠かせぬ統計調査の結果

被災地における各種の統計調査の結果は、被害状況を把握するだけでなく、復興状況を捉えるための貴重な資料となり、復興のための政策立案やその評価のために必ず必要とされます。
なお、今後の家計調査の実施に当たっては、まだ余震が続いており、避難生活を続けられている世帯も多い状況にありますので、復興状況をみながら、柔軟かつ弾力的に無理のない範囲内で調査に御協力いただけるよう、調査世帯にお願いしています。


(平成28年6月21日)


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