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統計Today No.76
急増するネットショッピング −家計消費状況調査の結果から−
総務省統計局統計調査部消費統計課長 永島 勝利
最近、インターネットショッピング業界の2強などと言われる楽天・アマゾンの動向や、大手スーパーがインターネットで注文を受けて商品を配達する「ネットスーパー」など、「ネットショッピング」(注1)を巡る話題を新聞や雑誌で見かけることが多くなってきました。言わば流行の最先端を行くネットショッピングですが、現状では、その実態を示す統計は、あまり多くありません。
そのような中で、総務省統計局が毎月実施している家計消費状況調査では、調査が開始された平成14(2002)年以降、「インターネットを利用して購入した商品・サービスの支出総額」について毎月調査し、公表していますので、その結果から、ネットショッピングの状況について御紹介します。
(注1)本文章の中では、「インターネットを利用しての商品・サービスの購入」のことを「ネットショッピング」と表記しています。
最初に、ネットショッピングの支出総額の推移を見てみましょう。
ネットショッピングでの支出総額は11年間で5倍以上に
二人以上の世帯について、1世帯当たり1か月間のネットショッピングでの支出総額の推移をみると、調査開始以来毎年増加し、25年には調査開始時の5倍以上になっています(図1)。
図1 1世帯当たり1か月間のネットショッピングの支出総額の推移(二人以上の世帯、平成14年〜25年)
(注2)「1世帯当たり1か月間のネットショッピングの支出総額」とはネットショッピングでの支出の1か月間の総額を全世帯数(ネットショッピングを利用しなかった世帯も含む。)で除したものです。
(注3)年平均結果は、1月〜12月の各月の結果を単純平均して算出しています。(図2・図3も同じ。)
ネットショッピングを利用した世帯の割合も増加
二人以上の世帯のうち、ネットショッピングを利用した世帯の割合は、2年連続で前年を大きく上回り、平成25年には24.3%となりました(図2上の折れ線グラフ)。つまり、今や、二人以上の世帯の4世帯に1世帯が、ネットショッピングを利用して何らかの商品・サービスを購入しているということになります。
一方、ネットショッピングを利用した世帯だけで見た場合の1世帯当たり1か月間の支出総額についても、年々上昇してきました(図2下の棒グラフ)。
図2 ネットショッピングを利用した世帯当たり1か月間の支出総額及びネットショッピングを利用した世帯の二人以上の世帯全体に占める割合(二人以上の世帯、平成22年〜25年)
次に、ネットショッピングの利用について、もう少し詳しく見てみましょう。
世帯主の年齢が30〜40歳代の世帯で最も多くネットショッピングを利用
平成25年のネットショッピングを利用した世帯の二人以上の世帯全体に占める割合を、世帯主の年齢階級別にみると、世帯主の年齢が「35〜39歳」の階級が最も多く40.5%、次いで「30〜34歳」が39.4%、「40〜44歳」が38.1%などとなっています(図3)。
図3 世帯主の年齢階級別ネットショッピングを利用した世帯の二人以上の世帯全体に占める割合(二人以上の世帯、平成25年)
世帯主の年齢が30〜40歳代の世帯では、毎月、約4割がネットショッピングを利用して何らかの商品・サービスを購入していることが分かります。
平成27年1月からは、ネットショッピングの内訳についても調査します
家計消費状況調査の結果から、平成25年におけるネットショッピングの利用額は、単身世帯も含めた世帯全体で、年額約3.2兆円(注4)と推計することができます。日本の経済や個人消費の今後を考える上で決して無視できない規模に達しています。
このように経済上の重要性が急激に増加しているネットショッピングの実態については、今後、更に詳細に分析する必要があります。そのためには、現在のように、ネットショッピングでの支出総額のみを調査するだけでは不十分であり、商品・サービスの内訳についても把握することが重要です。そこで、総務省統計局では、家計消費状況調査の調査事項を見直し、平成27年1月からネットショッピングでの商品・サービス別(22の分類項目)購入額を毎月調査する予定です(注5)。
(注4)二人以上世帯、単身世帯それぞれの1世帯当たりのネットショッピングでの平均支出総額に、それぞれの世帯総数(平成22年国勢調査結果)を乗じて、合算することで算出しています。
(注5)平成27年1月分の結果は、27年3月上旬に公表予定です。
なお、上記の推計値は、よく言われているネットショッピングの市場規模などと比べると小さくなっています。その理由としては、現在の家計消費状況調査では、1か月間のネットショッピングの利用総額のみを調査しているために、ホテルや航空券などのネット予約によるものや、電子書籍やアプリなどのデジタルコンテンツ、お中元やお歳暮などの贈答用として購入した分などが、調査に回答する際に見落とされていることが考えられます。こうした部分も含めると、市場規模としては、既に4〜5兆円に達している可能性もあります。今後、商品・サービスの内訳を把握することによって、より正確に市場規模を推計できるようになると考えています。
ネットショッピングは、昨今の社会・経済の目まぐるしい変化の端的な一例です。総務省統計局では、今後とも、このような変化に対応して、随時、統計の見直し等を行い、より時代にマッチした、より役に立つ統計の作成を目指してまいります。
(平成26年4月18日)
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