平成28年における難民認定者数等について
平成29年3月24日
法務省入国管理局
平成28年に我が国において難民認定申請を行った者は10,901人であり、前年に比べ3,315人(約44%)増加しました。また、難民の認定をしない処分に対して不服申立てを行った者は5,197人であり、前年に比べ2,077人(約67%)増加し、申請数及び不服申立数いずれも、我が国に難民認定制度が発足した昭和57年以降最多となりました。
難民として認定した者は28人(うち2人は不服申立手続における認定者)、難民として認定しなかった者は、難民認定申請(一次審査)で7,492人、不服申立てで2,112人でした。また、難民とは認定しなかったものの、人道的な配慮が必要なものとして在留を認めた者は97人であり、難民として認定した者を合わせた125人が、難民認定申請の結果、我が国での在留が認められた者の数となりました。
1 難民認定申請数及び不服申立数
(1) 難民認定申請数
ア 難民認定申請を行った者(以下「申請者」という。)は10,901人であり、前年に比べ3,315人(約44%)増加しました(別表1-(1)参照)。
イ 申請者の国籍(注1)は79か国にわたっており、主な国籍は、インドネシア1,829人、ネパール1,451人、フィリピン1,412人、トルコ1,143人、ベトナム1,072人、スリランカ938人、ミャンマー650人、インド470人、カンボジア318人、パキスタン289人となっています(別表1-(3)参照)。
(注1)本資料における「国籍」には無国籍は含まれない。
ウ 申請者の申請時における在留状況は、正規在留者が9,702人(申請者全体の約89%)で、非正規在留者が1,199人(同約11%)となっています(別表2-(1)、(3)参照)。なお、非正規在留者のうち、収容令書又は退去強制令書が発付された後に申請を行った者は782人(約65%)となっています。
エ 申請者全体の約14%に当たる1,497人が、過去に難民認定申請を行ったことがあり、このうち正規在留者は1,009人(うち、難民認定申請中であることを理由に在留資格「特定活動」を付与されている者が約75%)、非正規在留者は488人(うち、既に退去強制令書の発付を受けている者が約82%)となっています。
(2) 不服申立数
ア 難民の認定をしない処分に対して不服申立てを行った者(以下「不服申立者」という。)は5,197人であり、前年に比べ2,077人増加しました(別表1-(2)参照)。
イ 不服申立者の国籍は50か国にわたり、主な国籍は、インドネシア1,229人、ネパール939人、ベトナム690人、トルコ575人、フィリピン355人、スリランカ348人、ミャンマー280人、インド189人、バングラデシュ162人、パキスタン119人となっています(別表1-(4)参照)。
2 処理の状況
(1) 難民認定申請(一次審査)
ア 難民認定申請の処理数は8,193人であり、前年に比べ4,295人(約110%)増加しました。その内訳は、難民と認定した者(以下「認定者」という。)26人、難民と認定しなかった者(以下「不認定者」という。)7,492人、申請を取り下げた者等675人です。
イ 認定者の国籍は12か国にわたっており、主な国籍は、アフガニスタン7人、エチオピア4人、エリトリア3人、バングラデシュ2人となっています。
ウ 不認定者の国籍は65か国にわたっており、主な国籍は、インドネシア1,742人、ベトナム1,213人、トルコ888人、ネパール841人、フィリピン775人、スリランカ464人、ミャンマー319人、バングラデシュ250人、インド248人、パキスタン241人となっています。
(2) 不服申立て
ア 不服申立ての処理数は2,936人であり、前年に比べ661人(約29%)増加しました。その内訳は、不服申立てに理由があるとされた者(認定者)2人、理由がないとされた者(不認定者)2,112人、不服申立てを取り下げた者等822人です。なお、法務大臣は、不服申立てに対する決定に当たって、難民審査参与員の意見を聴かなければならないとされています(出入国管理及び難民認定法第61条の2の9)。
イ 不認定者の主な国籍は、トルコ373人、インドネシア290人、ネパール277人、ミャンマー195人、ベトナム175人、スリランカ127人、フィリピン124人、パキスタン84人、ガーナ77人、バングラデシュ68人となっています。
3 人道配慮による在留許可者数
難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者は97人です。
その国籍は26か国にわたっており、主な国籍は、ウクライナ15人、イラク、トルコ各10人、パキスタン9人、スリランカ8人、ミャンマー6人、フィリピン5人、ガーナ、ナイジェリア、バングラデシュ各4人となっています。
認定者28人にこの97人を加えた125人が、難民認定申請の結果、我が国での在留が認められた者ということになります(別表3参照)。
4 仮滞在許可制度の運用状況
仮滞在許可(注2)者は58人で、前年に比べ25人減少しました。
仮滞在の許可の可否を判断した人数は930人で、許可とならなかった者について、その理由の主なものは
・本邦に上陸した日(本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあっては、その事実を知った日)から6か月を経過した後に難民認定申請をしたこと…487人
・逃亡するおそれがあると疑うに足りる相当の理由があること…345人
・既に退去強制令書の発付を受けていたこと…317人
となっています(注3)。
(注2) 「仮滞在許可」とは、不法滞在中の難民認定申請者の法的地位の安定化を速やかに図ることを目的として、これら不法滞在者から難民認定申請があった場合に、出入国管理及び難民認定法第61条の2の4第1項に定める除外事由に該当する場合を除き、その者に仮に本邦に滞在することを許可する制度です。
(注3)1人の申請者について許可しなかった理由(除外事由)が複数ある場合は、そのすべてを計上しています。
5 難民認定申請における申立て内容
(1) 認定者の主な申立て(注4)
・本国において、政府による宗教弾圧に対する抗議運動を行ったことで複数回警察に連行され、拷問を受けた。
・本国において、政府及び親政府勢力から敵対視されている政党に所属して活動したことで政権与党のメンバーから襲撃を受けた。
・本国において、テレビで政府を批判したところ、政府に非合法化された組織に所属していることが発覚して拷問を受けた上、本邦において、上記組織のメンバーとなり、インターネット上でも政治活動を行った。
(注4)認定事例については別紙(1)を参照してください。
(2) 不認定者の主な申立て(注5、6)
・借金問題や遺産相続など主に財産上のトラブルを申し立てるもの(不認定者の約38%以下同じ)
・地域住民や交際相手等との間に生じたトラブルや暴力事件等に起因する危害のおそれを申し立てるもの(約21%)
・本国における政治的活動を理由に、対立政党の構成員や関係者等から危害を加えられるおそれを申し立てるもの(約18%)
・民族的少数派であることに起因する差別・迫害のおそれを申し立てるもの(約6%)
・特定の宗教を信仰していることや改宗に起因する迫害のおそれを申し立てるもの(約5%)
・本国での生活苦や本邦での稼働継続希望などの個人的事情を申し立てるもの(約4%)
・本国あるいは本邦における政治的活動を理由に本国政府から迫害を受けるおそれを申し立てるもの(約4%)
(注5)不認定者(7,492人)について、申請において申し立てた迫害の内容・理由を分析したものであり、具体的な申立ての信ぴょう性や申立て内容の難民条約上の難民への該当性の判断の結果、不認定となったものです。
(注6)不認定事例については別紙(2)を参照してください。
添付資料