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市場開拓中の今こそ、受け入れを始める好機! 北欧市場にぜひ注目を(JNTOストックホルム事務所インタビュー)

市場開拓中の今こそ、受け入れを始める好機! 北欧市場にぜひ注目を(JNTOストックホルム事務所インタビュー)

市場開拓中の今こそ、受け入れを始める好機! 北欧市場にぜひ注目を(JNTOストックホルム事務所インタビュー)

JNTOでは、北欧市場を重点市場と位置付け、2024年3月にストックホルム事務所を開設しました。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドからなる北欧地域は、海外旅行の需要が高いだけでなく、長期滞在型の旅行を好み、ひとり当たりの消費額が高く、知的好奇心が強いなど、大きな可能性を秘めた市場です。 こちらの記事では、北欧市場の特徴や事務所での取り組みについて、ストックホルム事務所次長 石井悠がご紹介します。 (注記)所属事務所・役職は取材当時の情報です。

知的好奇心が強く環境意識が高い成熟した市場

― はじめに、北欧地域に事務所を設立することになった経緯とその中でもスウェーデン(ストックホルム市)を事務所設置場所として選んだ背景を教えてください。

北欧地域からの訪日外国人客数は、年々増加傾向にあり、2019年に14.1万人と過去最高を記録しました。また、それ以前から、日本の複数の都市に直行便が就航されていたことや、海外旅行需要が旺盛であることや一人当たり旅行消費額がフランス、ドイツ、英国と同規模であることなど、既に重点市場化されている各欧州市場と同規模のポテンシャルがあることから、有望な市場であったため、新たなプロモーション拠点として北欧に事務所を設立する運びとなりました。

事務所設置都市については、人口や訪日旅行者数で見た際に、北欧4カ国中スウェーデンがトップであることも考慮し、プロモーションを最大化させるために、スウェーデン国ストックホルム市に事務所を置くこととしました。ストックホルムは地理的に北欧の中心に位置していますので、他の3ヵ国に足を運びやすいというメリットもあります。(北欧地域市場の基礎情報はコチラをご覧ください)

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北欧市場の訪日外客数の推移 ©日本政府観光局 禁無断転載・複製

― 北欧市場の方の旅行には、どのような傾向があるのでしょうか。

北欧4カ国の海外旅行者数の合計は年間約4,500万人です。旅行先は、ヨーロッパが大半を占めています。気候は、冬が厳しく長いため、ビーチリゾートでの日光浴が人気です。「サン&ビーチ」というキーワードが良く聞かれ、太陽を求めて旅行先を選ぶ方が多くいます。ヨーロッパ内ですと、スペイン、イタリア、ギリシャなどが好まれています。
また、外国旅行をする時期は、夏(6〜7月)と冬(クリスマス休暇)の長期休暇が多いです。春、秋にも1週間程度の休みがあり、四半期ごとに外国旅行の機会が訪れます。

― 北欧市場は環境意識が高く、非常に成熟した社会という印象があります。旅行においても、意識の違いを感じることはありますか。

環境意識の高さが一番わかりやすいのは、移動手段です。飛行機より鉄道がエコと認識されていますので、移動の際には3〜4時間かかっても鉄道を使う、ということも珍しくはありません。また、距離によっては自転車も選択肢に入ってきます。
当然、観光に関しても、より地球に優しい手段を重視することが多いので、北欧地域の旅行会社は、いかにサステナビリティを意識してツアーを企画造成しているかを、大々的にアピールしています。

その一方で、非常に合理的なところもあり、たとえば観光案内所では、デジタルより紙の方が、より積極的に伝えたい情報を伝えられることから、紙の地図やパンフレットも豊富に用意しています。
使いやすいもの、必要なものはちゃんと残し、不要なものは地球に配慮しましょうという柔軟で効率的な考え方は、私たちも見習いたい点です。

関心が高いのは日本でしかできない体験や学び

― 北欧市場からから見た、旅行先としての日本の位置付けについて教えてください。

日本は、伝統文化、歴史、ポップカルチャーなどが楽しめる国として捉えられています。現状では、訪日旅行の大半をゴールデンルートのツアーが占めており、大都市・東京の近未来的な風景と、古都・京都の伝統的な街並みのコントラストを感じたいというのが根強い需要です。

― 北欧の方が好みそうな日本の観光コンテンツはありますか。

北欧地域の方は、知的好奇心が強く、ニッチなものやストーリー性のあるコンテンツを好みます。そのため「地方を訪れてローカルの人と関われる宿に泊まりたい」、「その場所でしかできない体験がしたい」というニーズを良く聞きます。
コンテンツとして可能性を感じているのは、伝統文化などの日本ならではの本物の体験です。武道、茶道、華道などに代表される日本の精神性、マインドセットについて知りたいというニーズがあり、日本を専門的に扱う旅行会社も「日本での学び」に着目しています。つい先日も、四国のお遍路を扱うDMCをこちらの旅行会社に紹介しましたが、日本の精神性にフォーカスしたツアーが企画され、非常に人気を集めているようです。
また、多くの方が自然の中に身を置くことを好むため、日本で自然を楽しみたいという需要は間違いなくあると思います。以前の招請旅行では、阿蘇山のマウンテンバイクをご紹介し、大変好評でした。冬期はウィンタースポーツの需要もあります。スキーに特化した旅行会社が、既に北海道と長野県を取り扱っており、新たなエリアとして東北でのスキーもご紹介したところです。
興味を持ったコンテンツの中で、意外だと感じたものは、日本の古着やビンテージです。東京滞在中に、下北沢や高円寺の古着屋でのショッピングを目的とする方もいらっしゃいます。
北欧は、物を大事に長く扱う社会で、中古品を購入することに美しさ、楽しさを見いだす文化がありますので、ショッピングとして古着を打ち出すのも良いと思います。日本には、紹介できるコンテンツが非常にたくさんあるので、いかに市場に「刺さる」コンテンツをお伝えできるかがポイントだと思っています。

― 北欧では、旅行情報をどのように収集されているのでしょうか。

一番旅行に結び付きやすい情報源は、信頼できる人からの口コミです。もちろん、SNSやインターネットも利用されていますが、実際に日本に行ったことのある家族や友人などから現地の情報を聞いて、旅行を検討することが多いように思います。
若い人たちは、YouTubeやNetflix、現地テレビのオンデマンドアプリなど、動画ツールから情報を得ている方が多いようです。最近では『SHOGUN将軍』の映画を見て、日本に関心を持ったという方も多いです。


― 旅行者を受け入れるにあたって、留意することがあれば教えてください。

比較的受け入れの準備はしやすいと思います。言語の面では、国ごとに母国語がありますが、テレビ番組が英語(現地語字幕)で放映されていることもよくあり、子どもの頃から英語に慣れていて、ネイティブに近いレベルで英語対応ができます。
基本的に旅慣れている方たちですし、移民も多いので、異文化に理解を示す土壌があるように感じます。日本のホテル関係者に聞くと、北欧地域からの旅行者はマナーが良く、接していて気持ちのいい方が多いとよく言われます。食事に関しては、ヴィーガン(完全菜食主義)やベジタリアン(菜食主義者)が多いので、対応できる食事のメニューがあると喜ばれます。

現地関係者とのネットワーク構築に向け奔走中

― ストックホルム事務所開設にあたっては、どのような準備をされましたか。

法人設立のための事前調査や、オフィス選定を行った後、2023年8月に赴任し、ネットワーク作りや市場調査、開所式の準備などを進めてきました。
これまで北欧地域を管轄していたロンドン事務所が長年培ってきた人脈をしっかりと受け継ぐとともに、現地に赴任した私たちが、関係者の皆様と直接お会いしながら地道にネットワークを広げてきました。その際、最も意識していたのは、日本が観光における北欧市場の可能性に大いに注目していることをいかに多くの方に知っていただくかということでした。事務所開設、つまり日本側の北欧市場に対する本気度を示すことが、今後の成長に寄与すると考えていたからです。こうしたコミュニケーションを通じて得られる、より現地目線の生の情報を日本の皆様に発信していければと強く思っています。それが現地に拠点を構えているからこその意義・役割だと思っています。


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3月4日の開所式は、北欧各国から多くの皆様に参加いただき、和太鼓のパフォーマンスなども交えて盛大に会を終えることができました。現地ではこういった日本らしいイベントが珍しいこともあり、「日本へ行きたいという気持ちが高まった」や「北欧市場に価値を見出してもらえたことが嬉しい。より連携していきたい。」という声もいただき、北欧市場の今後の可能性を実感することが出来ました。

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ストックホルム事務所開所式の様子

― 開所後の活動で力を入れていることについて教えてください。

日本の情報を得るための一番身近な組織と思ってもらえるような存在になることを心掛けています。北欧市場は日本の情報がまだまだ限られている現状があり、街中で日本に関する広告を見ることも少なく、初訪日の観光客が多くの割合を占めています。また、現地旅行会社からは担当職員への日本に関する研修をお願いしたいとのリクエストが多く寄せられます。
メディアからは、お遍路や宿坊での宿泊体験、スキーやサイクリング、ハイキングなどの自然アクティビティに関して等さまざまなテーマにおいて、日本への取材のサポートをしてほしいという相談も寄せられています。

訪問先は、ゴールデンルートが中心であるため、[まだ他の人に知られていない日本を知ることが出来る」という特別感を感じていただけるよう、地方の魅力を打ち出していくことも重要なミッションです。

― 市場拡大のためのポイントはどんなことでしょうか。

ポイントとしては、大きく三つあると思っています。一つ目に、北欧で入手できる日本の情報を増やすこと、二つ目に日本側の北欧市場への関心を高めること、そして最後に日本と北欧をつなぐ場を増やすことです。 旅行者から日本に対するさまざまなリクエストが上がっても、現地旅行会社に日本の情報が少ないため十分な提案がされていない状況です。
この課題を解消するため、今年度は両者の関係構築に向けて注力し、フィンランドのヘルシンキとノルウェーのオスロでネットワークイベントを開催します。こういった事業には日本のサプライヤーや自治体の皆様にもぜひご参加いただきたいと思っております。ストックホルム事務所からの発信だけでなく、日本のパートナーが共に日本の魅力を伝えていくことで、より多様で具体的な商品や地域の提案が可能になると考えています。

― 最後に、北欧市場からの誘客を検討しておられる日本の自治体、DMO、サプライヤーの方々に向けてメッセージをお願いします。

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北欧市場は、日本とのネットワークができれば一気に伸びていく「ポテンシャルの高い市場」ですので、今こそ、注目するタイミングです。私たちのもとには、現地の旅行会社から、「日本側のサプライヤーとつながりたいがネットワークがない」というご相談が多数寄せられています。互いに需要があるのにつながっていない今、この市場は大きな可能性を秘めています。
私たちは、北欧市場開拓のため日々奮闘しています。新たな市場の開拓を検討している自治体・DMOの皆様、また今後は、長期的かつサステナブルな視点でインバウンド受入対策を実施していきたいとお考えの皆様にも、ぜひ、北欧市場にご関心をお寄せいただき、私たちと一緒に市場開拓のパイオニアとなっていただけますと大変心強く思います。

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