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欧米豪の訪日客市場3位! カナダのポテンシャルに注目を(JNTOトロント事務所インタビュー)

欧米豪の訪日客市場3位! カナダのポテンシャルに注目を(JNTOトロント事務所インタビュー)

欧米豪の訪日客市場3位! カナダのポテンシャルに注目を(JNTOトロント事務所インタビュー)

カナダ最大の都市、トロントに日本政府観光局(JNTO)の前身である財団法人日本交通公社の事務所が開設されたのは1957年のこと。以来67年間にわたってトロント事務所では両国の人の往来をサポートしてきました。2023年、カナダからの訪日旅行者数は、コロナ前を超え、過去最大の数字を記録し、欧米豪主要市場の中では3番目の規模を誇ります。カナダ市場の特徴と魅力について、トロント事務所 所長 豊田健がお話しします。 (注記)所属事務所・役職は取材当時の情報です。

求められるのは「お客様を創造する」姿勢

― 始めに、カナダ市場の特徴について教えてください。

カナダは広い国土を持つ国ですが、人口は2023年に4000万人を超えたところで、日本の首都圏、あるいはアメリカのカリフォルニア州とほぼ同程度の規模です。現在、カナダは、移民を積極的に受け入れており、G7の中でも人口の伸び率が高いのが特徴で、ひとり当たりのGDPも日本より高い非常に豊かな国です。また、世界的に見ても高い出国率を誇り、2019年は総人口の88.4%にあたる3306万人が出国しました。隣国のアメリカへの渡航者を除いても出国者は1,234万人おり、出国率は33.0%を記録しています。

― カナダ人の旅行には、どのような傾向があるのでしょうか?

旅行のスタイルとしては個人旅行が多く、飛行機もホテルも自分で手配するのが主流です。年配の方や富裕層の方は旅行会社を使う傾向にありますが、その場合でもFITパッケージなどを予約するケースが多いようです。海外旅行の傾向としては、移民が多い国とあって、母国あるいは家族の出身地などを訪ねる旅がとてもポピュラーです。中華系住民が、中国本土、香港、台湾などへの里帰りの際に、途中で日本に立ち寄るケースも見られます。また、カナダは寒冷な地域が多いため、アメリカのフロリダ州やメキシコ、カリブ海諸国などのトロピカルビーチを訪ねる避寒の旅行が多いのも特徴です。

― カナダ市場から見て、旅行先としての日本はどのような位置付けですか?

2018年のカナダ人の海外旅行統計では、国別で日本は12位、アジアでは中国に次ぐ2位でした。西海岸のバンクーバーは日本と比較的距離が近いですが、それ以外の地域からは移動距離がとても長く、また、旅行費用の高さや、言葉の壁も含めて、まだまだ、人気国の上位には食い込めていません。最近は円安という追い風があり、日本の食や日本製品がカナダ人の生活に根付きつつあるというアドバンテージもありますが、先ほどお話しした通り、カナダ人のバカンスは、まだまだカリブ海などでの避寒やヨーロッパへの旅行などが主流ですので、それに代わるものをいかに日本で提供するかを考えていく必要があり、簡単ではないと感じています。なにもしなくても旅行者が日本に来てくれる状況ではありませんので、私は常々「お客様を創造しよう」とスタッフに話しています。

― アメリカ市場の陰に隠れて注目されにくいところがあるのではないでしょうか?

それはまさに、私がカナダに赴任してからずっと感じていることです。カナダ人の訪日旅行者数は2023年に過去最大の42万6000人(推計値)を記録し、欧米豪主要市場では、アメリカ、オーストラリアに次ぐ第3位の市場なのですが、アメリカと同一視されて、個別のセールス対象になりにくいという課題があります。もちろんカナダとアメリカでは市場規模が違いますが、基本的なターゲットや訪日旅行に求めるものはアメリカと似ている部分もあり、取り組みやすい市場だと考えます。

潤沢な航空座席供給によりV字回復を達成

― カナダの主要マーケットはどのエリアでしょうか?

カナダ最大の都市であるトロントを含むオンタリオ州、第二の都市であるモントリオールを含むフランス語圏のケベック州、そして第三の都市であるバンクーバーを含むブリティッシュ・コロンビア州の3州が主要エリアです。その他、夏の間は、日本との直行便(ウエストジェット社)が就航するカルガリーのあるアルバータ州も、マーケットのひとつです。現在、バンクーバーと日本の間は、3社(エアカナダ、日本航空、全日空)が、トロント、モントリオールと日本の間はエアカナダが、直行便を運航しております。

― 2023年5月以降、訪日外国人旅行者数がV字回復しました。要因は何でしょうか。

いわゆる「リベンジトラベル」の需要と円安がベースにありますが、その他の要因として、エアカナダが2023年夏ダイヤでコロナ前より増便したことが考えられます。エアカナダは冬ダイヤでも日本路線に大型機材を投入し(1便当たり400席〜450席)、週21便体制の太い路線を維持しています。さらに、現在は為替の関係やコロナの影響で日本からカナダに行く人がまだ少ないため、航空会社が訪日カナダ人旅行者に積極的に座席を販売していること、カナダから中国への旅行の人気が回復していないことなども、訪日カナダ国人旅行者増加の背景にあると思います。

― カナダ人の訪日旅行の特徴はどのようなものですか?

訪日カナダ人旅行者の約6割は初来日ですので、東京、大阪、京都を結んだゴールデンルートの旅行が主流で、どこか地方をプラスする場合は広島が多いです。我々としては市場を育成し、リピーターを増やすためにも、なるべく地方を紹介し、日本の隠れた魅力を訴求していきたいと考えています。カナダの旅行者は日本の歴史や伝統への興味関心が高く、ハイキングなど自然を楽しむアクティビティーも好みます。カナダの方からは、「京都で寺社巡りをしたあと、近くにハイキングができる場所はないか?」などの質問をよく受けますね。熊野古道も、歴史も自然も感じられる場所として人気を集めています。

SNSで若い世代の旅行需要を喚起

― トロント事務所では顧客創造のため、どのようなターゲットを定め、そこに対してどのようなアプローチをされていますか?

[画像:カナダ旅行博1.JPEG]

Salon International Tourisme Voyages

ターゲットは3つあります。訪日未経験者の30代〜40代の夫婦・パートナー、家族・親族、次に訪日未経験者の20代〜40代、ひとり旅行や友人、そして50代以上の富裕層の夫婦・パートナー、家族・親族です。若い世代は旅行会社の利用率が低いため、20代〜40代のターゲットに対してはBtoC、50代以上のターゲットにはBtoBと分けてプロモーションをしています。BtoCでは、SNSでの投稿、オンライン広告、インフルエンサーやメディアを招請しての情報発信、また、旅行博「SITV(Salon International Tourisme Voyages)、日本をテーマにしたイベント、アニメ系、アウトドア系のイベントなどに出展しています。BtoBの場合は、旅行会社職員の招請、旅行会社との共同広告、業界向けセミナーや商談会、ネットワーキングイベントなどのプロモーション活動をしています。

― BtoCのプロモーションで工夫されている点について教えてください。

SNSの投稿はトロント事務所として、InstagramとXは週に5〜6回、Facebookは週に3〜4回投稿しますが、写真の掲載許可を取る作業が非常に大変です。トロント事務所では、カナダ人スタッフがSNSとウェブサイトを担当しています。彼はターゲットと同じ年代ですので、カナダ人の若い世代になにがウケるか瞬時にわかりますし、日本に住んだ経験があり、日本語も堪能なので日本の慣習や日本人の気持ちも理解できます。そのため画像の選定が的確で、彼がSNSを担当するようになって以降、フォロワー数(Instagram 3万人、X 3270人)も順調に増えています。


― 最後に、カナダからの誘客を検討しておられる全国の自治体・DMO関係者の方々に向けてメッセージをお願いします。

スクリーンショット 2024年02月14日 13.11.49.pngのサムネイル画像

先ほども申し上げた通り、カナダは、アメリカの影に隠れがちですが、欧米豪主要市場で第3位と、一定の規模を有するマーケットです。また、BtoBのしっかりとしたネットワークもありますし、アジア系住民やフランス語を話す住民もおり、すでにアジア各国やフランス市場に取り組んでいる皆様も含めて、誘客しやすい土壌があります。カナダは人口も増え、若い層も多く、間違いなくこれからも伸びていく、ポテンシャルの高いマーケットですので、ぜひ取り組みをご検討ください。

(注記)記事内のデータ・数値は2023年12月時点の情報です

参考サイト

トロント事務所

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