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卸売物価指数の見直しに関する最終案

5月に公表した見直し案に対し頂戴したご意見と、それへの回答

2001年 9月13日
日本銀行調査統計局

日本銀行から

以下には、全文の冒頭部分(はじめに、見直し全体に対するコメント)を掲載しています。全文は、こちら (ron0109a.pdf 125KB) から入手できます。なお、本稿は日本銀行調査月報10月号に掲載する予定です。

はじめに

日本銀行では、本年5月に、卸売物価指数(以下WPI)の見直し案1を公表し、同案についてユーザーの皆様から広くご意見(パブリックコメント)を募集しました。その結果、大学教授、民間エコノミスト、政府等、合計49先の方々から、多くの有益なコメントを頂戴しました。

以下では、寄せられたご意見の概要を紹介するとともに、ご意見に対する日本銀行の考え方と、それらを踏まえて改めて検討した結果得られた見直しの最終案について説明します。日本銀行としては、今後、2002年末の基準改定を目標に、以下でお示しする最終案に沿った形で、見直し作業を進めていきたいと考えています。ご多用中にもかかわらずご意見をお寄せ頂いた皆様には、厚くお礼申し上げます。

  1. 「卸売物価指数の見直し方針——次回基準改定に向けて、ご意見のお願い」(日本銀行調査月報2001年6月号)をご覧下さい。

見直し全体に対するコメント

5月に公表した「卸売物価指数の見直し方針——次回基準改定に向けて、ご意見のお願い」では、大きく分けて、(1)価格調査を取り巻く環境変化への対応、(2)経済・産業構造の変化への対応、(3)調査先の皆様のご負担(報告者負担)への配慮、の3つの観点から、価格調査方法、指数の作成方法を含めた幅広い項目にわたって見直し案を提示しました。

具体的には、従来より基準改定の重点としてきた「採用品目・分類編成の充実」に加え、以下のような見直し案を提示しました。

  1. (1)商品の多様化や個々の商品における価格の多様化(一物多価の進展)に対処するため、調査価格数の積み増しを図る。その際、取引条件等を細かく指定する従来型の価格調査方法では、実勢価格の把握が難しいと判断される一部の商品について、品質一定の条件を損なわない範囲内で「平均価格」を導入する。
  2. (2) 価格変動を逸早く指数に反映するため、出荷後に価格が決まる(価格が後決めされる)との取引が一般的な商品の一部について、「仮価格(暫定的決済価格)」を利用する。
  3. (3)事後的にみた指数精度向上を目指し、定期的に遡及訂正を実施する。
  4. (4)現行指数を補完するため、以下の参考指数を新規に作成する。
    1. (a)ウエイトを毎年更新する連鎖指数:国内WPIについて作成。
    2. (b)消費税を除くベース指数:国内WPI、需要段階別・用途別分類のうち「国内需要財」指数について作成。
  5. (5)報告者負担軽減のため、旬間指数を廃止する。

お寄せ頂いたコメントは、多岐にわたっていますが、「急速に複雑化していく経済の実情を、できる限り物価指数に反映しようという試みとして評価できる」等、全体として、日本銀行の考え方を支持する声が大多数でした。日本銀行としては、今後も、正確・的確な統計の提供に向けて不断の見直し努力を続けるとともに、ユーザーニーズへの対応や報告者負担の軽減を含めた統計作成事務の効率化にも、十分配慮していきたいと考えています。

<具体的なご意見、敬称略、以下同様>

▽ 今回の見直し案の骨格は、急速に複雑化していく経済の実情を、できる限り物価指数に反映しようという試みとして大いに評価できる。統計利用者にとって、連続性も重要な観点ではあるが、連続性に囚われ過ぎて、統計が実態を捉えられないのでは意味がない。(明治学院大学・竹内啓)

▽ 今回の見直し案には、経済活動が複雑化している中で少しでも実勢価格を正確に把握したいという意志が感じられる。用途に応じて、連鎖指数や消費税を除くベースの指数を柔軟に出す姿勢も良い。(J.P.モルガン証券・菅野雅明)

▽ 景気や金融政策を考える上で、WPIが、今回の調査価格の積み増しや平均価格の導入、仮価格の利用によって、需給動向の変化をこれまで以上に敏感にしかも素早く反映して動くようになることは非常に有益である。連鎖指数を含めた様々なバリエーションで物価をみていこうという姿勢も高く評価できる。(三和総合研究所・嶋中雄二)

▽ いずれの見直しも、統計精度、利便性双方の向上につながるものであり、賛成である。(名古屋市立大学・細野薫、学習院大学・奥村洋彦、政策研究大学院大学・大来洋一、ドイチェ証券・水野温氏、野村総合研究所・リチャード・クー、田路健一ほか)

これ以外に、今回のパブリック・コメントに先立ち、既に1999年中にパブリック・コメントを募ったうえで方針を確定させている見直し方針は、以下のとおりです2。なお、この点は、今回はパブリック・コメントの対象ではありませんでしたが、一部の方からは引き続きコメントを頂きました。

  1. (1)国内WPIについて、「需給動向を敏感に反映する取引段階の価格を調査する」という大原則の範囲内で、デフレータとしての機能向上を図るため、生産者段階の価格調査比率を上げる。
  2. (2)指数の名称を「卸売物価指数」から「企業物価指数」に変更する。

WPIの基準改定に向けた見直しの全体像は、1999年中に公表した見直し方針と、今回の見直し方針とを併せたものとなります。

  1. 21999年中に公表した見直し案の詳細は、「卸売物価指数の現状と見直し案について」(日本銀行調査月報1999年4月号)を、それに対して寄せられたご意見の概要とそれを踏まえた対応方針については、「卸売物価指数の見直しに関する日本銀行の今後の取り組み方針」(同1999年11月号)をご覧下さい。

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