このページの本文へ移動

卸売物価指数におけるヘドニック・アプローチ―現状と課題―

2001年12月
物価統計課

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (cwp01j24.pdf 176KB) から入手できます。

要旨

物価指数は、同一の品質(特性)を持つ商品の価格を継続的に調査し、一定のウエイトで集計した、基準時点対比の指数である。現実には同一の品質(特性)を持つ商品を長期間調査することは難しいため、対象商品の入れ替えを行う必要がある。その際には新旧商品の価格変化から品質変化に相当する部分を控除する操作—品質調整—を行う必要がある。ヘドニック・アプローチとは、商品の価格と特性に関する大量のデータから計量的手法を用いて特性ごとの金額換算値を求め、品質調整を行う手法である。現在、卸売物価指数では、パソコンとデジタルカメラ、ビデオカメラの3商品について同アプローチを適用している。商品サイクルが短期化し、技術革新による品質向上が著しいこれらの商品では、オーバーラップ法やコスト評価法などの伝統的品質調整手法の適用が難しく、ヘドニック・アプローチが有効である。

ヘドニック回帰式の推定に際しては、計量経済学的観点からは関数形の選択、多重共線性、パラメータの安定性などの問題が、さらに、実務的な観点からはどのような種類の価格データを利用するかが重要である。物価統計課では、大量の企業間取引価格データの収集が報告者負担の観点から難しいことから、代替的な手段として小売価格データを利用して回帰式を推計している。データをプールする期間を短期に止める、推計式の更新頻度を高くする、などの工夫により、パラメーターの安定性や、小売データを利用することに伴う流通マージンの変動など、推計にバイアスをもたらす要因を極力抑えている。また、関数形については、Box-Cox検定に基づいて、客観的に選択している。物価統計課では、ヘドニック・アプローチの様々な限界を考慮しつつも、技術革新の影響を受けて品質向上が著しいが従来型の品質調整が難しい商品、サービスに対して、新たにヘドニック・アプローチの適用することが可能かどうか、今後も幅広く検討していくこととしている。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /