企業向けサービス価格指数(2010年基準)のFAQ
2015年3月
FAQの構成
物価指数のFAQの構成は、以下の通りとなっています。このページには、「3. 企業向けサービス価格指数(2010年基準)のFAQ」の質問一覧および回答一覧を掲載しています。
- 1. 物価指数全般(2010年基準、2011年基準)のFAQ
- 2. 企業物価指数(2010年基準)のFAQ
- 3. 企業向けサービス価格指数(2010年基準)のFAQ
- 4. 製造業部門別投入・産出物価指数(2011年基準)のFAQ
なお、企業向けサービス価格指数(2010年基準)に関しては、FAQのほかに以下の解説があります。併せてご利用ください。
質問一覧
質問をクリックすると、質問に対する回答が表示されます。
企業向けサービス価格指数の概要
- 3-1. 企業向けサービス価格指数とは、どのような物価指数ですか。
- 3-2. 企業向けサービス価格指数は、どのように利用されていますか。
- 3-3. 企業向けサービス価格指数の公表時期やデータの入手方法、照会先について教えてください。
- 3-4. 企業向けサービス価格指数では、どのような指数が公表されていますか。
- 3-5. 企業向けサービス価格指数を利用する際に、どのような点に気をつければよいですか。
- 3-6. 企業向けサービス価格指数では、連鎖指数を作成・公表していますか。
- 3-7. 企業向けサービス価格指数では、季節調整値を作成・公表していますか。
- 3-8. 消費者物価指数とはどう違うのですか。
企業向けサービス価格指数の作成方法に関するもの
- 3-9. 指数の作成方法について教えてください。
- 3-10. 企業向けサービス価格指数で採用している品目やウエイトは、どのように決めているのですか。
- 3-11. 企業向けサービス価格指数の調査対象サービスは、どのように決めているのですか。
- 3-12. 企業向けサービス価格指数の「調査価格」とは、何ですか。また、どのように設定されているのですか。
- 3-13. 企業から回答が得られない場合や、調査時点で取引・契約がない場合は、どのような扱いをしていますか。
- 3-14. 官庁や業界団体などが作成している統計は利用しないのですか。
- 3-15. 消費税等の間接税は、指数を作成する上でどのように扱われていますか。
- 3-16. 企業向けサービス価格指数の動きを長期的な時系列で眺めたい場合は、どうすればよいですか。
- 3-17. どういう場合に過去の計数の訂正を行っているのですか。また、何を見ればわかりますか。
- 3-18. 調査価格の契約通貨が外貨建てとなっているものについては、企業向けサービス価格指数でどのように扱っているのですか。
- 3-19. 企業向けサービス価格指数における契約通貨別の構成比は、どのようになっていますか。
- 3-20. 価格設定が多様化しているサービスの価格調査方法を教えてください。
- 3-21. オーダーメード・サービスに対して、どのような調査方法が適用されていますか。
- 3-22. 郵便や電話のように企業と家計の両方が利用するサービスはどのように扱われていますか。
- 3-23. 商業サービスや金融仲介サービスが調査対象に含まれていないのはなぜですか。
- 3-24. 「事務所賃貸」の指数の動きは、民間調査機関による事務所の新規募集賃料の動きと異なる場合があるのはなぜですか。
- 3-25. 調査対象サービスを変更する際に、新旧サービスに質的な差がある場合、両者の価格差を、企業向けサービス価格指数ではどのように処理しているのですか。
- 3-26. 企業向けサービス価格指数において、ヘドニック法を使用していますか。
- 3-27. 広告や事務所賃貸など、品質が時間とともに変化するサービスに対する品質調整方法を教えてください。
基準改定、新旧指数の相違に関するもの
- 3-28. 2005年基準企業向けサービス価格指数と、2010年基準企業向けサービス価格指数では、どのような点が異なりますか。
- 3-29. 2010年基準企業向けサービス価格指数から新しく調査対象となったサービス、調査対象でなくなったサービスは何ですか。
- 3-30. 英語名称がCSPI:Corporate Services Price IndexからSPPI:Services Producer Price Indexへ変更されましたが、異なる統計になったのですか。
- 3-31. 企業向けサービス価格指数の2010年基準改定に関してまとめた資料はありますか。
回答一覧
3-1. 企業向けサービス価格指数とは、どのような物価指数ですか。
わが国経済のサービス化が進む中で、企業間における物価の動きを正しく把握するためには、企業物価指数が対象としている財(モノ)の価格だけでなく、「サービス」の価格についてもあわせてみていくことが不可欠です。企業向けサービス価格指数は、こうした問題意識の下で、日本銀行が開発し、1991年1月から公表(データ始期は1985<昭和60>年1月)している、企業間で取引される「サービス」の価格に焦点を当てた物価指数です。
3-2. 企業向けサービス価格指数は、どのように利用されていますか。
企業向けサービス価格指数は、(a)景気動向を測る上での経済指標、(b)デフレーター、(c)企業間で行われる個々の商取引の値決めの際の参考指標などとして、主に以下のように利用されていると考えられます。
(a)景気動向を測る上での経済指標
企業向けサービス価格指数は、企業間で取引されるサービスに関する価格を集約していることから、サービスの需給動向の把握に用いられるほか、景気動向や金融政策を判断する上での経済指標の一つとして重視されています。
(b)デフレーター
個別品目など下位分類指数については、『国民経済計算』(内閣府公表)や『第3次産業活動指数』(経済産業省公表)において、デフレーター(金額計数から価格要因を除去して数量の変動を抽出するための基礎データ)として、広く利用されています。
(c)値決めの際の参考指標
一部の企業では、個々の商取引などにおける値決めの際の参考指標として利用されています。
3-3. 企業向けサービス価格指数の公表時期やデータの入手方法、照会先について教えてください。
項目1-2をご参照ください。
3-4. 企業向けサービス価格指数では、どのような指数が公表されていますか。
2010年基準企業向けサービス価格指数は基本分類指数と参考指数から構成されます。基本分類指数は、国内取引を対象としています。
また、輸出・輸入取引については、参考指数として公表しています。
公表している指数の概要は以下のとおりです。詳細は、「企業向けサービス価格指数(2010年基準)の解説」をご覧ください。
基本分類指数
企業間で取引されるサービスのうち、国内取引を対象とした指数です。
企業向けサービス価格指数の基本分類は、「総平均」、「大類別」、「類別」、「小類別」、「品目」の5段階で構成しています。
分類編成は、『日本標準産業分類』および『産業連関表』などの枠組みを参考に、独自に設定しています。大類別は、『産業連関表』の統合大分類を参考に、「金融・保険」、「不動産」、「運輸・郵便」、「情報通信」、「リース・レンタル」、「広告」、およびいずれの大類別にも属さない品目を分類した「諸サービス」の7大類別から構成しています。類別は、『産業連関表』の統合中分類や統合小分類などを参考に、22類別を設定しています。小類別は、『産業連関表』の基本分類を参考に、57小類別を設定しています。品目は、『産業連関表』の部門別品目別国内生産額表や他の公的統計、業界統計などを参考に、147品目を設定しています。
また、参考系列として、外貨建ての調査価格を円換算せずに集計した「契約通貨ベース」のほか、国際運輸(国境を越えて提供される国際運輸サービス)の影響を控除した「総平均(除く国際運輸)」の指数を作成しています。「契約通貨ベース」の指数は、契約通貨が外貨建ての取引価格を調査している品目、および、その品目の属する小類別、類別、大類別のみを対象に、指数を作成しています(詳細は項目3-18参照)。また、国際運輸の影響を除いた指数として「総平均(除く国際運輸)」、「運輸・郵便(除く国際運輸)」のほか、「国際運輸」の指数を作成しています。
参考指数
(1)基本分類構成項目
統計ユーザーのニーズを考慮し、一部の品目について、基本分類指数を構成する品目の内訳を指数化しています。
具体的には、小類別「リース」に属する9品目のうち、「輸送用機器リース」を除く8品目について、各調査価格のリース料率を指数化し、それを加重平均した指数を作成しています。また、「清掃」、「設備管理」、「警備(除機械警備)」については、それぞれの「民間向け」、「官公庁向け」の指数を作成しています。
(2)輸出サービス価格指数
企業間で取引されるサービスのうち、基本分類指数に含まれない輸出取引を対象とした指数です。具体的には、「外航貨物輸送」、「国際航空貨物輸送」の2項目を作成しています。契約通貨が外貨建ての調査価格を調査している「外航貨物輸送」は、契約通貨ベースの指数も作成しています。
(3)輸入サービス価格指数
企業間で取引されるサービスのうち、基本分類指数に含まれない輸入取引を対象とした指数です。具体的には、「国際航空旅客輸送(北米方面)」、「同(欧州方面)」、「同(アジア方面)」、「外航貨物輸送」、「外航貨物用船料」の5項目を作成しています。「外航貨物輸送」、「外航貨物用船料」は、契約通貨ベースの指数も作成しています。
(4)消費税を除く企業向けサービス価格指数
基本分類指数(契約通貨ベースの指数を除く)について、消費税を除くべースで作成した指数を作成しています(詳細は項目1-7参照)。
3-5. 企業向けサービス価格指数を利用する際に、どのような点に気をつければよいですか。
サービスには、その取引の慣行上、契約期間が半期あるいは通年単位となっているものが少なくなく、企業向けサービス価格指数には、そうした契約の更改が集中する4、10月に価格が大きく変動する(逆に他の月の変動は比較的小さい)サービスが少なからず含まれています。また、帰省・行楽シーズンなどによってサービス料金が異なる「鉄道旅客輸送」、「国際航空旅客輸送」、「国内航空旅客輸送」、「宿泊サービス」、夏・冬のボーナス商戦などをはさんで価格が上下する「店舗賃貸」など、季節性をもつサービスも幾つか存在しています。さらに、企業向けサービス価格指数の中には、平均価格による調査を行っているために、月次単位での価格の変動が大きなもの(「土木建築サービス」など)もあります。
したがって、企業向けサービス価格指数の動向をみるには、ある程度の期間を均して傾向を把握する(例えば、前年同月比やその四半期平均の動きでみていく)ことが有用と考えられます。
3-6. 企業向けサービス価格指数では、連鎖指数を作成・公表していますか。
企業向けサービス価格指数では、連鎖指数(詳細は項目2-10参照)を作成・公表しておりません。これは、ウエイトの基礎データとしている総務省『産業連関表』や総務省・経済産業省『経済センサス-活動調査』が5年ごとの公表となっていることなどから、連鎖指数に用いる年次のウエイトの計算が困難であるためです。
3-7. 企業向けサービス価格指数では、季節調整値を作成・公表していますか。
企業向けサービス価格指数では、現在、季節調整済指数を作成・公表していません。企業向けサービス価格指数の品目や類別には、(a)季節性があるもの、(b)季節ごとに価格が見直されるが、価格変動に規則性がないもの、(c)必ずしも季節ごとに価格が見直されないものが混在しています。このため、季節調整については、ユーザーが品目・類別ごとに自らのニーズを踏まえ行うことが適切と考えているためです。
3-8. 消費者物価指数とはどう違うのですか。
以下のとおり、消費者物価指数とは対象範囲や価格調査段階が異なります。
企業向けサービス価格指数 | 消費者物価指数(うちサービス) | |
---|---|---|
対象範囲 | 企業間で取引されるサービス | 家計が購入するサービス |
価格調査段階 | 生産者(サービスの提供者)段階 | 小売段階 |
価格調査方法 | 品質が一定のサービスの価格を継続的に調査 | |
指数算式 | ラスパイレス算式 |
ただし、家計が購入するサービスであっても、企業が同様に利用するサービス(郵便、電話など)は、企業向けサービス価格指数の対象範囲としています(詳細は項目3-22参照)。
また、価格調査段階について、多くのサービスは「サービス」という特性上、生産者(サービスの提供者)から需要者に直接提供されることが多いため、消費者物価指数(小売段階)と企業向けサービス価格指数(生産者段階)の違いはそれほど大きくはないと考えられます。
3-9. 指数の作成方法について教えてください。
項目1-3をご参照ください。
3-10. 企業向けサービス価格指数で採用している品目やウエイトは、どのように決めているのですか。
採用品目には、原則としてウエイト算定年次(2010年)におけるウエイト対象総取引額に対して一定の比率を占める代表性の高いサービスを選定しています。
企業向けサービス価格指数では、品目を選定する際に2段階の選定手順を採っています。まず、ウエイト算定の基礎資料として利用している総務省『産業連関表』などのデータを元に、品目より1段階上のカテゴリーである「小類別」を選定します。その上で、小類別を構成する個別サービスのうち、業界統計などのより細かいウエイトデータが入手可能で、かつ適切な価格データの継続的収集が可能なものについて品目として採用しています。このように企業向けサービス価格指数では、企業物価指数と異なり、品目選定のための客観的な基準額を設けていません。これは、企業物価指数における経済産業省『工業統計表』や財務省『貿易統計』のような、品目選定に利用可能な統一的で詳細な金額統計が、企業向けサービスには存在しないことによるものです。
具体的な品目の選定基準は以下のとおりです。
- (a)『産業連関表』の基本分類で、基準年(2010年)における企業部門の需要額(中間需要部門+国内総固定資本形成+家計外消費支出)が5,000億円(2010年基準の企業向けサービス価格指数のウエイト対象総取引額の0.4%程度)以上のサービスを小類別として採用する。
- (b)その上で、各小類別を構成する個別サービスにつき、ウエイトデータが入手可能で、かつ適切な価格データの継続的な収集が可能なものを採用品目として選定する。
ただし、(a)の原則に満たないサービスであっても、(1)先行き取引額の増加が見込まれるもの、(2)品目分類編成上のバランス等から必要であるもの、(3)デフレーター機能の強化に資するもの、(4)統計の連続性の観点から継続採用が望まれるものは、柔軟に採用しています。
一方、金融仲介サービスや商業サービスなどは、信頼性のある価格情報を継続的に入手することが困難であるため、対象外としています(詳細は項目3-23参照)。
3-11. 企業向けサービス価格指数の調査対象サービスは、どのように決めているのですか。
企業向けサービス価格指数では、(1)分類編成が依拠する『産業連関表』や業界統計などで定義される品目範囲内にあって、(2)当該品目の価格動向を代表させるのに相応しいサービスを選定しています。実際の作業では、業界統計や調査先企業からのヒアリング情報などを参考にしながら、代表的かつ継続的な取引が見込まれるサービスを選定しています。
また、品目内における調査対象サービスの構成が市場の実勢と一致するよう、サービス種類別取引金額の構成比率を推計し、その構成比率に応じて調査価格数を調整しています。
このほか、調査先の秘匿性確保にも重点を置いています。具体的には、各品目について複数調査先から3調査価格以上を調査し、それらを合算する形で指数を作成することを原則としています(詳細は項目1-4を参照)。
なお、各品目の調査対象サービスの詳細については、「調査対象サービス一覧」をご覧ください。
3-12. 企業向けサービス価格指数では、どのような価格を企業から調査しているのですか。
企業向けサービス価格指数では、現在、約3,500の価格を調査しています。
価格調査にあたっては、代表的なサービスの純粋な価格変化を捕捉するという観点から、原則として、サービス内容だけでなく、取引先や取引条件など価格に影響を及ぼし得る諸条件を含めた品質を特定しています。また、価格調査方法についても定めており、原則、実際の取引価格を調査しています(銘柄指定調査)。ただし、価格設定が多様化しているサービスや、サービス内容の個別性が強いサービス(オーダーメード・サービス)など、品質を固定した実際の取引価格を継続的に調査することが難しい場合は、取引の実態を極力反映するよう、平均価格、モデル価格、労働時間当たり単価(人月単価)などを採用しています。
詳しくは、「企業向けサービス価格指数(2010年基準)の解説」の「7.調査価格」をご参照ください。
また、企業向けサービス価格指数における類別ごとの調査価格の割合については、「調査価格の性質一覧」をご参照ください。
3-13. 企業から回答が得られない場合や、調査時点で取引・契約がない場合は、どのような扱いをしていますか。
項目1-5をご参照ください。
3-14. 官庁や業界団体などが作成している統計は利用しないのですか。
項目1-6をご参照ください。
なお、外部データを採用している品目と外部データ内容については、「外部データ一覧」をご参照ください。
3-15. 消費税等の間接税は、指数を作成する上でどのように扱われていますか。
項目1-7をご参照ください。
3-16. 企業向けサービス価格指数の動きを長期的な時系列で眺めたい場合は、どうすればよいですか。
企業向けサービス価格指数では、新基準指数をベースに過去に遡及した「2010年基準接続指数」を作成しています。
「2010年基準接続指数」については、項目1-12をご参照ください。
接続指数では、過去の基準指数を新基準の分類編成に組み替えた上で接続していますが、各基準において採用品目や品目ウエイト、品質調整方法などが異なるため、利用にあたっては、性格が幾分異なる各基準の指数を機械的に接続したものである点に注意する必要があります。これに加えて、2010年基準指数から対象市場を「国内取引および輸入取引」から「国内取引」のみに変更したことから、輸入比率の高い一部の系列については、ウエイトから輸入取引該当分を控除することで2010年基準指数の対象市場である「国内取引」に組替えて計算しています。2010年基準接続指数が過去基準の指数からどのように組み替えられているかは、「接続指数の組替え表」をご覧ください。
3-17. どういう場合に過去の計数の訂正を行っているのですか。また、何を見ればわかりますか。
項目1-8をご参照ください。
3-18. 調査価格の契約通貨が外貨建てとなっているものについては、企業向けサービス価格指数でどのように扱っているのですか。
企業向けサービス価格指数の作成にあたっては、調査価格の契約通貨が外貨建てのものについては、外貨建て契約の調査価格を銀行の対顧客電信直物相場(月中平均値、仲値)を用いて円価格に換算の上で指数化しています。円価格に換算する際は、当該月に取引・契約が無い場合でも、外貨建ての調査価格を前月と同値とし、その月の為替相場の動きを一律に反映させるかたちで、円建て価格を算出しています。
なお、契約通貨が外貨建ての調査価格を含む品目(「定期船」、「不定期船」、「外航タンカー」、「国際航空貨物輸送」)およびその上位分類指数(小類別指数、類別指数および大類別指数)のほか、参考指数・輸出サービス価格指数の「外航貨物輸送」、同・輸入サービス価格指数「外航貨物輸送」、「外航貨物用船料」については、契約通貨建て価格(円建て契約のものは円建て価格)を使用して指数化した、契約通貨ベースの指数も作成しています。
3-19. 企業向けサービス価格指数における契約通貨別の構成比は、どのようになっていますか。
「契約通貨別構成比」をご参照ください。
3-20. 価格設定が多様化しているサービスの価格調査方法を教えてください。
取引先ごとに様々な値引きを行っているサービスには、品質一定の条件を損なわない範囲で、サービス内容や取引先、取引条件の異なる複数の取引をグルーピングして売上高を集計し、合計販売数量で割り込んで算出する「平均価格」を活用しています。「平均価格」では、少数の調査価格で多数の取引を取り込めるほか、スポット取引が多いなど同一の取引先との取引が継続しない場合でも価格調査が可能となります。
企業向けサービス価格指数では、類別「不動産賃貸」、「航空貨物輸送」、「職業紹介・労働者派遣サービス」や、品目「新聞広告」、「雑誌広告」、「ホテル宿泊サービス」等において、「平均価格」による調査を行っています。
また、利用条件ごとに多様な料金プランを設定しているサービスには、「モデル価格」による調査を行っています。
例えば、「携帯電話・PHS」では、基本使用料、単位時間当たり通話料、無料通話分に様々な組み合わせプランが存在します。また、企業向けサービスにおいては、契約回線数や利用額に応じた割引も存在します。このように複雑な料金体系を持つサービスにおいて効率的に価格調査を行うため、「複数の需要者を想定したモデル価格」を採用しています。これは、価格設定のばらつきが大きい属性(利用条件、需要量など)の異なる複数の需要者を想定し、それぞれの需要者にとっての最安値を、需要者のウエイトで加重平均した価格を調査する方法です。
企業向けサービス価格指数では、「携帯電話・PHS」のほか、「国際航空旅客輸送」、「国内航空旅客輸送」、「有料道路」などにおいて、「複数の需要者を想定したモデル価格」を活用しています。
各品目で採用している価格調査方法の詳細については、「調査対象サービス一覧」をご覧ください。
3-21. オーダーメード・サービスに対して、どのような調査方法が適用されていますか。
需要者のニーズに応じてサービスの内容(品質)が異なるオーダーメード・サービスでは、一度提供されたサービスが繰り返し提供されることはありません。企業向けサービスでは、オーダーメード・サービスに対して、「平均価格」や「モデル価格」、「労働時間当たり単価(人月単価)」、「料率×インフレーター」を活用しています。
(1)平均価格
サービスごとの品質差が比較的小さい場合には、「平均価格」を採用します。また、品質の違いによる価格差が大きい場合でも、各取引の割引率を集計した平均割引率を調査できる場合は、「平均価格」を採用しています。
(2)モデル価格
サービスごとの品質差が大きいサービスのうち、サービス内容を想定して算出した見積価格を入手できる場合は、「サービスを想定したモデル価格」を採用しています。
(3)労働時間当たり単価(人月単価)
サービスごとの品質差が大きいサービスのうち、サービスの品質が労働投入量に比例するとみなせる場合は、サービスの取引金額をそのサービス提供に要する労働投入量で割り込んだ「労働時間当たり単価(人月単価)」を採用しています。
(4)料率×インフレーター
サービスごとの品質差が大きいサービスのうち、名目取引金額に対する料率(従価制料率)の調査が可能であり、対象物件価格に対応する適切な価格指数(インフレーター)が存在する場合は、「料率×インフレーター」を採用しています。
各品目で採用している価格調査方法の詳細については、「調査対象サービス一覧」をご覧ください。
3-22. 郵便や電話のように企業と家計の両方が利用するサービスはどのように扱われていますか。
家計が利用するサービスであっても、企業が同様に利用するサービス(郵便、電話など)は、企業向けサービス価格指数の調査対象に含めます。その際、企業と家計で需要するサービス内容が異なる場合は、企業向けに提供されるサービスの価格を調査しています。
例えば、「国内航空旅客輸送」では、企業が利用するサービス内容や利用条件(例えば、東京−大阪、午前出発、当日に予約・購入、往復利用等)を想定した「モデル価格」を調査しています。
3-23. 商業サービスや金融仲介サービスが調査対象に含まれていないのは何故ですか。
商業サービス(卸売・小売サービス)や金融仲介サービス(帰属利子)は、取引価格を実際に観察できるわけではなく、価格概念が一般的に分かりにくいほか、品質を固定した価格の継続調査が実務的に難しいため、企業向けサービス価格指数では採用を見送っています。
もっとも、商業サービスについては、企業向けサービス価格指数とは切り離したかたちで、一部の卸売サービス(食料・飲料卸売、プラスチック卸売、電子部品・デバイス卸売)の価格指数を試験的に作成しました。ただし、これはあくまでも試験的なものであるため、引き続き、関係する企業や業界団体、経済・統計学者の皆様からのご理解とご協力を得ながら、卸売サービスの価格調査の在り方について、時間をかけて慎重に検討していきたいと考えています。
卸売サービス価格調査については、「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定結果」の「補論2」、「卸売サービス価格調査の開始に関する検討結果 [PDF 1,971KB]」をご参照ください。
3-24. 「事務所賃貸」の指数の動きは、民間調査機関による事務所の新規募集賃料の動きと異なる場合があるのはなぜですか。
企業向けサービス価格指数の「事務所賃貸」は、入居している全てのテナントの成約賃料を取り込んだカバレッジの広い指数です。このため、新規契約のほか、継続契約が多く含まれます。継続契約の事務所賃貸料は、毎月変動するとは限らず、数年にわたって据え置かれた後、段階的に変更されるケースもみられます。したがって、民間調査機関による事務所の新規募集賃料に対して、企業向けサービス価格指数の「事務所賃貸」の指数は、遅行した動きがみられる傾向があります。
3-25. 調査対象サービスを変更する際に、新旧サービスに質的な差がある場合、両者の価格差を、企業向けサービス価格指数ではどのように処理しているのですか。
項目1-10をご参照ください。
3-26. 企業向けサービス価格指数において、ヘドニック法を使用していますか。
企業向けサービス価格指数では、品質調整方法の一つとしてヘドニック法を用いています。2010年基準企業向けサービス価格指数では、品目「電子計算機レンタル」、「通信・サービス業用・事務用機器レンタル」において、レンタルの対象としている「パーソナルコンピュータ」、「テレビ」の機種が変更される際の品質調整に、ヘドニック回帰式を適用しています。
ヘドニック法の詳細については、「ヘドニック法の適用実績」をご参照ください。
3-27. 広告や事務所賃貸など、品質が時間とともに変化するサービスに対する品質調整方法を教えてください。
サービスの中には、内容や取引先、取引条件などを特定した上で価格調査を行っても、品質が時間とともに変化するものがあります。「テレビ広告」、「事務所賃貸」などが代表的な事例です。物価指数を作成するには、品質一定のサービスを継続的に調査することが不可欠であるため、このようなサービスについては、品質の変化に応じた調整が必要です。このため、サービスの品質変化に関する時系列情報が利用可能な場合には、その時系列情報を用いた品質調整を行っています。
「広告」では、広告閲覧者数による品質調整を行っています。広告の品質は広告の効果であり、それは広告閲覧者数に原則として比例するとの考え方に基づき、「テレビ広告(スポット)」(2005年基準より開始)、「新聞広告」(2010年基準より開始)など6品目に適用しています。具体的には、「テレビ広告(スポット)」では「延べ視聴率当たりの広告単価」を、「新聞広告」では「単位閲覧数(掲載段数×販売部数)当たりの広告単価」を調査しています。
また、「事務所賃貸」では、調査対象オフィスビルの経年劣化によって生じる品質低下分を補正する品質調整を、2010年1月指数から行っています。具体的には、「事務所賃貸」各品目を構成する調査価格(調査対象オフィスビル)の築年数分布に応じた品質劣化率を、品目ごとに算出し、指数に反映しています。各品目の品質劣化率については、「『事務所賃貸』各品目における品質劣化率」をご参照ください。
3-28. 2005年基準企業向けサービス価格指数と、2010年基準企業向けサービス価格指数では、どのような点が異なりますか。
2014年5月速報公表時より、企業向けサービス価格指数は、2005年基準から2010年基準へ移行しました。主な変更点は、次のとおりです。
- (1)指数の基準年およびウエイト算定年次の更新(2005年→2010年)
- (2)調査価格・品目分類編成の見直し
採用品目や調査価格構成の見直しに加え(項目3-29参照)、『日本標準産業分類』第12回改定を反映した分類編成の見直しを行いました。 - (3)価格調査方法の見直し
「平均価格」や「モデル価格」の設定方法の見直しのほか、品質が時間とともに変化するサービスに対する品質調整の適用拡大(項目3-27参照)、外部データの活用拡大を行いました。 - (4)基本分類指数の対象市場と英語名称の変更基本分類指数の対象範囲を国内取引のみに変更し、英語名称を変更しました(項目3-30参照)。
- (5)参考指数の新設
「輸入サービス価格指数」を新設したほか、「清掃」、「設備管理」、「警備(除機械警備)」について、「民間向け」、「官公庁向け」の向け先別指数の公表を始めました。
詳細は、「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定の最終案」、「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定結果」をご参照ください。
3-29. 2010年基準企業向けサービス価格指数から新しく調査対象となったサービス、調査対象でなくなったサービスは何ですか。
2010年基準では、新サービスの取り込みにより8品目を新設したほか、統計ユーザーの利便性向上の観点から既存の4品目を8品目に分割しました。具体的には、IT化の進展やアウトソーシング拡大、環境・災害に対する意識の高まりを反映する形で「移動データ通信専用サービス」、「職業紹介サービス」、「環境計量証明」などの新規品目を採用したほか、2005年基準の品目「情報処理サービス」を、クラウドコンピューティング技術を活用した新しいサービスである「ASP(Application Service Provider)」を取り込む形で「情報処理サービス(除ASP)」と「ASP」に分割するなど、既存品目の細分化(分割)を行いました。また、電子マネーによる決済サービスの取り込みを図り「カード加盟店手数料」を「カード・電子マネー加盟店手数料」とするなど、品目の対象範囲を拡充しました。
一方で、取引額が減少している「貸金庫手数料」や、ほぼ全ての調査価格が輸入サービスで構成される「外航貨物用船料」を廃止(「外航貨物用船料」は参考指数・輸入サービス価格指数に移管)しました。
詳細は、「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定の最終案」、「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定結果」をご参照ください。
3-30. 英語名称がCSPI:Corporate Services Price IndexからSPPI:Services Producer Price Indexへ変更されましたが、異なる統計になったのですか。
2010 年基準の企業向けサービス価格指数では、企業段階の物価統計における事実上のグローバル・スタンダード(国際標準)である生産者物価指数(PPI:Producer Price Index)の概念との整合性を確保する観点から、基本分類指数の対象市場を「国内および輸入」から「国内」のみに変更しました。併せて、英語名称をCSPI:Corporate Services Price Index から国際的に一般的であるSPPI:Services Producer Price Index に変更しました。
ただし、今回の対象市場の変更に伴う影響はごく小さく、企業向けサービス価格指数の基本的な性格や役割は従来の指数から変わっていないと考えられます。
詳細は、「企業向けサービス価格指数・2010年基準の最終案」、「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定結果」をご参照ください。
3-31. 企業向けサービス価格指数の2010年基準改定に関してまとめた資料はありますか。
2010年基準改定に関する資料としては、次のようなものがあります。
内容 | 資料 |
---|---|
見直し方針 | 「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定の基本方針」 |
最終案 | 「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定の最終案」 |
改定結果 | 「企業向けサービス価格指数・2010年基準改定結果 ——改定結果の概要と2010年基準指数の動向——」 |