企業向けサービス価格指数(1995年基準)のFAQ
2002年2月
目次
3. 企業向けサービス価格指数(Corporate Service Price Index)
- 3−1. 企業向けサービス価格指数とはどんな物価指数ですか。
- 3−2. 具体的にどのようなサービスが対象になっていますか。
- 3−3. 企業向けサービス価格指数はどのような目的に利用されていますか。
- 3−4. 企業向けサービス価格指数を利用する際に、どんな点に気を付ければよいですか。
- 3−5. 企業向けサービス価格指数にも、卸売物価指数のような国内、輸出、輸入といった取引別の指数があるのですか。
- 3−6. 企業向けサービス価格指数で採用している品目やウエイトはどのように決めているのですか。
- 3−7. 商業サービスや金融仲介サービスが調査対象に含まれていないのは何故ですか。
- 3−8. 企業向けサービス価格指数の調査対象サービスはどのように決めているのですか。
- 3−9. 郵便や電話のように企業と個人の両方が利用するサービスはどのように扱われていますか。
- 3−10. 調査対象サービスを変更する際に、新旧サービスに質的な差がある場合、両者の価格差を、企業向けサービス価格指数上でどのように処理しているのですか。
- 3−11. 調査価格の変更状況等を知りたい場合は、どうすればよいですか。
- 3−12. 規制緩和や技術革新によりサービスの種類や価格の多様化が進んでいますが、こうした影響はどのように捉えているのですか。
- 3−13. 指数を作成するうえで、消費税はどのように扱われていますか。
- 3−14. 調査価格の契約通貨が外貨建となっているものについては、円ベース指数を作成する際にどのような為替相場を用いているのですか。
- 3−15. 企業向けサービス価格指数は、時折、過去の計数が訂正されていますが、どういう場合にリバイスを行っているのですか。何かルールはあるのですか。
- 3−16. 企業向けサービス価格指数には季節性はありますか。
- 3−17. 企業向けサービス価格指数の「国内需給要因」という表現をみましたが、これはどういう概念なのですか。「総平均」とは違った概念なのですか。
- 3−18. 企業向けサービス価格指数は5年毎に基準改定されていますが、企業向けサービス価格指数の動きを長期的な時系列で眺めたい場合にはどうすればよいのですか。
- 3−19. 企業向けサービス価格指数のデータはどこから入手すればよいですか。
- 3−20. 指数の内容についての照会はどこにすればよいですか。
- 3−21. 価格調査から指数公表までの事務の流れについて教えてください。
- 3−22. 公表されるのは基準年を100.0とする指数だけで、実際の価格が公表されないのは何故ですか。
3−1. 企業向けサービス価格指数とはどんな物価指数ですか。
わが国経済のサービス化が進む中で、企業間における物価の動きを正しく把握するためには、卸売物価指数が対象としている物的商品(モノ)の価格だけでなく、サービスの価格についてもあわせてみていくことが不可欠です。企業向けサービス価格指数は、こうした問題意識の下で、日本銀行が開発し、1991年1月から公表(データ始期は1985年1月)している、企業間で取引される「サービス」の価格に焦点を当てた物価指数です。そのウエイト算定に際しては、総務省統計局『産業連関表』の中間取引額(内生部門計)を基礎データとして用いています。
サービス分野における物価統計の作成は、財の分野よりも困難であり、開発に時間がかかります。このため、企業向けサービス価格指数のように、企業間で取引されるサービスの価格を幅広く捉えた物価指数は、海外でもニュージーランドや英国を除いて殆ど例がありません(注)。しかし、世界経済に占めるサービス活動の比重が高まってきている状況の中、米国では個別サービス毎の価格指数の充実を順次図ってきていますし、他の先進諸国においても、サービス分野における物価統計の整備に力を入れてきています。日本銀行としても、内外の学者や統計専門家と意見交換を行いつつ、統計精度のより一層の向上のために今後とも努力を続けていきたいと考えています。
- (注)両国の指数は、四半期ベースです。また、英国の指数は、現在のところ「試算値(experimental)」という扱いに止まっています。
3−2. 具体的にどのようなサービスが対象になっていますか。
企業間で取引される企業向けサービスのうち、「金融・保険」、「不動産」、「運輸」、「情報サービス」、「通信・放送」、「広告」、「リース・レンタル」、「諸サービス」などの価格を調査しています。「諸サービス」には、法務・会計サービスなどの専門サービスや、自動車・機械修理、産業廃棄物処理、労働者派遣サービスなどが含まれています。
なお、「金融」のうち「金融仲介サービス」に当たる部分(金融機関の預金・貸出金利鞘<金融帰属利子>に相当する部分)や「商業サービス」(卸小売業の仲介マージンに相当する部分)は、信頼性のある価格情報を継続的に入手することが困難であるため、対象外としています(詳細は3-7参照)。また、「教育・研究」「公務」なども同様の理由から調査対象から除外しています。
3−3. 企業向けサービス価格指数はどのような目的に利用されていますか。
企業間で取引されるサービス(国内取引+輸入取引)の価格動向を集約した企業向けサービス価格指数の総平均は、サービスの需給動向をみるためのマクロの経済指標の一つとして利用されています。また、個別品目など下位分類の指数については、内閣府経済社会総合研究所が作成している『国民経済計算(GDP統計など)』や、経済産業省が作成している『第3次産業活動指数』などにおける基礎データとしても広く利用されています。
3−4. 企業向けサービス価格指数を利用する際に、どんな点に気を付ければよいですか。
サービスには、その取引の慣行上、契約期間が半期あるいは通年単位となっているものが少なくなく、企業向けサービス価格指数には、そうした契約の更改が集中する4、10月に価格が大きく変動する(逆に他の月の変動は比較的小さい)品目が少なからず含まれています。また、帰省・行楽シーズンなどによってサービス料金が異なる「鉄道旅客」、「国際航空旅客」、「国内航空旅客」や、夏・冬のボーナス商戦などをはさんで価格が上下する「テレビCM」など、季節性をもつサービスも幾つか存在しています。更に、企業向けサービス価格指数の中には、調査価格の性質上、月次単位での価格の振れがかなり大きいもの(「証券関連手数料」、「テレビCM」など)があります。
従って、企業向けサービス価格指数の動向をみるには、ある程度の期間を均して傾向を把握する(例えば、前年同月比やその四半期平均、あるいは3ヶ月前比<1-10参照>の動きでみていく)ことが有用と考えられます。また、「国内におけるサービスの需給動向」に特に関心があるという場合は、総平均から規制料金や海外要因の影響を受け易い品目等を除いたベース(例えば3-17の「国内需給要因」)の動きに注目する方法も考えられます。
3−5. 企業向けサービス価格指数にも、卸売物価指数のような国内、輸出、輸入といった取引別の指数があるのですか。
いいえ。企業向けサービス価格指数では、国内取引と輸入取引を合計した指数のみを作成しています。これは主として以下の理由によるものです。
- (a)企業間サービスにおいては、輸出入を含めた取引全体のうち、国内取引が大半を占めていること(総務省統計局『産業連関表』によると、1995年中におけるサービスの国内取引額に対する同輸出取引額の比率は1.8%、同輸入取引額の比率は1.7%)
- (b)輸出取引は、取引額が小さいうえ、国内でのサービスの需給と直接関連をもたないこと
もっとも、分析上の有用性が高いと思われる一部の輸出サービス(「外洋貨物輸送」、「国際航空貨物輸送」)は、参考指数として別途調査・公表しています。
3−6. 企業向けサービス価格指数で採用している品目やウエイトはどのように決めているのですか。
企業向けサービス価格指数では、卸売物価指数と異なって、品目選定のための客観的基準はありません。これは、卸売物価指数における経済産業省『工業統計表』などのような、品目選定に利用可能な(内訳が細かい)統一的な金額統計が存在しないことによるものです。そこで、企業向けサービス価格指数では、ウエイト算定の基礎資料として利用している総務省統計局『産業連関表』のデータを元に「小類別」という品目より1段階上のカテゴリーをまず選定し、そのうえで、小類別を構成する個別サービスのうち、業界統計などのより細かいウエイトデータが入手可能で、かつ適切な価格データの継続的収集が可能なものを品目として採用するという2段階の選定手順を採っています。
具体的な品目の選定基準は以下のとおりです。
- (a)『産業連関表』の基本分類で、基準年における企業間取引額(内生部門計)が5,000億円(1995<平成7>年基準の企業向けサービス価格指数のウエイト全体の0.5%程度)以上のサービスを小類別として採用する。
- (b)そのうえで、各小類別を構成する個別サービスにつき、ウエイトデータが入手可能で、かつ適切な価格データの継続的な収集が可能なものを採用品目として選定する。
ただし、上記はあくまでも原則であり、(a)の原則に満たないサービスであっても、先行き成長が見込まれる場合や、分類編成上のバランスから重要と思われるもの(注)については、小類別として弾力的に採用し、その下に品目を設定しています。
- (注)例えば、小類別として採用している「国際航空貨物輸送」「国内航空貨物輸送」は、ともに基準年における企業間取引額が5,000億円未満ですが、両者を非採用とすると、大類別「運輸」の内訳が、「陸上貨物輸送」と「海上貨物輸送」の2類別のみとなり、もう一つの輸送手段である「航空貨物輸送」が含まれないことになります。このため、企業向けサービス価格指数では、基準額に満たない小類別「国際航空貨物輸送」「国内航空貨物輸送」をあえて採用し、その上に類別「航空貨物輸送」を設定しています。
3−7. 商業サービスや金融仲介サービスが調査対象に含まれていないのは何故ですか。
他のサービスと同様の方法で価格を継続的に調査することが困難だからです。商業サービスと金融仲介サービスは総務省統計局『産業連関表』のサービス部門の中間取引額(内生部門計)の中で比較的大きなシェアを有しており(商業サービス<商業マージン>が19%、金融仲介サービス<金融帰属利子>が11%、いずれも1995年中)、両者はともに企業が利用するサービスの中でも重要なものといえます。
しかし、ある商品やサービスを物価指数の品目として採用するためには、そのサービスがウエイト面で重要なだけでなく、品質一定を前提とした信頼性のある価格が継続的に調査できることが不可欠の条件です(さもなければ、物価指数全体の精度が維持できなくなります)。この点、商業サービスと金融仲介サービスの価格調査は、次のような難しい点を抱えているため、企業向けサービス価格指数では調査対象外としています。
- (a)商業サービス(金融仲介サービス)の「価格」に相当する「値鞘」(「利鞘」)は、仕入価格(預金金利)と販売価格(貸出金利)の差から計算されるものであり、通常の価格のように単一の数字(明示的な取引価格)として観察することができない。
- (b)調査先に代表的な仕入取引(預金の受入)と代表的な販売取引(貸出)を特定してもらい、両者の価格差を調査する方法も考えられるが、こうした方法は調査先にかなりの報告者負担を強いる(取引対象が多岐にわたるだけに、信頼性のある「価格」を得るには膨大なデータの収集が不可欠)ことになるため、実務的に不可能である。また、仮に特定の取引を選定しても、(1)商業サービスにおいて仕入取引と販売取引の間のタイミング差の影響(在庫評価方法の影響)などをどう調整するか、(2)金融サービスにおいて貸倒れ損失の影響などをどう調整するか、などの問題があり、精度の高い調査を行うことは極めて難しい。
なお、商業マージンや金融機関の利鞘に関する月次の調査はありませんが、財務省『法人企業統計季報』や全国銀行協会『全国銀行財務諸表』を利用すれば、四半期ないし半期ベースで商業マージンや預貸金利鞘を計算することが可能です。ただし、これらの統計は、物価指数のように商品・サービスの品質を一定に保ちながら、その価格の動きを調査したものではないため、(a)前者の場合、全体の売上高・売上原価に占める各産業や商品の割合の変化の影響が含まれますし、(b)後者の場合にも、金利環境の変化による預金・貸出金の期間構成(長期・短期の比率)やマクロ的な信用リスクの変化の影響などが含まれるといった点には、留意が必要です。
3−8. 企業向けサービス価格指数の調査対象サービスはどのように決めているのですか。
卸売物価指数(2-7参照)と同様に、調査先と相談したうえで、当該品目全体の動きを代表するようなサービスを、できるだけ細かく指定しています(具体的な内容は「調査対象サービス一覧」をご覧ください)。
なお、サービスは、商品(モノ)と異なり、地域性、個別性が強く、一物一価が成り立ちにくいという性質があります。そこで、企業向けサービス価格指数では、卸売物価指数に比べ各品目毎に採用する調査価格数を極力拡大することで、品目全体の価格動向を指数に的確に反映できるよう努めています。因みに、2001年12月末時点での調査価格数は2,942であり、1品目当たりの平均は約29となっています。
3−9. 郵便や電話のように企業と個人の両方が利用するサービスはどのように扱われていますか。
個人が利用するサービスであっても、企業が同様に利用している場合(郵便、電話など)は企業向けサービス価格指数の調査対象としています。その際、企業向けと個人向けの価格が異なる場合には企業向けの価格を調査しています。なお、ウエイト算定に際しては、原則として総務省統計局『産業連関表』の中間取引額(内生部門計)を基礎データとして使用することで個人向けのサービスを除いています。
3−10. 調査対象サービスを変更する際に、新旧サービスに質的な差がある場合、両者の価格差を、企業向けサービス価格指数上でどのように処理しているのですか。
企業向けサービス価格指数では、新旧サービスの品質が異なっている場合、新旧サービスの価格差を「品質差に見合う価格変化」部分と「品質差の影響を除いた純粋な価格変化」部分に分解し、後者のみを指数に反映させています。
具体的な品質の調整方法は、卸売物価指数と同様です(注1)。もっとも、サービスは、(a)商品(モノ)に比べて品質を明確に定義することが難しいこと、(b)品質変化部分をコスト面から把握することが難しい場合が少なくないこと等から、こうした調整も商品(モノ)に比べると、より難しい面があることは否定できません。こうした状況は諸外国においても同様であり、ここ数年、より精度の高い品質調整に向けた議論が国際的にも高まってきています(サービスの品質調整の問題については、「物価指数の品質調整を巡って−卸売物価指数、企業向けサービス価格指数における品質調整の現状と課題−」をご覧ください(注2))。日本銀行としては、今後もこうした議論に積極的に参画しながら、サービスの品質調整方法の研究に取り組んでいきたいと考えています。
- (注1)各種品質調整手法の詳細は2-9をご覧ください。ただし、卸売物価指数で使用している「ヘドニック法」は現在のところ企業向けサービス価格指数では使用していません)。
- (注2)また、個人研究としては Ugai " Quality Adjustment of Service Prices " があります。
なお、各種品質調整法の適用実績については、「企業向けサービス価格指数における調査価格の変更実績」をご覧ください。
3−11. 調査価格の変更状況等を知りたい場合は、どうすればよいですか。
卸売物価指数と同様に、調査対象サービスの内容が世代交代等により変化した場合には、遅滞なく調査価格を変更することとしており、その実績(調査価格の変更件数や主な品目名)についても、「企業向けサービス価格指数における調査価格の変更実績」の形で、四半期毎に公表しています。また、その際に、どういった品質調整法を適用したかについても、同資料の中で公表しています。因みに、企業向けサービス価格指数(2001年12月の調査価格数2,942)では、2001年中に延べ208回、調査価格を変更しており、そのうち直接比較法を全体の約2割に、コスト評価法を約15%に、オーバーラップ法を約8%に適用しています(各種品質調整法の概要については2−9をご覧ください)。なお、卸売物価指数に比べ、コスト評価法の比率が小さくなっていますが、これは、3−10でみた「サービスは、商品に比べて品質を明確に定義することが難しい、あるいは、品質変化をコスト面から把握することが難しい場合が少なくない」といった特徴によるものです。
さらに、2001年には、企業向けサービス価格指数において、こうした品質調整を行った結果として指数がどの程度変化したのかをはじめて試算しました(ご関心のある方は、「物価指数の品質調整を巡って—卸売物価指数、企業向けサービス価格指数における品質調整の現状と課題—」をご参照ください)。2002年からは、毎年、この品質調整効果を計算・公表していく予定です。
3−12. 規制緩和や技術革新によりサービスの種類や価格の多様化が進んでいますが、こうした影響はどのように捉えているのですか。
日本銀行では、企業向けサービス価格指数に限らず、その他の物価指数の作成においても、価格調査に当たって、まず調査対象となる「代表的サービス(商品)」やその取引条件(取引の相手先、取引数量等)を特定した上で、実際の取引価格を調査することを原則としています。
しかし、サービスは、もともと商品(モノ)に比べて地域性、個別性が強いことに加え、ここ数年の規制緩和や技術革新を受けて、その種類や価格設定方法などが急速に多様化していることもあって、分野によっては、上記の原則では価格動向を的確に捉え切れないケースが生じてきています。例えば、(a)取引案件ごとにサービスの内容が多様化しており、取引の相手先等を細かく指定すると、その条件に合う取引が非常に限られてしまうケース、(b)各種の割引などが広範化し、「代表的サービス(代表的な割引形態)」を予め決めることが難しいケースなどがあります。
このため、企業向けサービス価格指数の一部の品目においては、実勢価格を把握するための次善的対応として、品質一定の条件が担保できる範囲内で「平均価格」を調査している場合があります。例えば、「自動車修理」の場合、対象車種や作業内容、相手先等は様々であり、全ての条件が等しい価格を継続的に調査することは非常に困難です。このため、企業向けサービス価格指数では、価格との関係が強いと思われる「対象車種と作業内容」を固定したうえで、その月の修理案件全体の平均値を調査している場合があります。
また、通信の分野では、割引料金制度が急速に普及かつ多様化してきているため、こうした影響を捉えるべく、1995(平成7)年基準指数では、定価部分(X円)と割引情報(Y%)を別々に入手し、これを合算したもの[(1-Y/100)X円]を調査価格としています(具体的には、「国内電話」、「国際電話」、「携帯電話」などでこうした方法をとっています)。
なお、割引の場合も、「代表的な割引率」が予め特定できるケースと、できないケースがあり、後者の場合は、「平均的な割引率」を採用しています。しかし、これらの多くは、調査先の集計の関係上、当該月の指数公表後にしか判明しません。このため、こうしたケースについては、定価部分と前期の割引情報を用いて指数を一旦作成・公表し、当該時期の実績値が集まった段階で、毎年4・9月の3・9月指数公表時に実施している定期的遡及訂正のタイミングで、過去に遡って指数を訂正することとしています。詳しくは、3-15をご覧ください。
3−13. 指数を作成するうえで、消費税はどのように扱われていますか。
企業向けサービス価格指数は、消費税を含むベースで作成されています。より正確に言うと、消費税を含まないベースで調査した価格に機械的に消費税率を乗じている場合と、消費税を含むベースの価格を直接調査している場合があります(最近では、前者のケースが多くなっています)。なお、国内卸売物価指数の場合(酒税、たばこ税等を含む)とは異なり、サービスには個別間接税は課されていません。
3−14. 調査価格の契約通貨が外貨建となっているものについては、円ベース指数を作成する際にどのような為替相場を用いているのですか。
「定期航路」、「不定期航路」、「外洋タンカー」、「国際航空貨物輸送」の4品目と基本分類非構成項目のうちの「外洋貨物輸送」(参考指数)の中には、外貨建価格を調査しているものがあります。それを円ベースに換算する際には、各契約通貨ごとのその月における銀行の対顧客電信直物相場(月間平均、輸出・国内取引=円の買相場、輸入取引=円の売相場)を使用しています。
なお、1990(平成2)年基準指数までは、ある月に契約が無かった場合、契約通貨建価格(指数)だけでなく、円換算に用いる為替相場も前月比横這い(従って円換算価格<指数>も横這い)としてきましたが、1995(平成7)年基準指数からは、契約の有無にかかわらず、当月の為替相場の動きを一律に反映するかたちで、円換算を行っています。
3−15. 企業向けサービス価格指数は、時折、過去の計数が訂正されていますが、どういう場合にリバイスを行っているのですか。何かルールはあるのですか。
企業向けサービス価格指数では、年2回、4・10月の3・9月指数公表時に、遡及訂正を実施しています。これは、指数精度をより高めるために2001年10月から新たに開始したもので、原則として直近1年分を対象に実施することとしています。遡及訂正の対象となるのは、以下のようなケースです。詳細については、「卸売物価指数の見直しに関する最終案」をご覧ください。
(a)指数公表後に計数に誤りが判明した場合、
(b)調査先からの価格報告がその月の指数作成期限に間に合わなかった場合、
(c)指数公表後に割引を含めた実勢価格等、より適切な計数が判明した場合(注1)、
(d)当該年度等の価格が後決めされる場合(注2)。
- (注1)通信(国内電話、ISDN等の6品目)で同方式を採用しています。なお、このうちの一部(国内電話、ISDN、国内専用回線の3品目)については、データ入手時期の関係で、10月の遡及訂正時に、例外的に1年を超えて(前年度4月まで遡って)訂正を実施します。
- (注2)年度契約等の価格交渉が難航し、正式価格の決着が契約期間入り後に後ずれするケースで、自動車・機械修理、専門サービス(公認会計士サービス)等で多くみられます。専門サービスの一部(公認会計士サービス)では、契約決着時期の関係で、例外的に1年を超えて訂正を行う場合があります。
ただし、上記(a)(b)のうち、「影響度が大きいもの」(それにより総平均指数が変化する場合か、それに準ずる場合)については、より迅速な対応が望ましいと思われるため、上記とは別に、要訂正の事実が判明した段階で「速やかに」訂正を実施することとしています。
なお、これ以外にも、5年に一度の基準改定の際には、全ての指数が過去に遡ってリバイスされますのでご注意ください。
3−16. 企業向けサービス価格指数には季節性はありますか。
企業向けサービス価格指数については、統計としての季節調整は行っていませんが、3-4でも触れたとおり、その内訳をみると、以下のとおり季節によって指数の動きが異なる品目、類別等が含まれています。
まず第1に、サービスについては、契約期間が半期あるいは通年単位となっているものが少なくないのですが、企業向けサービス価格指数の中にも契約の更改が集中する4、10月に大きく動く傾向がある品目が少なからず含まれています。これらの品目については、季節的に動くといっても、動く方向自体には規則性がなく、「○しろまる月に上がり易く、△しろさんかく月に下がり易い」といった通常の季節性とは異なる点に注意が必要です。
第2に、品目数からみれば僅かですが、「テレビCM」のように比較的はっきりした季節変動を示すものも含まれています。
このため、季節的な影響を均す意味で、前年比を利用することが有効であるほか、特に後者の様な品目やそれを含む類別について、毎月の内訳の変化をより詳しく分析したい等の場合には、必要に応じて、利用者ご自身で季節調整を行って頂くことが有用と考えられます。
一例を挙げると、日本銀行では、企業向けサービス価格指数を毎月の景気判断材料の一つとして利用する際、「総平均」から規制料金や海外要因の影響を受け易い品目等を除いたベース(「国内需給要因」、3-17参照)を作成していますが、その際には、「店舗」、「普通倉庫」、「テレビCM」の3品目についてX-12-ARIMAを用いた季節調整を実施しています(同計数は、毎月公表している「金融経済月報」に掲載しているほか、本指数の記者発表資料にも、参考として掲載しています)。ただし、季節調整を毎月かけ直している(これを季節調整替えと言います)関係上、これらの計数は、しばしば過去に遡って訂正されることがありますのでご注意ください。
なお、季節調整のプログラム(X-12-ARIMA)は、米国商務省センサス局(外部サイトへのリンク)のホームページから入手することができます。
3−17. 企業向けサービス価格指数の「国内需給要因」という表現をみましたが、これはどういう概念なのですか。「総平均」とは違った概念なのですか。
企業向けサービス価格指数(総平均ベース、1995<平成7>年基準)は、合計で102品目から構成されていますが、この中には、(a)規制料金となっている品目、(b)海外要因に影響され易い品目、(c)単月の振れが大きく、短期的な需給動向を反映しているとは必ずしも言い難い品目、も存在しています。
したがって、「企業が直面しているサービスの価格全体の動き」のなかで、「国内におけるサービスの需給と価格との関係」に特に注目したいという場合には、「総平均」から「月々の価格の動きが、主としてサービスの国内需給の変化と密接に関係している」と思われる品目だけを取り出してみる方法が有用と考えられます。
こうした観点から、日本銀行では、「総平均」から上記(a)〜(c)の影響が大きいと思われるサービス(具体的には、(a)として「自動車保険<自賠責>」、「鉄道旅客」、「バス」、「タクシー」、「国内航空旅客」、「有料道路」、「郵便」、「下水道」、(b)として「外洋貨物輸送」、「国際航空貨物」、「国際航空旅客」、(c)として「証券関連手数料」)を除いたものを「国内需給要因」の指数と位置づけ、毎月の景気判断材料の一つとして利用しています。また、毎月公表している「金融経済月報」もこのベースで記述しています(本指数の記者発表資料にも参考として計数を掲載しています)。
もっとも、こうした分類は、あくまで「その要因により動くことが多い」といった大まかな切り分けであり、それ以外の要因で価格が動くこともあります。また、時間の経過とともに、主たる要因((a)〜(c)に該当する品目)が変わっていく可能性がある点にも注意が必要です。
3−18. 企業向けサービス価格指数は5年毎に基準改定されていますが、企業向けサービス価格指数の動きを長期的な時系列で眺めたい場合にはどうすればよいのですか。
企業向けサービス価格指数では、現行基準(1995<平成7>年基準)指数のベースで、過去に遡って計算した指数(1995<平成7>年基準接続指数)を作成しています。具体的には、「類別」以上の指数系列について1985年1月まで遡及して作成しています。ただし、同指数は、各基準年毎の指数を長期にわたって繋いだものであるため、5年毎の基準改定によって、(a)採用品目やウエイトが見直されていること、(b)基準年の変更により個々の指数レベルが一旦基準年=100.0に戻るため、品目指数の変化率が変らなくても、総平均等の上位分類指数へ及ぼす影響度が変わっていること(2-26参照)から、厳密には、基準年が切り替わる時点で指数の性格が変化している点にご注意ください。
なお、「小類別」および「品目」については接続指数を作成・公表しておりませんので、ユーザーの皆様ご自身で接続計算を行って頂く必要があります。具体的な計算式は、次のとおりです。
- 1995年基準接続指数
3−19. 企業向けサービス価格指数のデータはどこから入手すればよいですか。
毎月の記者発表資料は、日本銀行ホームページの「統計・データコーナーで、公表と同時に閲覧できます。なお、公表日程については、同「公表日程」コーナーをご参照ください。
また、「統計・データ」の中の「時系列データ」コーナーをご利用頂ければ、品目以上の殆どのデータを電子ベースで入手することができます。このほか、毎月央に発刊される『物価指数月報』など、インターネット以外の入手方法もあります。なお、最新データの公表時間などについては、2-19および2-20をご覧ください。
3−20. 指数の内容についての照会はどこにすればよいですか。
日本銀行が作成している物価指数に関するお問い合わせは、下記のいずれかにお願いします。なお、最新データの公表時間などについては、2-19および2-20をご覧ください。
調査統計局物価統計課
Tel : 03-3279-1111(内線 4060)
情報サービス局統計照会窓口
Tel : 03-3279-1111
3−21. 価格調査から指数公表までの事務の流れについて教えてください。
企業向けサービス価格指数の価格調査は、統計法8条に基づき、総務大臣に届出を行ったうえで実施している「届出統計調査」の1つであり、書面により行っています。具体的には、毎月下旬に所定の(価格調査表 [PDF 14KB])を価格調査先に送付し、予め特定されたサービスの月中の代表的な取引価格を記入して頂いたうえで、翌月央に回収しています。その際、価格調査先に対しては、その月に契約が行われた、主要取引先への販売価格をご報告頂くよう依頼しています。回収された調査表(調査価格)は、調査統計局物価統計課の約20名の担当者によって精査されたうえで集計システムに入力され、企業向けサービス価格指数が作成されます。作成された指数は、翌営業日の午前8時50分に対外公表することとしています。
なお、物価統計課では、回収された調査表(調査価格)や対外公表前の集計値等の機密情報を厳格に管理するため、課員以外の作業エリアへの立入りを禁じています。また、課員であっても業務上の必要がある者以外は、当該情報にアクセスできない扱いとしています。
3−22. 公表されるのは基準年を100.0とする指数だけで、実際の価格が公表されないのは何故ですか。
調査にご協力頂いている企業のプライバシーを保護するためです。詳細は2-22をご覧ください。