卸売物価指数(1995年基準)の概要
1999年12月
日本銀行調査統計局
1. 調査対象
- 企業間で取引される商品の取引価格
- 調査先数(1999年8月末) 国内卸売物価指数:1,340、輸出物価指数:386、輸入物価指数:485、3指数合計:2,211
- 調査価格数(1999年8月末) 国内卸売物価指数:3,367、輸出物価指数:606、輸入物価指数:837、3指数合計:4,810
2. 統計内容
現行指数の基準年およびウエイト算定年次
1995年
指数体系
国内卸売物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の3指数とこれらを合成した総合卸売物価指数で構成されています。
国内卸売物価指数は消費税を含むベースで作成。一方、水際段階で価格調査を行う輸出・輸入物価指数は消費税を含まないベースで作成。
分類編成およびウエイト
分類編成
採用品目を商品の属性毎にグルーピングした基本分類と、特定の利用目的に資するため、基本分類の品目・ウエイトを組み替えて作成した特殊分類が存在します。
(1) 基本分類
- i)国内卸売物価指数
総務庁「日本標準産業分類」等を参考に、「大類別」、「類別」、「小類別」、「商品群」、「品目」の5段階で構成されています。 - ii)輸出・輸入物価指数
大蔵省「外国貿易概況」を参考に、「類別」、「小類別」、「商品群」、「品目」の4段階で構成されています。 - iii)総合卸売物価指数
原則として国内卸売物価指数と同一です。ただし、「類別」の内訳分類は「国内品」、「輸出品」、「輸入品」の3区分にとどまっています。
(2)特殊分類
価格波及プロセスの把握等価格動向の多面的分析に資するため、経済の循環過程における需要の段階や用途に着目して分類したものです。具体的には、需要段階別の分類項目を設け、その内訳として用途別の分類項目を設定しています。
- i)需要段階別分類
「国内需要財(国内品+輸入品)」と「輸出品」とに大別し、更に、前者については「素原材料」、「中間財」、「最終財」に分類しています。 - ii)用途別分類
上記需要段階別分類を、当該品目がいかなる用途に使用されるかとの観点から細分化しています(例えば、「素原材料」は、「加工用素原材料」、「建設用材料」、「燃料」、「その他素原材料」に分類)。
ウエイトデータ
- i)国内卸売物価指数
通産省「工業統計表 品目編」の生産者出荷額から大蔵省「日本貿易月表」の輸出額を差し引いた国内出荷額等を使用しています。 - ii)輸出・輸入物価指数
大蔵省「日本貿易月表」の輸出入額等を使用しています。
なお、総合卸売物価指数は、国内卸売物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の3指数を加重平均して作成しています。
採用品目の選定基準
原則として、以下の基準により選定しています。
- i)国内卸売物価指数
基準年において「ウエイト対象総取引額」(国内市場向け国内生産品の生産者出荷額)の1万分の1以上の取引シェアを持つ商品。 - ii)輸出・輸入物価指数
基準年において「ウエイト対象総取引額」(輸出及び輸入額)の1万分の5以上の取引シェアを持つ商品。
調査価格
- 国内品、輸出・輸入品とも、毎月上、中、下旬における代表的な価格を、翌月初に書面(所定の調査表)により調査しています(統計法上の届出統計調査)。
- 品目毎に代表的な商品を特定し、取引条件、調査先等を一定とした実際の取引価格(リベート等で値引きが行われている場合は原則としてこれを調整した価格)を調査しています。
- 原則として、契約成立時の価格を調査しています。
- 輸出・輸入品のうち、調査価格が外貨建てのものについては、外貨建価格を調査しており、円ベース指数の作成にあたっては、銀行の対顧客電信直物相場(旬間平均、輸出=円の買相場、輸入=円の売相場)によって、円価格に換算の上、指数化しています。
- 価格の調査ステージは以下の通りです。
- i)国内卸売物価指数
商品の流通段階のうち企業間の取引が集中し、各商品の需給関係が最も集約的に投影される段階の価格を調査しています。 - ii)輸出・輸入物価指数
いわゆる水際段階の価格(原則として輸出FOB建、輸入CIF建)を調査しています。
指数算式
ラスパイレス指数算式を採用。
- ラスパイレス指数算式
なお、国内卸売物価について、調査価格から商品群までの集計レベルにおいて幾何平均法を採用(小類別以上についてはラスパイレス算式を採用)した指数を、参考指数として公表しています。
- 幾何平均指数算式
3. 利用上の留意事項等
利用上の留意事項
- 総合卸売物価指数は、国内卸売物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の各指数を加重平均していますが、通常の経済分析では3者を統合する必要性は乏しく、むしろ分析ニーズに応じて、国内、輸出、輸入を組み合わせてみていくことが有益です。
例えば、製造業の生産活動や収益との関連では、国内卸売物価指数と輸出物価指数の組み合わせを、また消費者物価指数への価格波及との関連では、国内卸売物価指数と輸入物価指数の組み合わせが有益です。
総合卸売物価指数は、過去との連続性(1975年基準指数までは現在の総合卸売物価指数一本の体系で、国内卸売物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数を別々に作成せず)への配慮から、3指数の加重平均という形で作成・公表していますので、分析道具としての有用性は非常に限られています。
- 卸売物価指数では、原材料段階、中間製品段階、最終製品段階といった各生産工程の商品を網羅的に調査しているため、原油等の原材料が値上がりした場合、それが川下の製品に転嫁されていく過程で、価格上昇が各段階で繰り返しカウントされる「重複計算」と呼ばれる統計的なクセが存在します。このため、消費者物価指数やGDPデフレーター等の「重複計算」のクセを持たない物価指標と、卸売物価指数の「総平均」を単純に比較することは出来ません。
上記利用目的に対しては、需要段階別・用途別指数を利用することが適当です。
- 旬間指数は、月中変動の激しい一部の調査価格(主に鉄鋼、化学、非鉄金属等)について、上旬分と中旬分の価格を電話調査の上、他の調査価格を横這いと仮定した指数を作成しているものです。なお、2000年2月上旬分指数からは、実際に価格調査を行う品目が属する類別のみを公表する方式に変更する予定です。詳細は、「卸売物価・旬間指数の公表方法変更のお知らせ」をご参照下さい。
指数の詳細等
- 本指数の詳細については卸売物価指数(1995年基準)の解説、および関連資料をご参照下さい。
- 5年に1度基準改定を実施しています(直近は、1997年12月<1995年基準への移行>)。詳細は、「卸売物価指数の基準改定(1995年<平成7年>基準への移行)」をご参照下さい。
- 卸売物価指数は、次回2000年基準への改定時に、名称変更を含む大幅な見直しを実施する予定です。詳細については、「卸売物価指数の現状と見直し案について —ご意見・ご提案のお願い」及び「卸売物価指数の見直しに関する日本銀行の今後の取り組み方針−見直し案に対し頂戴したご意見と、それへの回答−」をご参照下さい。
4. 関連統計
企業向けサービス価格指数
製造業部門別投入・産出物価指数