企業物価指数(2010年基準)の概要
2016年12月
日本銀行調査統計局
作成部署、作成周期、公表時期等
- 作成部署
- 調査統計局物価統計課
- 作成周期
- 月次
- 公表時期
- 速報値…原則として、翌月の第8営業日。ただし、定期遡及訂正月(4、10月)は第9営業日1。
確報値…翌月分の速報公表日。- 計数の遡及訂正を年2回(4、10月:3、9月速報公表時)、定期的に実施(対象は原則として、過去1年半分)。
- 公表方法
- インターネット・ホームページ、日本銀行本店情報ルーム(月〜金、8:50〜17:00)
- 統計書
- 「物価指数年報」「金融経済統計月報」「日本銀行統計」
- データ始期
- 統計作成開始時期… 1887年1月
2010年基準接続指数のデータ始期…1960年1月(類別以上ないし、それに準ずる上位の指数系列)、1980年1月(品目指数)
戦前基準指数(基準時1934〜36年=1)のデータ始期…1900年10月
1.調査対象
- 企業間で取引される財の価格
- 調査価格数(2012年4月時点)国内企業物価指数:5,977、輸出物価指数:1,277、輸入物価指数:1,538
企業物価指数は、国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の3つの基本分類指数の総称。このうち、国内企業物価指数は、グローバル・スタンダードである「生産者物価指数」に概ね相当する。
2.統計内容
(1)概要、目的・機能
企業物価指数の主な目的は、企業間で取引される財に関する価格の集約を通じて、財の需給動向を把握し、景気動向ひいては金融政策を判断するための材料を提供することにある。また、名目生産額などの金額計数変動から価格変動に起因する部分を取り除いて実質値を算出する際のデフレーターのほか、企業間での個々の商取引における値決めの参考指標としての機能も有している。
(2)指数体系、分類編成、ウエイト
基本分類指数は、『日本標準産業分類』等に依拠しつつ、一部、財の属性に応じ、採用品目を分類したもので、国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数から構成される。このほかに、統計の連続性やユーザーの利便性、分析ニーズを考慮して、基本分類指数を組み替えたり、加工作成したりして作成した参考指数がある。
基本分類指数
国内企業物価指数
国内で生産した国内需要家向けの財(国内市場を経由して最終的に輸出するものを除く)を対象とし、原則、生産者段階における出荷時点の価格(生産者価格)を調査している。2010年基準は、5大類別と23類別で構成。指数は、消費税を含むベースで作成している。参考系列として、夏季電力料金調整後の指数を作成している。
ウエイト算定に際しては、原則として、基準年(2010年)における経済産業省『工業統計調査』(品目編)の製造品出荷額から、財務省『貿易統計』の輸出額を差し引いた国内向け出荷額を用い、上記に依れない場合(非工業製品など)は、他の官庁・業界統計などを適宜、使用している。
輸出・輸入物価指数
輸出物価指数は輸出品の通関段階における船積み時点の価格を、輸入物価指数は輸入品の通関段階における荷降ろし時点の価格を調査しており、円ベース、契約通貨ベースの双方の指数を作成。2010年基準は、輸出物価指数7類別、輸入物価指数10類別で構成。
ウエイト算定に際しては、基準年(2010年)における財務省『貿易統計』の輸出・輸入額を使用している。
参考指数
需要段階別・用途別指数
基本分類指数を商品の需要段階や用途に着目した分類に組み替えて集計したもの。価格波及プロセスの把握など、物価動向の多面的な分析に利用される。消費税を含まないベースで作成している。参考系列として、財別分類、および夏季電力料金調整後の指数を作成している。
連鎖方式による国内企業物価指数
国内企業物価指数を対象に、連鎖基準ラスパイレス指数算式で計算したもの。ウエイトを毎年更新し、1年ごと(毎年12月)に指数水準を100にリセットした指数を、各系列の開始年以降、掛け合わせて作成している。指数は、消費税を含むベースで作成している。参考系列として、夏季電力料金調整後の指数を作成している。
消費税を除く国内企業物価指数
国内企業物価指数について、消費税を除いたベースで作成したもの。
戦前基準指数
長期の時系列データを用い分析するユーザー・ニーズを考慮し、戦前基準指数の分類編成に組み替えた指数を接続したもの。
普通乗用車(北米向け、除北米向け)
輸出物価指数の品目「普通乗用車」について、北米向けと北米以外向けに分割した地域別指数を作成している。円ベース、契約通貨ベース双方の指数を作成。
(3)指数の基準時およびウエイト算定年次
指数の基準時およびウエイト算定年次は2010年。
(4)採用品目
品目の採用基準
国内企業物価指数 | 基準年(2010年)における「ウエイト対象総取引額」(国内企業物価指数の対象とする国内で生産した国内需要家向けの財の出荷総額)の1万分の1(214億円)以上の取引シェアを有していること。 |
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輸出・輸入物価指数 | 基準年(2010年)における「ウエイト対象総取引額」(輸出・輸入物価指数の対象とする財の輸出総額・輸入総額)の1万分の5(輸出:301億円、輸入:285億円)以上の取引シェアを有していること。 |
採用品目数
国内企業物価指数で822品目、輸出物価指数で210品目、輸入物価指数で254品目を採用。
(5)調査価格
調査価格とは、継続的に商品の価格を調査するに当たって、調査内容を定めた企業物価指数の調査単位である。調査価格の設定に際しては、(1)商品の代表性、(2)純粋な価格変化の捕捉、の2点を重視している。このため、商品内容(素材、性能、規格など)のほか、取引条件(受渡し場所など)や取引先(販売先)等についても、特定することが望ましい。
調査段階・時点
国内企業物価指数では、原則、生産者段階における出荷時点の価格(生産者価格)を調査している。国内企業物価指数における生産者段階の比率は、ウエイトベースで9割を超えている(2012年4月時点)。また、輸出物価指数では、原則として通関段階における船積み時点の価格(FOB建て)を、輸入物価指数では、同じく通関段階における荷降ろし時点の価格(CIF建て)を、各々調査している。
価格調査方法
原則として、毎月の代表的な価格を翌月初に書面で調査。円ベース指数の作成に当たり、契約通貨が外貨建ての調査価格は、調査時点における銀行の対顧客電信直物相場(月中平均、仲値)を用い、円価格に換算のうえ、指数化。
欠測価格の取扱い
統計公表までに報告がない場合や、成約がない場合等の「欠測価格」は、原則として、前月から不変(横這い)として扱う。契約通貨が外貨建ての調査価格では、円価格の換算に当たり、欠測価格にも当月の為替相場を反映させる。
調査価格の種類
調査価格では、原則、調査対象商品の銘柄や、取引条件、取引先など、品質を固定した上で、実際の取引価格を調査している(銘柄指定調査)。一方、個別性の強さなどから品質を固定した価格の継続調査が難しい場合は、品質の固定条件を一部緩め、商品グループ(似通った商品や、異なる取引条件・取引先などを括ったグループ)を対象とした平均価格・値引率調査や利益率調査などを採用している。また、いずれの価格調査方法にも依れない場合は建値(仕切価格、料金表価格など)調査を採用している。
仮価格の利用
契約期間が四半期や半期など複数月にわたり、かつ当該期間中の取引価格が契約期間に入った後(ないしは契約期間終了後)に決定される「価格後決め商品」については、「仮価格(価格が正式に決定するまでの間、実際の取引に使用される暫定的な決済価格)」が入手できる場合は、取引価格が決定するまでの間、これを利用して指数を作成し、定期的な遡及訂正時に決着価格ベースの指数に置き換えている。
外部データの採用
報告者負担の軽減を図るため、一部の品目において、他機関統計や外部データベースを調査価格として採用している。外部データの採用にあたっては、(1)外部データの導入が、導入コストに見合うだけの報告者負担・調査事務負担の軽減につながるか、(2)調査価格の質を、少なくとも従来の調査先調査と同程度の水準に維持できるか、を検討して採用の可否を慎重に判断している。農林水産物や非鉄金属などの一部品目では、精度が高く、継続的に利用可能な他機関統計や外部のデータベースを調査価格として採用。
調査価格の変更および品質調整方法
調査価格について、当該商品の代表性喪失、取引条件の変更、調査先の変更などが生じた場合、速やかに調査価格の変更を行う。この際、新旧調査価格における品質の変化に相当する価格差を除いた純粋な価格変動分のみを指数に反映し、新旧の調査価格指数を接続する。品質調整方法としては、直接比較法、単価比較法、オーバーラップ法、コスト評価法、ヘドニック法の5つを、現在、用いている。ヘドニック法は、商品の特性と価格の関係を計測した回帰式を用いて新旧商品の品質の変化率を求め、実際の表面価格変化との乖離分を値上げ(ないし値下げ)とみなす計量分析的な品質調整方法。商品サイクルが短く、技術進歩に伴う品質の向上が著しいIT関連商品のうち5商品(パーソナルコンピュータ、サーバ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、印刷装置)に適用している。
品質調整方法
名称 | 内容 |
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直接比較法 | 新旧調査価格の品質が本質的に同一で、両者の品質差を無視し得るものと判断し処理する方法。 |
単価比較法 | 新旧商品は数量や容量こそ異なるが、新旧調査価格の品質は本質的に同一とみなされる場合において、新旧商品の単価比を価格比とみなし、価格指数を接続する方法。 |
オーバーラップ法 | 同一条件の下で、一定期間、並行販売された2つの商品の価格比が安定している場合、同一時点における新旧調査価格の価格差を品質差とみなし、価格指数を接続する方法。 |
コスト評価法 | 調査先企業からヒアリングした新旧調査価格の品質変化に要したコストを、両調査価格の品質差に対応する価格差とみなし、新旧調査価格の価格差の残り部分を「純粋な価格変動」(=物価の変動)として処理する方法。 |
ヘドニック法(注1) | 商品間の価格差の一部は、これら商品の有する共通の諸特性によって測られる品質差に起因していると考え、商品の諸特性の変化から「品質変化に見合う価格変動」部分を回帰方程式により定量的に推定し、残り部分を「純粋な価格変動」として処理する方法。 |
- (注1)他の品質調整方法の適用が困難である、ないしは十分な品質調整が行えない場合において、特性を定量的に示すデータが継続的に入手可能であることを前提に、適用している。ヘドニック推計式は、技術革新が速く商品サイクルが短いことに鑑み、少なくとも年に一回の頻度で再推計を行っている。
(6)指数算式・計算方法
(イ)固定基準ラスパイレス指数算式
各時点ごとに各種商品の価格をまず指数化し、その価格指数を基準時に固定した金額ウエイトにより加重算術平均する「固定基準ラスパイレス指数算式」を用いている。
- 固定基準ラスパイレス指数を算出するための数式
品目指数の算出
調査価格ごとに、当月の報告価格(「比較時価格」)をそれぞれの「基準時価格」(基準年平均=100.0 に相当する価格)で除して個別の調査価格指数を算出する。この調査価格指数に各々の調査価格ウエイトを乗じ(調査価格の加重指数)、当該品目に属する全調査価格の加重指数の合計(品目加重指数)を当該品目のウエイトで除することにより、品目指数を算出している。
上位段階の指数の算出
総平均、大類別、小類別、商品群といった上位段階についても、品目指数と同様の集計方法により、当該分類に属する全調査価格の加重指数の合計を当該分類のウエイトで除することにより、指数を算出している。
(ロ)連鎖基準ラスパイレス指数算式
品目より上位段階の指数計算に、「連鎖基準ラスパイレス指数(連鎖基準算術平均)算式」を採用。以下の計算方法により指数を算出している。
- 連鎖基準ラスパイレス指数を算出するための数式
(7)指数の公表
原則として、翌月の第8営業日の午前8時50分に公表(ただし、後述の定期遡及訂正月は第9営業日に公表)。翌月分の速報公表日に確報値を公表。
指数を非公表とする品目
品目指数の公表にあたっては、調査先の個社情報を秘匿する諸措置を講じている。例えば、品目指数の算出は、複数調査先から3調査価格以上の調査を基に行うことを原則としている。個社情報の秘匿が十分でないと判断される場合、調査先の特別な了解がない限り、品目指数を非公表にする扱いとしている。
非公表となった品目指数は、公表資料上、総平均指数など上位分類指数の計算過程には組み込みつつも、原則として同じ商品群に属している他の1品目の指数と併せて非公表としている(注3)。
- (注3)1品目ではなく、2品目を非公表とするのは、非公表品目が属している上位分類の商品群の指数と、同商品群に属している他の全ての品目の指数によって、非公表品目の指数が逆算できないようにするため。
指数の訂正
計数の遡及訂正(定期遡及訂正)を年2回(4、10月:3、9月速報公表時)、実施 (対象は原則として、過去1年半分)。なお、指数公表後に、総平均指数に影響が及ぶなどの大きな変動が生じた場合には、定期遡及訂正とは別に、判明した直後の公表月に訂正を実施。
(8)接続指数
2010年基準接続指数
基本分類指数、参考指数の類別以上(ないしはそれに準ずる上位の指数系列)、および品目指数について作成。
戦前基準指数
基本分類指数および需要段階別・用途別指数について、1960年基準の分類編成(基本分類、用途別分類)に組み替え、1934〜1936年=1として作成。