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耐久消費財のライフサイクルを通じた価格遷移と新旧製品間の品質向上割合:価格比較サイトのデータを用いた分析

2016年1月21日
安部展弘*1
伊藤洋二郎*2
大山慎介*3
篠崎公昭*4
宗像晃*5

要旨

本稿では、価格比較サイト「価格.com」の大規模データセットを用い、電気機器・情報通信機器の主要20品目を対象に製品のライフサイクルを通じた価格遷移パターンと新旧製品の価格差のうち品質差に起因している割合(品質向上割合)を計測した。電気機器と情報通信機器の多くは、新製品の投入時に採算是正を企図した実質値上げ(値戻し)が行われ、その後、値戻しは剥落していくが、その剥落テンポは時間の経過とともに緩やかになる。また、電気機器は情報通信機器と比べ値戻しの幅が幾分大きく、その剥落テンポは幾分速い傾向がある。新旧製品間の品質向上割合は、電気機器、情報通信機器とも、僅かに右に裾を引いた単峰型の分布を描く。品質向上割合を新製品の発売直後に計測すると、品目ごとにばらつきはあるが、最頻値は、白物家電を中心とする電気機器で0.5〜0.6程度、デジタル家電を中心とする情報通信機器で0.6〜0.7程度となり、情報通信機器は電気機器と比べて品質向上割合が幾分高い。これらの結果は、物価指数の品質調整や企業の価格設定行動を考えるうえで重要な含意を持つ。

JEL分類番号
C43、D22、L15

キーワード
物価指数、品質調整手法、価格設定、ヘドニック・アプローチ

本稿の作成過程では、日本銀行の多くのスタッフから貴重なコメントを頂戴した。記して感謝したい。ただし、あり得べき誤りは全て筆者らに帰する。なお、本稿中の意見・解釈にあたる部分は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行および調査統計局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : nobuhiro.abe@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局(現・神戸支店) E-mail : youjirou.itou@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局(現・国際局) E-mail : shinsuke.ooyama@boj.or.jp
  4. *4日本銀行調査統計局 E-mail : kimiaki.shinozaki@boj.or.jp
  5. *5日本銀行調査統計局 E-mail : kou.munakata@boj.or.jp

日本銀行から

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