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金融政策の枠組みの見直しについて

2024年3月19日
日本銀行

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、賃金と物価の好循環を確認し、先行き、「展望レポート」の見通し期間終盤にかけて、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。これまでの「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みおよびマイナス金利政策は、その役割を果たしたと考えている。日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1 。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。

    以上を踏まえ、金融市場調節方針等については、以下のとおりとすることを決定した。

    1. (1)金融市場調節方針(賛成7反対2)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0から0.1%程度で推移するよう促す2

    2. (2)長期国債の買入れ(賛成8反対1)(注2)

      これまでと概ね同程度の金額3 で長期国債の買入れを継続する。長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。

    3. (3)長期国債以外の資産の買入れ(全員一致)
      1. [1]ETFおよびJ-REITについて、新規の買入れを終了する。
      2. [2]CP等および社債等について、買入れ額を段階的に減額し、1年後をめどに買入れを終了する。
    4. (4)貸出増加支援資金供給等の新規実行分の扱い(全員一致)

      貸出増加支援資金供給、被災地金融機関支援オペ、気候変動対応オペについては、貸付利率を0.1%、貸付期間を1年として実施する。貸出増加支援資金供給については、貸出増加額と同額までの資金供給が受けられる仕組みとする。

  2. わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している(別紙)。賃金を巡る環境を整理すると、企業収益は改善を続けており、労働需給は引き締まっている。こうしたもと、本年の春季労使交渉では、現時点の結果をみると、昨年に続きしっかりとした賃上げが実現する可能性は高く、本支店における企業からのヒアリング情報でも、幅広い企業で賃上げの動きが続いていることが窺われる。物価面では、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているが、これまでの緩やかな賃金上昇も受けて、サービス価格の緩やかな上昇が続いている。このように、最近のデータやヒアリング情報からは、賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、先行き、見通し期間終盤にかけて、「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。

以上


  • (注1)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、中川委員、高田委員、田村委員。反対:中村委員、野口委員。中村委員は、主として大企業に関係するETF買入れ等の終了には賛成であるが、マイナス金利政策は業績回復が遅れている中小企業の賃上げ余力が高まる蓋然性を確認するまで継続すべきとして反対した。野口委員は、賃金と物価の好循環の強まりを慎重に見極めるとともに、金融環境に不連続な変化をもたらすリスクを避ける観点から、長短金利操作とマイナス金利政策の同時撤廃は避けるべきとして反対した。本文に戻る
  • (注2)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員。反対:中村委員。中村委員は、金融市場調節方針と同様の理由で反対した。本文に戻る

  1. マネタリーベースの残高に関するオーバーシュート型コミットメントについては、その要件を充足したものと判断する。本文に戻る
  2. この方針を実現するため、日本銀行当座預金(所要準備額相当部分を除く)に0.1%の付利金利を適用する。新たな金融市場調節方針および付利金利は、翌営業日(3月21日)から適用する。本文に戻る
  3. 足もとの長期国債の月間買入れ額は、6兆円程度となっている。実際の買入れは、従来同様、ある程度の幅をもって予定額を示すこととし、市場の動向や国債需給などを踏まえて実施していく。本文に戻る

(別紙)

経済・物価の現状と見通し

  1. わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって減少している。企業収益が改善するもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、政府の経済対策もあってエネルギー価格の寄与は大きめのマイナスとなっているものの、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰しつつも残るもとで、サービス価格の緩やかな上昇も受けて、足もとは2%程度となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。
  2. 先行きのわが国経済を展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰するもとで、政府による経済対策の反動がみられることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる。その後は、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。
  3. リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。

以上


(参考)

開催時間
  • 3月18日(月) 14:00から16:22
  • 3月19日(火) 9:00から12:28
出席委員
  • 議長 植田 和男(総裁)
  • 氷見野良三(副総裁)
  • 内田 眞一( 副総裁 )
  • 安達 誠司(審議委員)
  • 中村 豊明( 審議委員 )
  • 野口 旭 ( 審議委員 )
  • 中川 順子( 審議委員 )
  • 高田 創 ( 審議委員 )
  • 田村 直樹( 審議委員 )

上記のほか、

3月18日
  • 財務省 坂本 基 大臣官房総括審議官(14:00から16:22)
  • 内閣府 井上 裕之 内閣府審議官(14:00から16:22)
3月19日
  • 財務省 赤澤 亮正 財務副大臣(9:00から12:08、12:17から12:28)
  • 内閣府 井林 辰憲 内閣府副大臣(9:00から12:08、12:17から12:28)

が出席。

公表日時
  • 金融政策の枠組みの見直しついて――3月19日(火)12:35
  • 主な意見――3月28日(木)8:50予定
  • 議事要旨――5月2日(木)8:50予定

以上

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