当面の金融政策運営について
2022年12月20日
日本銀行
- 日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定した。
本年春先以降、海外の金融資本市場のボラティリティが高まっており、わが国の市場もその影響を強く受けている。債券市場では、各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で、市場機能が低下している。国債金利は、社債や貸出等の金利の基準となるものであり、こうした状態が続けば、企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす惧れがある。日本銀行としては、今回の措置により、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融などを通じて、より円滑に波及していくと考えており、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることで、「物価安定の目標」の実現を目指していく考えである。
- 金融市場調節方針、資産買入れ方針については以下のとおりとする。
- (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(全員一致)
- [1]次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
- 短期金利:
- 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
- 長期金利:
- 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。
- [2]長短金利操作の運用
国債買入れ額を大幅に増額しつつ1 、長期金利の変動幅を、従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大する。
10年物国債金利について0.5%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、各年限において、機動的に、買入れ額のさらなる増額や指値オペを実施する。
- [1]次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
- (2)資産買入れ方針(全員一致)
長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。
- [1]ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
- [2]CP等、社債等については、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に戻していく。ただし、社債等の買入れ残高の調整は、社債の発行環境に十分配慮して進めることとする。
- (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(全員一致)
- わが国の景気は、資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している。海外経済は、回復ペースが鈍化している。輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は横ばいとなっている。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加している。雇用・所得環境は、全体として緩やかに改善している。個人消費は、感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、3%台半ばとなっている。また、予想物価上昇率は上昇している。
- 先行きのわが国経済を展望すると、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。
- リスク要因をみると、引き続き、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。
- 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。
以上
- 1本日公表する「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定」では、従来の月間7.3兆円から9兆円程度に増額する。本文に戻る
(参考)
- 開催時間
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- 12月19日(月) 14:00から15:50
- 12月20日(火) 9:00から11:54
- 出席委員
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- 議長 黒田 東彦(総裁)
- 雨宮 正佳(副総裁)
- 若田部昌澄( 副総裁 )
- 安達 誠司(審議委員)
- 中村 豊明( 審議委員 )
- 野口 旭 ( 審議委員 )
- 中川 順子( 審議委員 )
- 高田 創 ( 審議委員 )
- 田村 直樹( 審議委員 )
上記のほか、
- 12月19日
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- 財務省 奥 達雄 大臣官房総括審議官(14:00から15:50)
- 内閣府 茂呂 賢吾 大臣官房審議官(経済財政運営担当)(14:00から15:50)
- 12月20日
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- 財務省 秋野 公造 財務副大臣(9:00から11:35、11:42から11:54)
- 内閣府 藤丸 敏 内閣府副大臣(9:00から11:35、11:42から11:54)
が出席。
- 公表日時
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- 当面の金融政策運営について――12月20日(火)12:01
- 主な意見――12月28日(水)8:50予定
- 議事要旨――2023年1月23日(月)8:50予定
以上