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日本銀行は、現金流通や金融経済情勢の分析などに基づき銀行券への需要を予測し、新たに製造が必要な銀行券の枚数を決定しています。日本銀行からの発注を受けて、独立行政法人国立印刷局が銀行券を製造します。日本銀行が製造費用を支払って引き取った銀行券は、各地の需要見通しを踏まえて、日本銀行の各支店に送られます。そして、日本銀行の取引先金融機関が日本銀行の本支店に保有している当座預金を引き出し、銀行券を受け取ることによって、世の中に送り出されていきます(銀行券の発行)。
世の中に送り出された銀行券は、その後、金融機関から預金を引き出した人々や企業の手に渡り、商品やサービスの購入などに利用されます。そうして市中を流通した銀行券は、預金などのかたちで金融機関に還流し、再び日本銀行の本支店に戻ってきます(銀行券の還収)。
このように、日本銀行の本支店は、銀行券を全国各地にくまなく行き渡らせるための「ハブ」として極めて重要な役割を果たしています。こうした役割を十分果たしていくには、実証に裏打ちされた的確な需要予測や巧みなロジスティックスなどが鍵になります。
日本銀行は、国民が本物のきれいな銀行券を安心して使えるよう、様々な業務や取り組みを行っています。
一つは、鑑査です。日本銀行は、金融機関を通じて銀行券が本支店に戻ってくると、高度な検知能力を有する自動鑑査機を用いて、枚数の計査を行うとともに、偽造・変造された銀行券がないか、厳重に真偽鑑定を行っています。また、損傷の度合いから再度の流通に適するかどうかも判別し、流通に適さないと判断した銀行券は廃棄しています。
もう一つは、銀行券の偽造・変造を未然に防ぐための、偽造防止技術の高度化です。カラー複合機の普及などを踏まえると、偽造銀行券が発生するリスクには常に注意を払う必要があります。こうした観点を含め、日本銀行は、2024年度7月に、世界的にも最先端の偽造防止技術を追加した新しい日本銀行券の発行を開始しました。
日本銀行では、日々の銀行券の安定供給や信認確保に努めることと併行して、中長期的な観点から、発券サービスの効率化・高度化の取り組みを行っています。
その主なものの一つは、機械化などによる業務効率化です。代表例は、最新鋭の機械設備の導入により高度に自動化された発券センターの運営です。これにより、膨大な量の銀行券関連業務を確実かつ効率的に処理することが可能となっています。
銀行券の偽造防止技術の一層の高度化に向けた国際的な取り組みも重要です。デジタル画像処理技術の発展などの技術進歩はボーダーレスに進んでおり、偽造リスクへの対応には国際的な連携が欠かせません。このため、日本銀行は、海外の中央銀行との国際的な枠組みのもとで、最新の偽造防止技術の開発などにも取り組んでいます。
銀行券の真偽を鑑定し、汚損された券を裁断する一方で、きれいな銀行券を再流通できるように整える機械。高精度な偽造券も見破る検知能力を有するなど、世界トップレベルの性能を有します。
日本銀行券には、「ホログラム」や「すき入れバーパターン」といった偽造防止技術が採用され、視覚で識別できることはもとより、パソコン等のデジタル機器を利用した偽造への対応が図られています。
売買代金の支払いなど、経済取引におけるお金の受払いや証券の受渡しを円滑に行うために作られた仕組みを、一般に決済システムと呼びます。日本銀行は、銀行券や日本銀行当座預金の提供を通じて、資金決済の面で大きな役割を果たしています。証券決済の面でも、国債振替決済制度における振替機関として、国債の決済業務を行っています。また、日本銀行は、こうした資金および国債の決済が安全かつ効率的に行われるよう、日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)というコンピュータ・ネットワークシステムを運営しています。このほか、金融市場調節として行う資金の貸付や国債の売買にかかる決済を行うなど、金融政策の遂行を実務面で支えています。
日本銀行では、わが国の決済システムの安全性と効率性を確保し、一段と向上させるための取り組みを行っています。制度上・実務上の諸論点を分析し、必要な改善案を検討したり、具体的な事務処理手順やシステム化すべき事項、金融機関と結ぶ契約などの内容を詰めていく際には、最先端の金融取引に関する実態調査や海外の金融機関との交渉などが必要となる場合も少なくありません。
最近では、情報技術の急速な発展やグローバル化を背景に、多様な担い手による新たな金融・決済サービスの登場や、より広範な情報産業との融合など、決済に関連する様々な動きがみられます。こうした環境変化の中で、日本銀行も、国内外の幅広い関係者と連携しながら、新しい技術やサービスについての調査分析や情報発信に取り組んでいます。また、自らが提供する決済サービスのあり方についても、決済システムの安全性と効率性を確保しつつ、変容する社会のニーズに的確に対応していくため、中央銀行デジタル通貨に関する検討を含め、様々な取り組みを行っています。
このほか、民間部門が運営する金融市場インフラの機能強化や決済リスク削減に向けた働きかけも、日本銀行の重要な役割です。また、海外の中央銀行や金融当局と密接に協力しながら、決済システムを巡る国際基準の整備や、グローバルに活動する金融市場インフラのモニタリング作業にも取り組んでいます。
日本銀行では、災害等の有事の際にも、わが国の決済・金融インフラを維持できるよう、日本銀行券の供給や日銀ネットの安定的な運行などの業務を継続できる体制を整備しています。東日本大震災をはじめ近年の災害の教訓を踏まえて首都直下地震・南海トラフ地震に備えるとともに、テロやサイバー攻撃、感染症など多様化する脅威を見据えて、本支店の有事対応力を不断に強化しています。また、民間決済システム等の業務継続体制強化を支援するとともに、民間と共同で訓練等を実施しています。
これらの仕事は、わが国の決済システムを作り上げていくという面白さがある一方で、大きな責任を伴うものです。また、企画の実現にあたっては、民間部門や政府など多様な取引関係者の理解を得ることも不可欠です。このため、制度分析・新制度の立案に資する法的・経済学的な素養、金融取引実務や技術に関する知識、グランド・デザインを描く意欲、粘り強い調整力と行動力などが求められます。
金融機関などが日本銀行に保有している当座預金。日本銀行自らが提供する安全性の高い決済手段として、金融機関同士が行う資金取引の決済や国債などの売買代金の決済のほか、日本銀行が行う金融市場調節に伴う決済や国庫金の受払いなどに利用されています。
日本銀行当座預金や国債振替制度上の振替口座を利用し、民間金融機関の間や、民間金融機関と日本銀行の間などの資金・国債決済を行うコンピュータ・ネットワークシステム。
取引成立後、何らかの事情(経営破綻やコンピュータ・ダウンなど)により決済が予定どおり履行されないことによって発生するリスクのこと。決済リスクのうち、ある金融機関の決済不能が他の金融機関に連鎖し決済システム全体が麻痺してしまうことをシステミック・リスクといいます。
中央銀行当座預金とは異なる、新たな形態の電子的な中央銀行マネー。中央銀行の負債であり、決済の手段として用いられます。また、当該国の法定通貨建てで発行されることを通じて価値尺度として機能します。