ページの先頭です。
金融経済のグローバル化や情報技術の進歩を背景に、海外の金融経済の動きは日本経済に瞬時に大きな影響を及ぼし得るようになっています。このため、国際金融システムの安定に向けた取り組みは、日本経済が健全な発展を遂げていくうえで、ますます重要になっています。
日本銀行は、こうした取り組みの一環として、世界経済や国際金融市場の動向を日頃からモニタリングし、分析を行っています。G20、G7、EMEAPなどの国際会議の際には、こうした分析結果も活用して、各国の政府や中央銀行と意見交換を行い、国際金融経済情勢に関する的確な状況把握と情報発信に努めています。また、為替相場に急激かつ大幅な変動が生じているとみなされる場合には、財務大臣の代理人として、為替介入を行うことがあります。為替介入の実施にあたっては、モニタリングを通じて得た情報や分析を踏まえたうえで、政府と密接な連携を図りながら、相場の安定確保に努めていくことになります。
国際金融システムの安定性を高めるために、アジア通貨危機や世界金融危機などの教訓を踏まえた、国際金融のアーキテクチャー作りにも取り組んでいます。例えば、日本銀行は、アジア各国の中央銀行と協力して、アジア債券市場の育成に向けた債券投資ファンドを設立しているほか、債券市場インフラの整備に向けた働きかけを行っています。また、金融機関の外貨流動性リスクに対応する観点などから、外国中央銀行との間で自国通貨を相互に融通し合うスワップ網の構築を進めています。外国中央銀行が日本国債を担保にして、当該国の資金を金融機関に供給できようにするための仕組み作りにも協力しています。これらの取り組みは、金融機関の国境を越えた活動が拡大するもとで、国際金融システムの安定性を向上させるものであり、そのことを通じて、わが国経済の健全な発展にも役立つものです。
日本銀行は、外国中央銀行や国際機関が外貨準備などの目的で円資産を保有しやすいように、これらの組織に対して、円預金業務や日本国債の保管・流動化業務を提供しています。これらの業務は外国中央銀行等への日常的な国際協力として行われているものであり、国際通貨としての円の保有・流通にも貢献しています。
日本銀行自身も外国通貨建ての資産を保有しており、外貨資産の管理のために、主要国の中央銀行や国際決済銀行(BIS)に預金や証券保管のための口座を開設しています。こうした外貨資産は、国際金融協力や緊急時の外貨資金供給、わが国経済の成長基盤強化支援に備えて保有しているものであるため、安全性と流動性を重視した資産管理を行っています。
EMEAP(エミアップ)とは、Executives’ Meeting of East Asia and Pacific Central Banksの略称で、1991年に日本銀行の提唱により、各国の金融政策運営などについて、自由に情報や意見を交換する場として発足したものです。メンバーは、オーストラリア準銀、中国人民銀行、香港金融管理局、インドネシア中銀、韓国銀行、マレーシア中銀、ニュージーランド準銀、フィリピン中銀、シンガポール通貨庁、タイ中銀および日本銀行の11中銀・通貨当局になります。
1990年代のアジア通貨危機の教訓を踏まえ、ASEAN+3諸国の間で、国際収支危機に対応して各国が保有する外貨準備を相互に提供するための通貨スワップ網が整備されました。加えて、2008年以降の世界金融危機を経て、日本銀行を含む主要国中央銀行は、国際金融市場の機能維持等を図るため、相互間の為替スワップを通じた各国通貨の供給を可能としました。また、日本銀行は、信用秩序の維持の観点から、個別金融機関に対する緊急的な外貨資金供給を行うための為替スワップについても取り組みを進めています。