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支店は、地域経済において、通貨供給、資金決済、国庫金受払いといった経済活動に必要な血液循環の「心臓部」としての役割を果たしています。具体的には、各支店が所管する地域の取引先金融機関との間で、銀行券・貨幣の受払いや当座預金決済、貸出などの取引を行っているほか、国税、年金などの国庫金の受払いや国債の元利金の支払いを行っています。また、銀行券・貨幣の受払いに絡んで、銀行券の鑑査、保管、損傷銀行券・貨幣の引換えなどの業務を行っています。
このほか、支店の重要な役割の一つに、地域の金融・経済調査があります。具体的には、取引先金融機関の経営状況に関するモニタリング、分析などを行っているほか、地域内の企業の協力を得て、地域の金融経済動向に関する情報収集・分析を行い、本店へ報告するといった、いわゆる「アンテナ」としての機能を果たしています。支店のこうした機能を通じ収集・分析された情報は、日本銀行が政策を運営していくうえで貴重な判断材料となっています。
地域経済の発展に貢献するため、また日本銀行の業務や政策運営についての理解を得るため、支店や本店が収集・分析した情報は、定例記者会見や外部講演などのかたちで地域に還元しています。中立・公平な立場から地域経済の方向性やあり方について意見表明を行う機会も多く、こうした地域に対する「情報発信」も重要な機能の一つです。
札幌、仙台、金沢、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡支店の場合
上記10支店を除く22支店では、総務課、発券課、業務課の3課体制の下、総務課において上記の営業課および文書課の事務を行っています。
日本銀行の政策に役立てることを目的に、経済調査と金融モニタリングを行っています。経済調査は、地域の景気動向を把握するため、財・サービスの需要動向や企業活動を調査・分析するもので、その成果は記者会見やホームページなどを通じて対外的に発表しています。金融モニタリングでは、管内金融機関の預金・貸出の動きや経営動向を日々モニタリングし、随時本店に報告しています。
わが国唯一の「発券銀行」として、金融機関との間でお札(日本銀行券)の受払いを行っています(国が発行する硬貨も扱います)。この過程で、世の中を流通したお札の鑑査(偽造の有無、再使用の可否など)を行い、再使用できるお札は、再び日本銀行から払出される一方、損傷がひどく使用できないものは、細かく裁断し廃棄しています。また、災害で損傷したお札や硬貨の引き換えなども行っています。
「銀行の銀行」として、日銀ネットを通じて取引先金融機関との間で預金の受払い、貸出などの取引を行っています。また、「政府の銀行」として、国税や社会保険料などの受入れ、公共事業費や年金などの国庫金受払事務を取り扱っているほか、国債の発行や元利金の支払いなどの事務も行っています。
支店全体の内部管理部署として、各課の業務遂行をサポートする役割を担っています。具体的には、職員の勤務管理、資産管理、予算管理など、ヒト・モノ・カネの管理を行っています。文書課の仕事は、一般の会社では「総務部」「人事部」「経営企画室」などと呼ばれる部署が担当する仕事に相当します。
的確な経済分析とタイムリーな情報発信
支店は地域経済とともにこれからも歩み続ける
支店の重要な役割の一つに地域の金融・経済調査(金融機関モニタリングと経済動向調査)があり、大分支店総務課でも、こうした機能を担っています。具体的には、統計データの分析および県内企業・金融機関等へのヒアリングを実施し、その結果を「大分県内の景気動向」として毎月公表しています。また、管内の景気動向を把握するために、四半期ごとに大分県内の企業に対してアンケート調査を実施し、「企業短期経済観測調査(短観)」として公表しています。
ここでは、日本銀行が年2回公表している「地域経済報告(さくらレポート)」別冊の作成過程における、支店職員の仕事内容について紹介します。「地域経済報告」は、日本銀行本支店・事務所が、日頃、企業ヒアリング等を通じて行っている各地域の経済金融情勢に関する調査結果を支店長会議の機会ごとに取りまとめたものです。「地域経済報告」別冊は、この「地域経済報告」を補完するものとして、地域経済の中長期的な構造問題に重点を置いた調査を行っています。こうしたレポートは、わが国全体の経済状況に関する情勢判断に役立てられており、レポート作成に従事する支店の調査スタッフは、責任の重さとやりがいを日々実感しています。
特定職
(業務分野特定タイプ)
総務課長(現 金融機構局 企画役補佐)
I.A.
2002年4月長崎支店入行。06年7月福岡支店、11年7月調査統計局、15年10月鹿児島支店を経て、17年6月より現職。現在、経済動向調査、金融機関モニタリング、内部管理の3業務を統括。
総合職
(現 総務人事局)
M.K.
2017年6月国際局入行。国際収支課国際収支統計グループへ配属。18年1月に大分支店へ異動。同年3月より総務課経済調査班で経済動向調査を担当。
特定職
(業務分野特定タイプ)
(現 鹿児島支店)
T.H.
2017年4月大分支店入行。発券課、総務課(内部管理業務)、業務課で経験を積んだ後、18年6月から、総務課経済調査班で経済動向調査を担当。
一般職
N.M.
2015年4月大分支店入行。発券課において、銀行券・貨幣の受払や鑑査(真偽鑑定・流通可否の判定)などの業務に携わった後、17年5月から総務課に配属。支店長受付などを担当。
地域経済報告(別冊)では、調査統計局と支店が連携して、タイムリーなテーマを選定し、調査を行います。今回のテーマは、「高水準の収益対比で控えめな企業の支出スタンスの背景―中小企業を中心に―」。早速、チームでミーティングを開始。調査統計局の問題意識を踏まえつつ、「そもそも当地企業の収益は高水準と言えるのか」、「先行きの市場環境を鑑みると前向きな支出には踏み切れないのでは」等、まずは各自の考えを自由に挙げた上で、調査ポイントを擦り合わせていきます。
地域経済報告(別冊)のテーマが決まると、調査スタッフ4名とともに、調査の方針を議論します。この際、最初から議論の方向性を固めすぎないようにしています。全国各地で何が起きているのか、地域の情報を本部と共有する意義は大きいと考えており、先入観を持たず、実状を丹念に点検するよう心掛けています。これまで当店で蓄積してきたヒアリング情報を活かしながら、スタッフの問題意識や仮説を幅広く共有します。その後、スタッフの役割分担や作業のスケジュール感、他の調査活動との優先順位などを調整していきます。
当地企業の収益動向やその改善に向けた取り組みについて、日頃から関心を持っていました。これまでに収集していた情報をもとに、独自の取り組みを行っている企業などの調査先をリストアップ。この際、地域や企業規模、業種に偏りがないかなど、多面的な角度からバランスよく調査先を選定します。同時に、収益環境や設備投資の状況について、短観などの統計データを整理し、客観的な事実の把握にも取り組みます。こうした作業を経て、ヒアリングポイントを整理していきます。
入行2年目の私にとって、地域経済報告(別冊)は初めての業務。「高水準の収益対比で控えめな企業の支出スタンスの背景」というテーマでは、幅広い業種の企業情報が求められます。チームで共有した調査方針に沿って、自分の担当する業種で活用できる情報がないかを整理します。もっとも、企業行動などに関してはまだまだ理解が足りません。ニュースや新聞から基本的な情報を収集するほか、上司や先輩に質問しながら関連知識を習得します。自分の問題意識を持って調査に携わり、チームへ貢献します。
管轄するエリアは大分県全域。調査スタッフ4名が分担して県内各地へ足を運びます。電車やバスを乗り継ぎ、数時間かけて企業を訪問することもあり、効率よく複数の先と面談できるかもポイントです。また、支店長が定期的に行っている企業経営者との面談でも、地域経済報告(別冊)に関連した情報を集めます。こうして集めた情報はスタッフ間で共有し、当初の仮説が正しかったのか検証を行います。必要に応じて調査方針を修正し、追加的なヒアリングを実施します。
事前に整理した調査ポイントを基にヒアリングを行います。限られた時間で如何に情報を引き出すかが勝負どころ。単なるインタビューではなく、面談相手と議論することが欠かせません。そのためには、当該企業の事業内容を把握するだけでなく、業界動向も頭に入れる必要があります。今回のテーマである企業の支出スタンスは、経営判断ともいえ、簡単に入手できる情報ではありませんが、足もとの需要動向や先行きの市場動向について、企業がどう認識しているのか、それを踏まえてどのように行動しようとしているのか、粘り強く引き出していきます。こうした生の経済に触れられることは、ヒアリング調査の醍醐味と言えます。ヒアリング調査によって得られた情報について、当地の企業全般に共通する背景は何か、特徴点は何かといった点について、複数先にヒアリングを重ねることで明らかにしていきます。
支店長の受付担当として、支店長の日程全般を管理しています。経済動向調査に関する支店長の面談日程は調査班が選定しますが、車で移動する場合、移動時間に無理がないか、前後の予定に支障が出ないかなどについて確認します。周囲とのコミュニケーションをしっかりとって、支店長が安心して業務を遂行できるよう、きめ細やかにサポートします。最近では、移動ルートや所要時間などはインターネット検索で容易に得られるようになっていますが、そうしたものに頼りすぎず、経験豊富な運転員への確認と調整を欠かさないよう心掛けています。
ヒアリングで収集した情報は、支店長や総務課長に報告するとともに、調査スタッフ間で共有して整理・分析を進めます。「当地企業の動きを総括してどのように評価するか」、「大分県企業の特徴点は何か」など、支店長も交えて議論を重ね、最終的なレポートを仕上げていきます。取り纏め担当者は、論理構成に矛盾がないかなどを確認しながら、コンパクトかつ分かりやすいレポートを作成します。調査統計局は各支店からの報告を取りまとめ、地域経済報告(別冊)として公表します。
調査スタッフが集めた情報をどのように整理し、取り纏めていくのか、日々のミーティングの中で作業の進捗を確認します。レポートの作成にあたっては、調査スタッフが安易に結論を急がないよう気を付けています。当初の仮説に沿った情報ばかり集めていないか、論理構成を裏付ける事実があるか、スタッフに質問を投げかけ、気付きを促しながら、説得力のある報告を作り上げていきます。同時に、こうしたやりとりを繰り返すことで、スタッフの成長を促すことも意識しています。
業種を跨いだテーマということもあり、スタッフそれぞれが収集した情報は多岐にわたります。多くの情報を整理し、当地の特徴点を見出していきます。こうして1つのレポートを作り上げていくことは、チームプレーであると実感します。調査開始当初に比べると、関連知識も増え、自分の考えを報告できるようになりました。取り纏めを担当する先輩は、チームの議論をリードしながら最終的なレポートを作り上げています。次は自分が取り纏め役を担うつもりで、その姿を学びます。